Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

関係代名詞の非制限用法でthatが用いられているイレギュラーな事案(超大規模リーク、 #PandoraPapers )

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今回の実例は、報道記事から。

今日(2021年10月4日)未明、だらだらとTwitterの画面を見ていたときに、怒涛のように流れ始めたのが #PandoraPapers のハッシュタグ、およびPandora Papersという文字列を含む報道フィードである。(同じタイミングで、Twitter上の日本語圏では「読むべき本100冊として全部自己啓発・仕事ノウハウ系の実用書ばかりを挙げるのはどういうこと」みたいな話で盛り上がっていたのだが、何をどう思おうとどういう時間の使い方をしようと勝手だが、やることなくてヒマなときに、どこかの誰かが誰かにお勧めしたい本100冊をリストにしたものに、140字という制限があるから丁寧な記述などはなから不可能である場で、雑な読まれ方しかしないというリスクをおかしてまで公然とケチをつけたり、誰かがつけたケチを読んで傷ついたりして時間を費やすより、#PandoraPapers のハッシュタグで流れてくる英語の報道記事を読んで時間を費やした方がよほど有意義なので、やっぱり英語はできたほうがいいよ。この数行を30ページくらいに膨らまして書くテクニックがあれば、自己啓発本書けるかな。)

#PandoraPapers は、2016年の #PanamaPapers こと「パナマ文書」に続く超大規模リークで、世界各国の報道機関とジャーナリストたちが、(「自分の国以外」を「国際」と呼びならわす普段の用法の「国際」ではなく)国家と国家の間の境界を取り払う形で、真に国際的に協力して大量の文書を分析し、それについて一般人にわかるように書き、データを整理するなどして報道する、という方法としては、「パナマ文書」での取り組みを踏襲している。参加している報道機関も「パナマ文書」のときと重なっている。これから数日かけて、文書から判明したことについての報道が続くことになる*1

このように、日本語圏では #PandoraPapers の大型報道のしょっぱなの、いわゆる「つかみ」は、英国のトニー・ブレア元首相夫妻だったようだが、私が見ていた範囲では、国際的には「つかみ」は、ヨルダンのアブドゥラ国王やパキスタンのイムラン・カーン首相のように「不正」のイメージがあまりない現役の国家元首や政治トップだった。私の見ていたTwitterの画面には、アブドゥラ国王の顔写真や肖像イラストを一度にこんなに見たことはこれまでにない、というくらいの量で流れてきた。各報道機関、記事のフィードで見せるための視覚情報も、それぞれものすごく力を入れてデザインしている(日本の報道機関はそういうことをしないよね)。

この「パンドラ文書」の大量リーク、取りまとめ役は「パナマ文書」と同じくICIJなので、Twitterを使っているならいつもフォローしている報道機関に加え、ICIJのアカウントをフォローしておくと情報が早い。

というわけで、今回の実例は、これら一連の「パンドラ文書」の報道記事のひとつから。記事はこちら: 

www.bbc.co.uk

「パンドラ文書」で判明した有力者の租税回避と蓄財の実態のひとつのケースで、ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領とその家族・親族の秘密資産についての記事だ。ウフル・ケニヤッタは、ケニアが英国から独立したあとの初代大統領となったジョモ・ケニヤッタの息子で、ケニヤッタ家といえばケニアではいわば「名門中の名門」である。しかし政治的には非常にいろいろある人物なので、この蓄財スキャンダルは、仮に誰もが「知ってた」と言うようなことであるとしても、無風というわけにはいかないのではないかと心配される。

記事の書き出しのリード文の部分: 

f:id:nofrills:20211004232413j:plain

https://www.bbc.com/news/world-africa-58775944

The family of Kenya's President Uhuru Kenyatta, that has dominated the country's politics since independence, secretly owned a network of offshore companies for decades, according to a huge leak of financial papers.

太字と下線で示した部分は、《コンマ+thatの節》の構造だが、このthatは《関係代名詞》(主格)で、先行詞は "The family of Kenya's President Uhuru Kenyatta" という固有名詞を含んだもの(固有名詞に非常に近いもの)である。

つまりこの関係代名詞は《非制限用法》(継続用法)で、固有名詞にあとから説明を付け加えている。

  Tom, who began playing the piano at the age of three, is now a famous keyboard player. 

この非制限用法の関係代名詞には、thatは用いず、whoやwhichを用いる、というのがルールである。「そんなん、日本人が受験用に言ってるだけでしょ」と言う人もいるかもしれないが、もしそう思ったら英語圏の文法書を参照してもらいたい。例えば私の手元にあるPEUでは、490ページ*2で、non-identifying clauseの場合はthatは使わないということをはっきり断言している。

しかし実際には、今回の実例にあるように、非制限用法でthatが用いられているのを見ることが、まれにではあるが、ある。

でもそれが、個人のブログとか、作家の文章とかでなく、BBCの記事というのは、ちょっと目が点になるようなことである。こういうところはこれからどんどん変わっていくのかもしれないが、BBCはここ10年くらいの間で関係代名詞としてwhoやwhichを使うのは古臭いと言わんばかりにthatを多用するようになったので、その流れでこうなっているのかもしれない。今頃、英国でも文法屋がびっくりして気絶しているかもしれないね。

いくらBBCが使っているからといっても、自分で書くときは、非制限用法ではthatは使わないほうがいいですよ。少なくとも現段階では。

 

 

 

 

*1:大量のリークをこのように扱いだしたのは、2010年のウィキリークス以降のことだ。読む側もついていくのが大変なくらいの情報量が一気に流される。いちいち翻訳されるのなんか待ていられないよ。

*2:古い版だから、現行のとはページ数が異なると思う。

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