Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

if節のない仮定法、仮定法 (were to ~)、挿入、話法(再掲)

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※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。

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今回見るのは*1イギリスのEU離脱についてのニュース。今回は政治家(ジェレミー・ハント外務大臣)の発言だ。この報道の時点では、テリーザ・メイ首相が国会に「EUとの合意案」を諮る採決の日を控えて、メイ首相の合意案を推す閣僚らが続々とTVやラジオで発言していた。この外務大臣の発言も、その中で行なわれたものだ。

www.theguardian.com

 

 

今回は主要な文法項目として《仮定法》を含む文例である。ここで外務大臣が《仮定法》を使っているのは、「メイ首相の合意案が議会で否決されたら(否決されるようなことがあったら)」という《未来において望ましくないこと、ありそうにないと考えたいこと》を述べているからだ。

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2019年1月11日、the Guardian

 

まず1つ目の例。これは《if節のない仮定法》だ。

Such an outcome would be “enormously damaging” for politicians’ relationships with voters and Britain’s global reputation, the foreign secretary said. 

if節なく、would単独で《仮定法》の意味を表す例としては、下記のような例文がテキストや問題集によく載っている。

  A wise person would not do a thing like that. 

  賢い人なら、そのようなことはしない(だろう)。

今回の実例はこのパターンで、「そのような結果になれば、政治家と有権者の関係、およびイギリスの世界的な評判にとって、『非常にダメージの大きな』ことになるだろう、と外務大臣は述べた」という意味になる。

 

その次の文が、《were to ~の仮定法》。まだ起きていないこと、未来のことを仮定して述べるときに使う表現で、「~するつもりなら」 (if you were to succeed など)の場合もあるが、ここでは「万が一~したら」という意味で、望ましくないことが起きると想定する場合の用法だ(「万が一私が明日死ぬのなら」とか「万が一金庫が盗まれたら」など)。なお、下記で青字で示したコンマとコンマに挟まれた部分は、《挿入》である(とりあえず外して考えればよい)。

If we were, as a political class, not to deliver Brexit, that would be a fundamental breach of trust between the people and the politicians 

"If we were not to deliver Brexit" の部分がif節。Brexitの直後に本来は(上では赤い文字で示した)コンマが置かれるべきなのだが、このように実際の英文ではそのコンマが抜けていることもある。

その後の "that would be a fundamental breach of trust..." の部分が主節。

この構造を踏まえると、「万が一われわれが、政治階級(政治家)として、ブレグジットを実行できなかったら、それは国民と政治家の間に結ばれた信頼の根源的な侵害となるでしょう」という意味が見えてくるだろう。

 

最後のポイントとして、《話法》に注目しておこう。

今回の実例の第1文は、一部、語句単位で引用符が使われているものの、発言そのものは引用符でくくられていない形(間接話法)だ。主節はthe foreign secretary saidで、新聞記事の文体の常としてそれが後置されているが、より固いスタイルにすると、次のようになる。

Such an outcome would be “enormously damaging” for politicians’ relationships with voters and Britain’s global reputation, the foreign secretary said.

↓ ↓ ↓

The foreign secretary said (that) such an outcome would be “enormously damaging” for politicians’ relationships with voters and Britain’s global reputation.

このthat節の中が仮定法で、そのため「時制の一致」の影響を受けていない(主節の述語動詞がsaidと過去形だが、それに併せてずらしたりしていない)ことに留意しておこう。

なお、文中で "enormously damaging" と引用符が用いられているのは、その部分が記事を書いた記者の言葉ではなく、元の発言者(外務大臣)の言葉であることを示すため。話法とは関係ない。

 

続いて第2文。これは引用符を使って発言をそのまま書き記した形(直接話法)だ。

“If we were, as a political class, not to deliver Brexit that would be a fundamental breach of trust between the people and the politicians and I think that would be something that we would regret for many, many generations,” Hunt told BBC Radio 4’s Today programme.

引用符内の前半は、上述した通りwere to ~の仮定法、後半が、that と would が立て続けでわけがわからない印象があるかもしれないが、I think that would be somethingが主節(thatは指示代名詞で「それは」)、that we would regret for many, many generations は something にかかる節(thatは関係代名詞)。wouldは発言の前半からのつながりで《仮定法》のニュアンスがあり、「そういうことは、私たちが何世代もずっと後悔することになるような何かになると、私は思います」という意味になる。

そういう文が引用符でくくられて、「……とハント外務大臣は、BBC Radio 4のTodayという番組で語った」と記述されているわけだ。

 

■記事そのもの: 

https://www.theguardian.com/politics/2019/jan/11/uk-faces-prospect-of-no-brexit-if-may-deal-rejected-says-hunt

 

 

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英文法解説

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*1:「今回見るのは」ではなく「今回見るのも」か?

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