このエントリは、2021年1月にアップしたものの再掲である。
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今回は、前回の続きで、有料購読していないと全文の閲覧ができない英国の新聞The Timesで報道された内容を、The Timesを購読せずに、少しでも把握することについて。
有料購読していないと記事全文が読めない媒体の報道内容を知りたい場合、最速で最適な解はもちろん、購読することであるが*1、たった1本の記事のためにそれをやろうという人も、それができるという人も、そんなに多くはないだろう、という前提で、このあと解説していきたい。購読したいと思った人や購読する余裕がある人は、ぜひそうしていただきたい。現時点でのプランは、登録して初月は無料で翌月から1か月10ポンドとなっている。
さて、前回見たように、英タイムズが1月21日付で大きなスクープ記事を出し、これが日本語圏、というより日本でも大きな反応を引き起こした。冒頭の2パラグラフだけは誰にでも読める形でサイトにアップされているので、最低限、それだけは確認しておこう。
今回はこの記事について、内容の是非などはおいておいて、どのようなことが書かれているのかを、The Times以外の報道機関を通じて確認できる範囲で確認してみよう。上述したように、本当に確認したければ、あるいは確認する必要があるならば、The Timesを購読すべきである。
今回のThe Times記事で、だれでも確認できるように公開されているのは次のくだり:
The Japanese government has privately concluded that the Tokyo Olympics will have to be cancelled because of the coronavirus, and the focus is now on securing the Games for the city in the next available year, 2032.
According to a senior member of the ruling coalition, there is agreement that the Games, already postponed a year, are doomed. The aim now is to find a face-saving way of announcing the cancellation that leaves open the possibility of Tokyo playing host at a later date. “No one wants to be the first to say so but the consensus is that it’s too difficult,” the source said. “Personally, I don’t think it’s going to happen.”
Publicly, both the International Olympic Committee and the Japanese government insist that...
前回述べたように、英語圏では1つの媒体の大きなスクープ報道が出ると、ほかの媒体がその要旨を受け売りするような形で記事にするのが通例である。多くの場合はただの要約や抜粋ではなく、さらにその媒体が独自に誰かに取材したものが付け加えられていたりもする。
今回のThe Timesの報道については、例えば下記のようなフィードがTwitterに出ていた。ロイターと英ガーディアンのフィードである。
Japan privately concludes Tokyo Olympics should be cancelled due to coronavirus: The Times https://t.co/PLEhWYNMkt pic.twitter.com/NOPgTnU8YX
— Reuters (@Reuters) 2021年1月22日
Tokyo Olympics: Covid putting 'real pressure' on Japan, says Australia PM amid cancellation rumours https://t.co/k2dmrVgWSA
— justin mccurry (@justinmccurry) 2021年1月22日
通常なら、これらの後追いの記事を確認すれば、元のThe Timesの報道内容が、冒頭の2パラグラフに書かれていること以上にわかる。実際22日にこれらのフィードを目にした直後に私がブログを書いていたら、上記記事からいくらか引用するなどして、ここで話は終わっていたはずだ。
しかし、今回の場合、IOCも日本の組織委員会も日本政府も、The Timesの報道内容をすぐに、非常に強い調子で全否定するという反応を見せており、これらの記事はほどなく、ほぼ原形をとどめないほどにアップデートされて(書き換えられて)しまっている。
だから現時点(27日)で確認できる記事の見出しは、ロイターは "Japan and IOC deny that Olympics will be cancelled" となっており、ガーディアンは "Japan dismisses 'categorically untrue' stories that Tokyo Olympics are doomed" だ。
これらの記事が、このようにアップデートされる前にどのような記述であったのかを確認するすべは、残念ながら、原則としては、ない。運がよければ、Googleの検索キャッシュがあるかもしれないが、これは「たまたまそのタイミングでキャッシュが取得されていたらラッキー」という性質のものだから、それを見れば最初のアップロード時の記述が確認できるかどいうかという点では、ほとんどあてにはならない。それにGoogleキャッシュ自体、常に更新され続けているから、いつまでもは残らない。
Googleキャッシュよりは確実性が高いのが、インターネット・アーカイヴのウェイバック・マシーンだ。これも、「誰かがたまたまそのタイミングで取得してくれていたらラッキー」という性質である、という点ではGoogleキャッシュとさほど変わらないかもしれないが、「消えない」という点では大きく異なる。ウェイバック・マシーンは原則、消されることなくずっと残っている。
ウェイバック・マシーンの使い方はシンプルで、サイトにアクセスしたら下図のように、検索窓にアーカイヴ(キャッシュ取得)したいURLを貼り付けて、Enterキーをたたくだけ。
そうすると次のページで、アーカイヴが取得されている日付がカレンダーの上に青い丸という形で示されるようになっている。取得件数が多いとこの丸が大きく表示されるのだが、今回のガーディアン記事(下図の (1))は数日間にわたって何件ものアーカイヴが取得されているから、下図の (2) のように大きな丸やら小さな丸やらがいっぱい表示されている。
今回のような「アップデートされる前の記述を確認したい」という場合は、一番古いものを見ればよいので、下記のように、一番古い日付け(ここでは22日)で一番古い時間のものを参照すればよいだろう。
こうして閲覧できるアーカイヴ(キャッシュ)が下記である。
ロイターの記事についても、同様のプロセスで下記のアーカイヴを閲覧することができる。
それぞれの内容については、記事が出てから数日の間にいろいろあったので、ここで改めて提示することはしないでおこうと思う。ここでは調べものの方法の一つとして、このようなことをご紹介申し上げる次第である。
※3750字
*1:「知りたい」を超えて「知らなければならない」場合、つまり仕事で使うとか、何らかの論評のベースにするとかいった場合は、もちろん、購読する以外の方法はない。