Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

of + 抽象名詞、比較級の構文、代名詞that、完了不定詞など (英国会の閉鎖は法律違反とのスコットランド裁判所の判断の持つ意味)【再掲】

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このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。専門性の高い分野での出来事について、専門知識のある人が一般人向けにわかりやすく、読みやすく解説している文章である。といっても読者はフィナンシャル・タイムズを読む層だから、少々難し目ではある。「一流ビジネスマンはこういう英語を読んでいる」的な位置づけをすると、英語学習のモチベーションが上がるかもしれない。

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今回の実例は、FT(フィナンシャル・タイムズ)に寄稿された文章を、寄稿したご本人がキャプチャ画像で紹介している一節から。

寄稿された文章の背景は、私が解説しようとするととても長くなって時間も食うので、時事通信の下記記事をご参照のほど。見出しの意味がわかりづらいのだが、「スコットランドの裁判所が、英議会閉鎖は違法と判断した。野党議員の提訴を受けたもので、野党議員の主張を支持したことになる。敗けた政府は上訴した」ということである。

www.jiji.com

今回の実例として見る文章は、この判決についての法律解説である。書いたのはデイヴィッド・アレン・グリーンさん。法律家で、弁護士として活動していたときには、サイモン・シンを英カイロプラクティック協会が名誉棄損で訴えた裁判で、被告となったシンの側にプロ・ボノ(社会のために無報酬で業務を行うこと)で参加し、最終的には訴えた側からの訴訟取り下げという結果を勝ち取っている(この裁判についてはシンの著書を翻訳された青木薫さんによる解説に詳しい)。現在は法律解説を専門とする著述家として活動している。

そのグリーンさんが、上記のスコットランド裁判所の判断について、「スコットランドの判事たちは、国会休止は法に反するものであり、ジョンソン首相は女王をミスリードした(欺いた)と判断した」と端的にまとめた一文を添えてTwitterにフィードしたのが下記、FTへの寄稿の一節のキャプチャ画像である。

f:id:nofrills:20190912110437j:plain

2019年9月11日、Twitter @davidallengreen

 

FTは基本的にサブスクライブしていないと記事が読めないのだが、記事はこちら: 

https://www.ft.com/content/12097e7c-d47f-11e9-8367-807ebd53ab77

紹介しているパラグラフの最初に、筆者のグリーンさんは「ジョンソン政権はいきなり6件も動議を否決され、議会での議事の主導権も奪われるという波乱のスタートを切ったが」と前置きして、今回のスコットランドの裁判所での判断について、次のように解説する。

But this defeat is of far more constitutional significance than that of any vote in the House of Commons. 

太字で示した部分は、《of + 抽象名詞》の形。この例ではその抽象名詞に形容詞がついたうえで比較級の構文の中に入っていて、ofと抽象名詞の間にいろいろ挟まっているが、基本的には、"of significance" という形である。

 

《of + 抽象名詞》は《形容詞》に等しいが、多くの場合、形式ばっていて堅苦しい言い回しになる。「重要だ」ではなく「重要性を有する」というような感じ。

いつも参照している江川の英文法には、「抽象名詞を含む慣用句」として次の例文が載っている(7ページ)。

The matter is of no importance. (= not important) 

(重要ではない) 

英文法解説

英文法解説

 

 

『ロイヤル英文法』では次の例文(139ページ)。

This book is of no use (= useless) to me. 

(この本は私には役に立たない)

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 

 

……という具合に、両方ともnoがついた否定文が例文として挙げられているのだが、実際の英語では肯定文でもそこそこよく用いられ(堅苦しい表現ではあるが)、特に "of significance" は学術論文などでもよく見るフレーズである。

というわけで今回の実例の文、"this defeat is of ... significance" は「この敗北は重要である」の意味である。

 

さて、その文と合わさっているのが比較級の構文だが(下記下線部):

this defeat is of far more constitutional significance than that of any vote in the House of Commons. 

まず、farは形容詞・副詞の比較級について「ずっと」の意味を表す《強調》の語である。 

  Roger is far taller than Ben. 

  (ロジャーはベンよりずっと背が高い)

  This smartphone is far more expensive than mine. 

  (このスマホは、私のよりずっと高価である)

ここでfarが修飾している "more constitutional" は、英国の憲法というものについてある程度把握していないと意味が取れないし翻訳もできないという厄介な語である(辞書を見てもどうとらえていいのかわからないと思う)。つまり一般的にはどう日本語にしたらいいのかわからない語で、大学入試などでこのレベルの語の和訳を問われることはまずないし、読むだけなら英語のままにしておけばよいが(more constitutional significance = 「よりconstitutionalな重要性」程度に日本語にすれば文意は取れるはずだ)、ちょっと難しいんだけどウィキペディア日本語版によくまとめられている。

ja.wikipedia.org

 

さて、その後の部分。ここでは《比較級+any》の形になっていて、意味としては《最上級》の意味を表している。「どんな~より…だ」は、つまり「最も…だ」となるからである。

また、thanの直後にあるthatは先行の名詞の反復を避けるために用いられる《代名詞のthat》で、ここではdefeatを受けている。つまり、

this defeat is of far more constitutional significance than that (=defeat) of any vote in the House of Commons. 

このようなことになっていて、文意は「この敗北は、下院におけるどんな採決のそれ(=敗北)よりも、ずっと大きなconstitutionalな重要性を有している」となる。

 

その次の文: 

He is the first UK prime minister to have been found by a court to have misled the sovereign.

これもまた《完了不定詞》や《完了不定詞の受動態》のよい例だが、ここまで書くのにかなり時間がかかっているので、簡単に済ませよう(「簡単に」つっても5分やそこらでは書き終わらないのだが)。

"He is" なので、文自体の時制は《現在》、この文で《完了不定詞》が用いられているということは、《過去》に起きたことを述べていることになる。「彼は~した最初の英国首相である」と、2つの時制が1つの文に同居している形だ。

《完了不定詞の受動態》だが、これは《to have been + 過去分詞》の形。《be + 過去分詞》の受動態で、beの部分が完了不定詞のto have beenになっているだけである。

さらに、この《完了不定詞の受動態》の部分に入っているfoundは法律用語でSVOCの構文を取り「~が…であると判定する、評決する」の意味だが、その「…であると」の部分(SVOCの構文のC)が《完了不定詞》になっている(判断するのは過去の行為についてなので、完了不定詞が用いられるのは当たり前である)。

つまりこの文は「彼は、国家元首をミスリードした(欺いた)と法廷によって判断された最初の英国首相である」という意味。

よりこなれた日本語にすれば「国家元首をミスリードしたと法廷が判断した英国首相は、彼が最初である」。だから今回の敗北はconstitutionalな重要性を持つ、というのがこの解説文の内容である。

 

グリーンさんのTwitterフィード*1

 

 

 

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*1:グリーンさんはタイミング的にリプライに目を通せなくて「炎上」させられる可能性があるときなど、頻繁にprivateにしてしまうので、ブログのエンベッドではうまく表示されていないことがあるかもしれない。

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