このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例はTwitterから。
ジョン・クリーズは、亡くなったテリー・ジョーンズと同じく、英国のコメディ集団「モンティ・パイソン」の一員だった。モンティ・パイソンは6人の集団だったが、ジョーンズに先立つこと約30年、1989年にはグレイアム・チャップマンが48歳の若さで病死しているので、6人中2人を失ったことになる。そのことをクリーズは次のように述べている:
Just heard about Terry J
— John Cleese (@JohnCleese) 2020年1月22日
It feels strange that a man of so many talents and such endless enthusiasm, should have faded so gently away...
Of his many achievements, for me the greatest gift he gave us all was his direction of 'Life of Brian'. Perfection
Two down, four to go
最後の "Two down, four to go" は、「2人が倒れた。4人はまだこれからだ」という意味。あまり上品な言い方ではないというか、軍隊が敵の小隊をやっつけようとしているときに「2人は片づけた。残りは4人だ」と伝達しているような文体で、これはパイソンズでのクリーズの役回りにのっとった言い方をしているのだろうと思う。
ツイートの最初の方に戻って2文目:
It feels strange that a man of so many talents and such endless enthusiasm, should have faded so gently away...
《形式主語》のitと、《真主語》のthat節という構造で、なおかつbe動詞ではなくfeelを使った《SVC》の文になっている。文意は、be動詞なら「~である」だが、feelが用いられていると「~な感じがする」ということになる。
ここまでまとめると、「that節はCな感じがする」というのが文の骨格だ。
そしてthat節内は、"a man" が主語、"should have faded" が述語動詞となっている。
ここで注目したいのは、"a man of ~" という表現である。これは『ジーニアス英和辞典』(第5版)の膨大なofの項では2番目に取り上げられている語義で、《A of B》の形で「Bの性質を持つA」という意味を表している。この前置詞ofは大学受験などでも文法の穴埋め問題で問われることがよくあるが、選択肢が例えばat, by, of, throughと与えられていても知らなければどうにも判断できないので、見たときに覚えてしまっておくとよい。
I don't have any time for a matter of no importance.
(重要性のない事柄のための時間は、私には一切ない)
Her father was a man of letters.
(彼女の父親は文学者だった)
クリーズがジョーンズを評して述べている "a man of so many talents and such endless enthusiasm" は、「あれほどまでに多くの(分野の)才能と、あれほどまでに尽きせぬ熱意を持った男」という意味になる。
そのあと、", should have faded so gently away" のコンマはなくてもよい。というか、ないほうが標準的だ。またこのshouldは『ジーニアス英和辞典』(第5版)で「主に英正式」と解説されている(1928ページ)shouldで、「[驚き・意外・怒りなどの感情を表す形容詞・名詞に続くthat節の中で]…する[した]とは」。shouldに《完了形》(have + 過去分詞) が続いていたら「…したとは」の意味になるわけで、ここでは「あんなにも静かに消えていったとは」という文意。これはジョーンズが晩年、病気で言葉を失って何も語らなくなって逝ってしまったことを言っている。
2014年にモンティ・パイソンが再結成ライヴを行ったときのジョーンズとクリーズ。2人ともおばちゃん役で、キンキン声でかみ合わない会話を繰り広げる抱腹絶倒のスケッチの1場面である。
So sad. Last time I saw him, with you in 2014 pic.twitter.com/5s703NHPJj
— Peter Lewis (@PeterLewis55) 2020年1月22日
ジョーンズとクリーズは、それぞれ個性的なパイソンズの6人の中でもどうにもかみ合わないところが多かったという。それでも、なのか、それだからこそ、なのか、お互いの才能は認め合っていた。
追悼のツイート (no pun intended) もそんな感じがする。クリーズが、「ジョーンズの数々の業績の中でも最高のもの」と評している映画『ライフ・オブ・ブライアン』は、キリスト教の『聖書』をネタに、時事的な(というか現代的な)あれこれも射程に入れて全方面的にパロディ化したすさまじい、そしておもしろい作品である。受験生は見たかったら受験が終わってからにしたほうがいいけどね。
なお、クリーズのツイートの1行目の "Terry J" は、Terry Jonesのこと。モンティ・パイソンには「テリー」はもう1人いて(テリー・ギリアム Terry Gilliam)、区別をするためにジョーンズのことは「テリー・ジェイ」と呼ぶのだろう。「英語圏人名あるある」である。(日本では基本的に名字で人を呼ぶので、名字が同じ人が同じ集団の中にいると下の名前を使ったりするが、その逆だ。)
参考書: