このエントリは、2月上旬にアップしたものの再掲である。接続詞のasについてざっくりとまとめてあるので、「asが出てくると意味が取りづらくて困る」という方はぜひご一読いただきたい。
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今回も前回と同じ記事から、別の項目を拾ってみよう。イギリスのEU離脱に関する1月半ばのロイターの報道記事より。
キャプチャ画像にある2番目のパラグラフ:
As the United Kingdom tumbles towards its biggest political and economic shift since World War Two, other EU members have offered to talk.
ポイントは文頭にあるAs. これは《接続詞のas》だ。
Asという単語は、簡単そうに見えて案外と、英文解釈に出てきたときに意味が正確に取りづらい単語のひとつである。「意味が正確に取りづらい」ということは入試で問われやすいということでもあり、国公立の二次試験で下線部和訳や要約で出題されているのをかなりよく見る。なるべく早い段階で整理しておくのがよいだろう。
asには前置詞と接続詞がある
まず、asには前置詞のasと接続詞のasの2種類がある、ということを押さえておかねばならない。前置詞は直後に名詞、接続詞は直後に節(S+Vという構造)が来る。
前置詞のasは「~として」の意味を押さえておけば十分だろう。
I advise you as a friend.
(友人として、君に忠告する)
He mistook me as my brother.
(彼は私を、兄と間違えた)
接続詞のas
問題は接続詞のasである。意味がいろいろあってややこしいのだ。
ここで辞書を参照していただきたい――電子辞書をお使いの方も多いと思うが、電子辞書そのものは便利ですばらしいものであるにせよ、こういう「意味がいろいろあってややこしい」接続詞や前置詞を調べるには、紙の辞書のほうが適している。電子辞書は狭い画面内に情報を表示するためにいろいろ制限されており、語義は一覧できるもののたくさんの例文をぱっと見るということがやりづらい。一方、紙の辞書は「コンパクトなスペース内にたくさんの情報を表示する」ことに最適化されているので、ページをめくっただけで語義も例文も目に入るので、自分が探しているasはどれだろうか……というのが見つけやすい。
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手元に紙の辞書はないが、スマホやPCでネットが使える場合は、まずは無料で使えるウェブ辞書のサイトやアプリを参照してもらいたい。学習者の求める質としては紙の辞書には及ばないかもしれないが、電子辞書では見えづらい情報も一気に目に入ってくるはずなので、いろいろと手っ取り早い。
例えばWeblioの英和辞典では、研究社の『新英和中辞典』などが参照できるようになっている(無料)。
スマホのアプリでは、各辞書が出している純正のアプリがあるが、紙の辞書より高額だったりしてなかなか手が出しづらい。上記のWeblioがアプリを出しているほか、「All英語辞書」というアプリでオンライン辞書が複数同時に検索できるので、それらも試してみてもらいたい。
なお、「Google翻訳」などウェブで使える自動翻訳は、絶対に、辞書代わりには参照しないこと。自動翻訳と辞書は目的が異なるので代用できないし、自動翻訳は文脈を見て訳語を提示してくれるだけのツールなので、文脈なしで単語だけ調べることはできない。
閑話休題。《接続詞のas》だが、こうして辞書を確認すると、次の4つの語義が見つかるだろう。
1. 〈様態・状態〉「~のように、~のままで」
When in Rome do as the Romans do.
(ローマにいるときは、ローマ人が行動するようにしなさい)*1
2. 〈時〉「~したとき、~しているとき、~しながら」
As we sat on the beach, John said he would move to Canada.
(私たちが海岸で座っているときに、ジョンはカナダに移住することにしたと言った)
3. 〈比例〉「~するにつれて」
The air got colder as they went up.
(彼らが上にのぼるにつれて、空気は冷たくなった)
4. 〈原因・理由〉「~なので」
As I was busy, I wasn't able to visit the museum.
(忙しかったので、博物館に行くことができなかった)
5. 〈譲歩〉「~だけれども」
Young as she was, she played so well that she won the first prize.
(彼女は若かったけれども、非常によくプレイして優勝した)
これら4つのうち、Asでしか表せない意味があるのは、1番目の「~のように」と3番目の「~するにつれて」だ。ほかは、多義的なasではなく別の接続詞を使うことが多い(が、asがその意味で用いられる場合もゼロではないのがややこしい)。
2番目はwhile, whenで言える場合はそちらを使うことが推奨されており、〈時〉を表すasとしてよく見るのは「~するにつれて」の意味である場合がほとんどだと言っても過言ではない。
4番目はbecauseやsinceを用いて表すのが普通と思っておいてよい。
5番目は古風というか堅苦しい表現で、普段読むような新聞記事などに出てくることはほとんどない(出てくるとすれば誰かの発言の引用とか、わざと古風に書いている箇所くらいではないかと思う)。
接続詞のas、つまり《as + S + V》の形になっているときのasの解釈には、これら5つの意味の中のどれなのかを考えることが必要だ。
そして今回の実例では:
As the United Kingdom tumbles towards its biggest political and economic shift since World War Two, other EU members have offered to talk.
〈理由〉や〈譲歩〉と考えてしまうと意味が通らない。「~するにつれて」もおかしい。「~のように」でもない。
これは「~するとき」の意味で、「英国が第二次世界大戦以降最大の政治的・経済的変化に向かってよろよろと進んでいくなかで〔ときに〕、他のEU加盟国は話をすることを申し出てきた」といった文意になるだろう。
〈時〉を表すasはこのように「同時性」を表し、また「あちらでは~、こちらでは…」といった「対照」を示している実例が多いように私は感じる。このAsをWhenにしてしまうと、ずいぶん違った印象を受けると思う。
このような使い分けは、例えば日本語で「したがって」と書くか「だから」と書くか「そのため」と書くかといったようなことと似て、「文法」だけで考えるのは無理があるだろう。しかし、正確な(英文に書いてある通りの)意味の解釈のためには、「文法」の知識は不可欠となる。
*1:「郷に入りては郷に従え」と同義のことわざ。