今回の実例は、3月12日、英国下院で、Brexit(英国のEU離脱)に関するテリーザ・メイ首相の合意案について、いわゆる「意味ある採決 meaningful vote」の第2弾が行なわれる日の国会審議を伝えるライヴ・ブログから。
教科書的には、rather than ~は「~よりむしろ」という意味である。
I would like to have tea rather than coffee.
(コーヒーよりむしろ、お茶を飲みたい)
関連して、《would rather ~ than ...》という熟語も頻出だ。
I would rather die than give you control.
(あんたにコントロールさせるくらいなら、むしろ俺は死ぬよ)
そして、例えばロングマンの辞書ではこのrather than ~はinstead of ~だと定義されている。
英語圏での質問サイトでも、このrather than ~はinstead of ~と同意と考えられると解説されている。
"Rather than" can be thought of as a substitute to "instead of"
"Rather than planning to work, why don't you actually work?" is equivalent to saying "instead of planning to work, why don't you actually work"
訳: Rather thanは、instead ofの代用と考えられます。
「働く計画を立てるよりむしろ (rather than)、実際に働いたらどうなの」は、「働く計画を立てずに、実際に働いたらどうなの」と同意です。
日本語圏では、「違いがある」ということを前提とするあまり、こういうところに過剰に意味/ニュアンスをつけて、「rather thanは好みを表し、instead ofは選択を言う」といった、わかったようなわからないような解説がなされることもあるが、そういうのは聞き流して構わない。rather than = instead ofだ。
一方、今回の実例ではよりストレートに、意味的には rather than = not ということになっている。ライヴ・ブログで参照されているローラ・ヒューズさん(FT記者)は
The DUP confirm they are 💯 % voting against the PM’s deal and not abstaining.
と書いており、ライヴ・ブログの地の文では
The DUP, who have 10 MPs, are voting against the deal, rather than abstaining
と表されている。上記を整理すると:
The DUP are voting against the deal and not abstaining.
The DUP are voting against the deal rather than abstaining.
となることが確認できよう。
つまり、A rather than Bは「BではなくA」の意味で、A not Bに置き換えられる場合がある。
I'm planning to buy a laptop computer rather than a desktop.
= I'm planning to buy a laptop computer, and not a desktop.
(デスクトップではなくノートパソコンを買う予定です)
こういうrather thanをいちいち「~よりむしろ」と訳していると、訳文が直訳調になったり文意がはっきりしなくなったりすることがある。その場合は思い切って「~ではなく」としてよい。
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