このブログの管理画面にアクセスするのもずいぶん久しぶりになってしまってすみません。前置きなど書いているとまた時間がかかってしまうので、いきなり本題です。
今回の実例(出典は下に書きます):
Today, I nearly lost my life. The school where my family and I were sheltering was targeted with random shelling. A bullet passed right next to my head and exploded in the wall beside me — as you can see, this is the bullet.
https://x.com/MahmoudMassri15/status/1933522472374018246
これは、ガザ地区で北部の自宅を追われ、遠く離れた南部の町の「安全な区域」とされている場所にある学校の建物に家族ともども身を寄せている大学生の書いた文の一節と、その文に添付されている写真です。
その学校のあるエリアにイスラエル軍の攻撃があり、流れ弾が飛んできたときの身も凍るような体験を、さらっと描写した一節です。
ここで注目したいのは、下に太字で示す通り、《不定冠詞のa》と《定冠詞のthe》です。
A bullet passed right next to my head and exploded in the wall beside me — as you can see, this is the bullet.
自宅を奪われ避難所に身を寄せている筆者(もちろん非戦闘員です)の頭の脇をかすめて飛んで行った銃弾は、不定冠詞をつけて "a bullet" といい、壁に着弾したその銃弾(を写真に撮ったもの)は定冠詞で "the bullet" といいます。
非常に基本的な英文法なのですが、もともと「冠詞」というものがない日本語を母語としている上に、「冠詞なんていう細かいこと(はどうでもいいのにこだわるなんてばかげている)」というプロパガンダみたいなのが横行している環境にいると、どうしてもこういうことを「なんとなく感覚で」理解しているだけ、ということが多くなります。しかも最近は、学生さんが、英文法を「文法」として学ぶ機会が激減している。
でもこういう「文法」を知らないと、ガザのこの大学生(マフムードさん)の書いているような、ちゃんと意味が通じる英文は書けない。
ガザの人たちが英語でものを書くことについては、英語教育者だった故リフアト・アルアライール教授が編纂した、ガザ地区の若者たちによる英語での創作短編集の前書きに説明されています。「英語帝国主義がー」といううねりに対抗して築き上げられたのだろうと思しき、強靭な思想です。読んでみてください。下記の本の前書きの部分にあります。
原著も電子書籍があるので、そちらでも。
さて、今回実例として参照したマフムードさんの投稿は、全文を下記で日本語化してあります。本人とも連絡を取って私個人でやっている翻訳プロジェクトです。
というわけで、今月に入ってnoteを使い始めています。
ガザ地区の中からの市民の声や、ガザ地区の市民を支援する外部の人々の声、国際法の専門家の解説などの翻訳を「翻訳」として扱うことは上記のnoteでやっていきます。こちらのはてなブログでは英文法をやります。(頻度増やせるようがんばります。)
英文法の安定っぷりが、今の私には癒しです。
第二次大戦後の世界秩序の基礎だった国際法は、イスラエルとドイツによってガザで墓場に送られてしまいました。正直、今もまだ「国際法では」と言い続けることは、延命措置にもなってないかもしれない。Twitter/X上の「国際法の死」を語る冷たい言葉――それはシオニストからだけでなく、パレスチナ連帯筋やパレスチナ人ディアスポラからも発され、後者が重く響く――に接するたびに、「どうしてこうなった」としか思えず、「どうしてこうなった」かを考えると行きつくところは2002年から2003年のイラク戦争のゴリ押しなんですが、「どうしてこうなった」よりも「今、どうすればいいのか」を考えるべきであり、それについては「国際法」の骸を振り回すような今日(昨日かも)のマクロン大統領の発言などを聞いてはらわたが煮えくり返るような思いと「言ってくれたんだ」という思いがないまぜになって頭がぐるぐるするばかりで、答えというか解などないわけです。
一方で英文法ではそんなことは起こらない。この定冠詞にはこういう機能とこういう意味がある、と言い切れる。
今の私には英文法は癒しです。
そんなもののために、ガザの人の発言を利用するのは不謹慎だと言われるでしょうが、マフムードさんにはDMで許可取ってあります。彼もそういうことはわかっている。自分の「売り」が英語であるということは認識している。彼だけでなく、ガザの英語話者はみんなそうです――むろん「英語が好き」「英語が肌に合う」といったこともあるでしょうが、やはり「いい仕事に就くために英語を身につける」「学問のために英語が必要なのでやる」といったことでやってきた人たちです。
本日の内容が少しでも役に立ったと思われたら、1ドル、1ユーロでも彼に送金してください。今回の「頭に被弾しそうになった」件のほかにも、日本語圏でも報じられている、アメリカが手を出し口を出して「支援」名目でやっているデス・トラップ作戦、GHFで物資を取りに行って死にそうにもなっています。彼はまだ学生なのに、長男坊だから(家父長制!)11人家族を養わなければならなくなり、オーストラリアのChuffedというサイトを使ってクラウドファンディングをやっています。
chuffed.orgクラファンの文面も日本語化してあります。

英語でTwitter/Xを使って日々のことを書き、それで世界中の人とつながってクラファンもやっている彼にとって、これまでがんばって身に着けてきた英語が、今や生活の糧を得る道具、日本語で流行りのフレーズを使えば「武器」です(彼は非戦闘員ですが)。それは価値を生まねばならない。彼の英語から学べること、確認できることはたくさんあります。学んだら、彼に還元してください。小麦粉1キロを手に入れることすらままならないところにいる若者に。
We are now overwhelmed with intense fear and a deep sense of helplessness. Ever since the complete internet blackout in Gaza, the feeling of isolation has become heavier than ever. After great struggle and hardship, I was finally able to connect to the internet—just to send you… pic.twitter.com/LqQ8TrsbQV
— Mahmoud Massri | مَحْمُود 🇵🇸 (@MahmoudMassri15) 2025年6月13日


