今回の実例は、2月12日のアイリッシュ・タイムズの論説記事から。書いたのは同紙で長く執筆しているベテラン・ジャーナリストのフィンタン・オトゥールで、トピックは英国のEU離脱関連。
アイルランド島北部の6州が「北アイルランド」として「英国の一部」ということになっているため、EU離脱後の英国にとって唯一のEU加盟国との間の陸上のボーダー(境界線、国境)を、アイルランドが有するということになる。その点が問題の核になって、テリーザ・メイ首相がEUとの間で合意を取り付けても英国会での承認が得られないという事態がもう何か月も続いており、とうとう予定されている離脱日まで2週間、というところまで来てしまったのが3月半ばの状況だが、この論説記事が書かれたのはその1ヶ月前である。といっても、状況が大きく違っているわけではないのだが。
最初の注目ポイントはキャプチャー画像の1行目。
One of the things we’ve all had to learn since June 2016 is precisely that we don’t have to think about the boring stuff because the EU does it for us.
これは文法的には大したことではないが、「~のひとつ」という意味を表す《one of the ~》の形では、"~" の部分では必ず複数形を使うことを確認しておきたい。
暗記するより理解したいという方は、「~のひとつ」と言うからには、「~」は2つ以上なければならないという論理を踏まえればすっと頭に入るだろう。
続いては6行目から。
Only when it is thrown into doubt do we realise how much tedium the EU has taken from us.
これは太字にした部分で《倒置》 が起きている。なぜこうなっているかというと、下線部を補った節が前に出ているからで、この節のポイントは、ただのwhenの節ではなくonlyがwhenについている、ということである。
Only when, only if, only afterといった形で始まる文では、必ず主節で倒置が起きる。
Only if you use the right password can you log in.
(正しいパスワードを用いた場合にのみ、ログインできます)
Only after you lose your health will you realise how important it is.
(健康を失ったあとになってからでないと、その大切さに気付かないでしょう)
これは日常的な文でもよく見かける表現だ。整序英作文(並べ替え)で問われたときに失点しやすい項目でもあるので、注意しておこう。
なお、実例の文は、「それが疑いのなかに放り込まれたときにのみ、私たちはEUがいかに多くの退屈な作業を除去してくれたかに気付く」という意味である。
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