Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

Why don't we do ~?, tooを強める副詞のfar, 等位接続詞andの接続(ジェレミー・クラークソンの箴言?)

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今回の実例は、普段は私の見てる画面には流れてこない人のツイートから。

私のTwitterは、英語圏(主に英国とアイルランド)の報道機関やジャーナリスト・コラムニスト、研究者、NGOや国連専門機関などのフィードが大半を占めている。フォローしている報道機関などは政治的には左派で、英国の極右系アカウントはミュートないしブロックしてあり、デイリー・メイルやザ・サン、デイリー・エクスプレスなど右派煽動・デマゴーグ系報道機関のフィードは、特にミュートなどの機能を使わなくても、あまり視界に入ってこない(実際、デイリー・エクスプレスのフィードなどは、ワード検索したときにしか目にしない)。これが「フィルターバブル」と言われるもので、わかりやすく図式的に言えば、ガーディアンをフォローしてガーディアンで書いてるジャーナリストやコラムニストのツイートによく反応する私の視界には、対極にあるデイリー・メイルのフォロワーやそこで書いてるジャーナリストたちの言ってることはほとんど流入してこないわけだ。「フィルターバブル」について、詳細は下記書籍を参照のこと。 

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さて、このような事情で、Twitterを使っていて何十万人単位のフォロワーを持つ著名人・芸能人は英語圏にもそりゃもう大勢いるが、私がフォローしているような人々とは対極に位置する人たちに好まれる著名人のフィードは、私の見ているところには現れない。ジェレミー・クラークソンはそういう著名人のひとりだ*1

私が車に興味があったり、『トップ・ギア』をよく見ていたりすれば、私がフォローしていたりよくインタラクトしたりしているユーザー経由で、クラークソンのフィードが表示されることもあったのだろうが、あいにく車には全然興味がないし『トップ・ギア』も年末年始の夜中にまとめて放映しているのをダラダラ見たりしたことがある程度で(車運転しなくてもそれなりにおもしろく見れたのはさすがの番組作りだと思ったけど)、つまりどこをどうたどっても接点がない。そういう人のフィードは、どんなに著名な人のであれどんなに話題になっているツイートであれ、Twitterはシステム上、基本、表示しない。私がフォローしている人たちが大勢フォローしていようとも*2、誰かが特にリツイートでもしない限りは、私の見ている画面には彼の発言は表示されない。

そして実際、ジェレミー・クラークソンのツイートを、私がフォローしている誰かがリツイートするということは、これまでなかった。

 

だから昨日、英国会下院ですごいことになったあとゲラゲラ笑いながらふと見た画面に流れてきていたおもしろい発言に「ははは」と笑ってから発言主を確かめたとき、文字通り、二度見してしまった。 

「ジェレミー・クラークソン」って、あのジェレミー・クラークソン?

Verifiedのバッジもついてるし、 そうなんだろうな。

この人、Brexit支持じゃないのかな? と思ってさくっとウィキペディアを見てみると、Brexit不支持で、10年くらいまでよくいた右翼のEU強化論者のようだ*3

ともあれ、本題に入ろう。

ツイートの第二文:  

Why don’t we all just agree this Brexit business is far too complicated and pretend it never happened?

《Why don't we[you] do ~?》は、直訳すれば「なぜ私たち〔あなたがた〕は~しないのか」だが、要は「~しようではないか」という《勧誘》の表現のひとつである。学校英語でも誰もが習う表現だ。

この例ではwe allのallと、「単に」の意味の副詞justが入っているから少し複雑に見えるかもしれないが、それを取り除くと "Why don't we agree ~?" という形が見えるだろう。

ちなみに主語はweでもいいしyouでもいいと学校では教わるかもしれないが、この例のように「(自分も含めて)みんな」と言いたいときには一人称でweを用いる。この場合、意味合いとしては「みんな、~しようじゃないか」という感じになる。

より一般論的なことを言いたいときはyouのほうがよいだろう。youを主語にしても「(自分も含めて)みんな」というニュアンスにならないわけではないが(だから、youを主語にしておけば自分は除外される、と決めてかからないほうがよい。これは文脈次第なので)、意味合いとしては「~したらよいのではないか」「~してみてはどうだろう」くらいの距離感が感じられることが多い。

 

さて、次の文法項目。agreeの目的語のthat節(thatは省略されている)の中、"this Brexit business is far too complicated"  の下線の部分。tooは形容詞・副詞を修飾して「あまりにも~」の意味を表すが、その「あまりにも」をさらに強調するのがfarという副詞である。

  The bicycle was too expensive for me. 

  (その自転車は、私にとってはあまりにも高額すぎた)

  The bicycle was far too expensive for me. 

  (その自転車は、私にとっては全然手が届かないレベルで高額すぎた)

上記の例文の場合、上の例文でも下の例文でもどちらもこの人はその自転車を買えなかったということになるが、farがあると「論外の値段」という意味合いになる。

 

ここまでをまとめると: 

Why don’t we all just agree this Brexit business is far too complicated

文意は「みんな、ここはひとつ、このBrexitという作業はどうしようもないほど複雑すぎるということでさっくり合意したらいいんじゃないか」となる。

 

このあと、《等位接続詞のand》による接続があって、文はまだ続いている。

and pretend it never happened?

《等位接続詞のand》のすぐ後にあるのは、pretendという動詞の原形なので、このandは先行する動詞の原形とつながっている。

ということを読んで、先行する部分を見てみると、次のような構造が見て取れるだろう。

Why don’t we all just agree this Brexit business is far too complicated and pretend it never happened?

つまり、「agreeしてpretendしようじゃないか」という構造である。

複雑なことは何もないが、こういった構造を、いちいち帰り読みをしなくても正確に、瞬時に把握できるようにするには、それなりの集中力と、それなりの練習が必要となる。

そして「仕事で使う英語」など実用英語で最も重要なのは、こういう地味な基礎力である。

 

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2019年9月3日、Twitter @JeremyClarkson

 

 

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*1:この人はルパート・マードックのNews Corp傘下の新聞でコラムを書いたりもしているが、読めば読むほど言語的にバカになる系の文章なのでおすすめしない。「あれかこれか」の単純化が彼の持ち味だが、元からニュアンスが体感できていない英語学習者にとっては、筆者の意図していないような害が大きい。

*2:今見たら私がフォローしている2166人中90人がクラークソンをフォローしていた。案外多い。

*3:'Clarkson does not support Brexit, stating that while the European Union has its problems, Britain would not have any influence over the EU, should it leave the Union. He envisions the European Union being turned into a US-like "United States of Europe", with one army, one currency, and one unifying set of values.' --- Wikipedia: Jeremy Clarkson

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