今回の実例は、この冬、ロシアで人が暮らす区域にシロクマの大群が出現したことを受けて、英ガーディアンの環境部門エディター、ジョナサン・ワッツさんの分析記事から。
「シロクマの侵略」と伝えられたこの件、下記の映像(カナダのCBCニュース)がよく整理されている。YouTubeのプレイヤーで字幕を表示させることができるので、英語の聞き取りに不安がある人も見てみていただきたい。
さて、記事はこちら。
まず最初の文。
No other animal symbolises global warming like the polar bear.
文頭の "no other ~" は《否定》で、「ほかの~は…ない」の意味。そして、「何のほかの」ということを言っているのかが示されているのが文の後半の "like the polar bear" で、文意は「シロクマほど、地球温暖化を象徴する動物は、ほかにはいない」、つまり「シロクマが最もよく、地球温暖化を象徴している」となり、意味的には「最上級」の内容だ。
また、上記引用文で下線を補った定冠詞のtheは《「総称」のthe》と呼ばれるもので、「特定のシロクマ1頭」を言うのではなく、「シロクマという種全体」を言う表現である。このtheの用法は、英文に出てきたときに読んでわかるようにしておくことが必要。百科事典などで使われるような格式ばった表現で、自分で日常的な英文を書くときはなかなか使いづらい。「特定の~1つ」の意味に取られる可能性があるときは、誤解を避けるためにも、「総称」は無冠詞の複数形で表すのがよいだろう*1。
I like cats. ※無冠詞の複数形
(私はねこが好きだ)
I like the cat.
(私はそのねこが好きだ)
※《「総称」のthe》のつもりかもしれないが、この文では「特定の猫、その猫」としか読めない。
次の文:
Over the past three decades, we have grown used to images of malnourished or solitary animals cast adrift on broken ice.
《be used to +名詞》の形は、知っている人がほとんどだろう。「~に慣れている」という意味の熟語だ。「~に慣れている」とは《状態》を表す。
I was used to hot food.
(辛い食べ物には慣れていました)
そのbeがここではgrowになり、「~に慣れる」と《動作》を表している。
I grew used to hot food.
(辛い食べ物に慣れました)
もちろん、growではなくgetやbecomeを使ってもよい。
実例として見た文の意味は、「この30年の間に、私たちは、栄養が足りていなかったり群れ(仲間)から離れてしまったりした動物が、割れた氷の上に乗って海を漂っている写真には慣れてしまった」となる。本当はそんなのを見慣れてしまってはいけないのだが、というニュアンスが強く感じられる表現である。
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