Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「暑さによるレールの変形」を英語でどう言うか(欧州を襲うとんでもない熱波でイングランドでも40度超)

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今回の実例は、「これって英語で何て言うの?」というトピック。

日本でもある程度は報じられていると思うが、欧州を大変な熱波が襲っている。

かつて、欧州では気温が30度にもなれば「大変な熱波」と言われていたものだが、近年では30度に達することは珍しくなくなっている。それどころか、今年は気温40度ということで、すでに欧州大陸ではあちこちで山火事が発生して大きな被害が出ている*1

www3.nhk.or.jp

日本の天気予報で近年、まずは台風など暴風雨で、続いて高温で頻繁に言われるようになってきた「命を守る行動を」というフレーズは、英国でも気象情報用語として導入されたようだ。今週の高温の予報が出たのは先週のことだが、そのときの朝のニュース&情報番組のクリップ:

"life-threatening weather conditions," すなわち「生命に危険を及ぼすかもしれない天候」という表現である。

そして実際、今日7月19日(火)は、イングランド南部では予報通りの高温で、イングランドで初めて40度超を記録したという。

https://www.theguardian.com/

この高温は昨日から続いており、空港で舗装が溶けてしまったため飛行機が飛べなくなっているとか、イングランドでも山火事(「山」がないので原野火災というべきかもしれないが)が発生しているとかいったニュースが次々に入ってきているが、その中のひとつが、「高温のため、鉄道のレールが変形してしまう」ということについてのニュースだ。

日本でも、数年前はこの「レールの変形」に関することがよくニュースになっていたように思うのだが、いつの間にか聞かなくなった。その数年の間に確実に日本の夏は暑くなっているが、現場の技術者の人たちが頑張って影響が出ないようにしているのかもしれない。あるいは単に、もうニュースにするようなことではなく、ありふれてきていて、鉄道会社も対応ができているのかもしれない。

いずれにせよ、熱による膨張でレールが変形するといとも簡単に脱線事故につながってしまうことは周知であり、英国でも鉄道会社は、路線ごと終日運休にしたり、運行する路線でも徐行運転にしたりと、通常通りの鉄道運行が行われていない状態である。

これに対し、「ほかの国は暑さで鉄道運休なんてしてないのに(怒)」みたいな声もあるようだが、暑さというものへの備えがほとんどないも同然の英国での事情は「ほかの国」とは違う。

閑話休題

この「暑さによるレールの変形」を英語でどう言うだろうか。

実は私もそんなことは考えたことがなかったのだが、たまたまそれについての表現をTwitterで目にしたので、ここに書き留めておくことにした。

《so that ~》の構文でthatが省略された形だが、私の求める情報はそのあとの部分にある。

so (that) they don’t buckle in the heat.

熱で線路が変形することを言う語は、buckleであるようだ。

buckleというと、名詞で「ベルトのバックル」しか思い浮かばず、動詞での意味が見当がつかない。というわけで辞書を見てみよう。ケンブリッジ辞書をある程度丁寧に見ると、verbのところに次のような語義がある。

to bend something or become bent, often as a result of force, heat, or weakness:

dictionary.cambridge.org

これだ。

なお、その下に、別な語義として「困難な状況により打ち負かされる」という記述があるが、言われてみればこの語義は、「ベルトのバックル」のほかに、知っていたと思う。「プレッシャーに押しつぶされる」みたいな記述で出てくる語だ。

と、ここまで調べたら、次は「検算」に入ろう。誰でもできる簡易的な方法だが、railとbuckleという語でTwitterを検索して、用例を見てみるのだ。

すると次のようなものが見つかる。

"make them buckle in the heat". 

"rail tracks will buckle".  

 

"Rail tracks could buckle". 

「熱でレールが変形する」ということをbuckleという動詞で表していることが確認できた。

さらにまた別の例だが: 

"the force of a rail buckle from heat expansion". 「熱膨張を原因とするレールのbuckleの力」という意味で、このbuckleは名詞である。

このように「レールの変形」を言うために、buckleを名詞として使う用法もあるのだが、もうひとつ、動詞のbuckleを動名詞にする例もある。

"track buckling due to increased heat". 「熱が増すことによって線路がbuckleすること」と直訳される。

 

なお、こういうことを丁寧にやっていると、「今どき、DeepLで何でもやってくれるんでしょ。だからあなたの作業は無駄です」みたいなことを言ってくる人もいるかもしれないが、DeepLに投げた結果はこうであった。

https://www.deepl.com/translator#ja/en/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%8C%E6%9B%B2%E3%81%8C%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82%0A%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%8C%E6%AD%AA%E3%82%93%E3%81%A0%E3%80%82%0A%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%8C%E5%A4%89%E5%BD%A2%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

このDeepL翻訳の出力結果は、こちらが思いついた日本語を直訳しているだけで、コロケーション(よく使われる語と語のペア)のことなど考えてもいない。一応《意味》はわかるので、それだけで満足できるならよいかもしれないが、DeepLがdistortという語を使っているからといって、それが「正しい」語なのかどうかは無保証である。それを確認するため、railがdistortするという英語はどういう場合に使うものなのかをウェブ検索するというプロセスは必須である。ここでは、次のようなものが見つかる。

In case a British summer features abnormally high temperatures, we must plan for intense heat, which can cause rails to expand. Where the compressive forces in the rail reach a critical point, the track can suddenly distort sideways, causing a buckle if it is not restrained sufficiently by the ballast around the sleepers.

https://www.networkrail.co.uk/stories/broken-rail-explained

このプロセス(後処理)を自力でできるなら&後処理においてDeepLの出力結果を自力で検討できるなら、DeepLを使うことは役立つかもしれない。

 

※5150字

 

(しかし、暑さで線路が歪むほどになっているときに線路を白く塗ったら、その塗料が原因で別のトラブルが起きるのではないかと心配になってくるのだが……。)

 

 

 

 

 

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