Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

長い文, コンマ, 分詞構文, 同格, 前置詞+動名詞, those who ~など (弟がイスイス団に惨殺された兄による、寛容と理解を進める取り組み)

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今回も、前回に引き続き、「イスラム国」を自称する集団(以下「イスイス団」)の被害を受けた人々が、そのリーダーの死亡を受けて発言したことをまとめた記事より。

 

初回となった前々回はイスイス団により集団として蹂躙され、自身は奴隷として人権蹂躙・性暴力の被害者となったヤジディの女性、ナディア・ムラドさんの発言を、前回はイスイス団による大量殺戮の被害者となり墓標もなく埋められている人々の身元の特定という困難な活動に従事するシリア人男性カリファ・アルクデルさんの発言の部分を見た。

今回は、2014年夏に始まったイスイス団の「恐怖のばらまきショー」で殺害された英国人の人道支援ワーカー、デイヴィッド・ヘインズさんのお兄さんの発言を見ていこう。

 

ヘインズさんは戦乱で破壊された町のインフラを整備するという活動をしている国際支援団体の一員で、過去にはバルカン半島などで仕事をしてきた。2012年以降情勢が「内戦」化したシリアで、アサド政権軍によって破壊された町から逃れてきた人々が暮らす国内避難民キャンプのインフラを整備するためにシリアに入り、2013年3月に何者かに拉致された。ヘインズさんの行方不明については緘口令が敷かれていたが、2014年9月初めにイスイス団が全世界に向けて公開した米国人ジャーナリストのスティーヴン・ソトロフさんの「処刑」の映像の末尾にヘインズさんが写っていたことで、彼がイスイス団に拘束されており、極めて危険な状態にあることが全世界に知らしめられた。それからわずか10日ほどで、ヘインズさんが殺害される映像が公開された。下記は当時の記録である。

matome.naver.jp

 

イスイス団によるプロパガンダ(宣伝)目的の「処刑」ビデオは、その後も続いた。一連の映像は、当時イスイス団が「首都」としていたシリアのラッカ付近で撮影されているが、そこでは2014年8月の米ジャーナリスト、ジェイムズ・フォーリーさんを皮切りに、同年9月は上述のソトロフさん、ヘインズさん、10月には英国人のタクシー運転手で国内避難民のための物資輸送のボランティアとして現地に来ていたアラン・ヘニングさん、11月には米国人で緊急医療の専門家として避難民などに応急措置などを指導していたピーター・カッシグさんが、翌2014年1月には日本人民間人の湯川遥菜さんとジャーナリストの後藤健二さんが「処刑」され、その殺害および/または殺害後の映像がネットに流された。

こういったシリアでの殺害と同時に、またその後も引き続き、イスイス団関連組織はシリア国外でも「処刑」を行い、その映像をたびたびネットに流して「恐怖による支配」を行おうとしてきた。それらについて、詳細は英語版ウィキペディアの下記エントリをご参照いただきたい。

en.wikipedia.org

 

デイヴィッド・ヘインズさんは1970年にイングランドイースト・ヨークシャーに生まれ、子供の頃にスコットランドのパースに引っ越した。両親が英空軍の人であちこちに転勤して回っていたので幼馴染とずっと仲良くしているということができず、デイヴィッドさんのお兄さんのマイクさんは、「兄弟は兄弟である以上に親友だった」と回想している。マイクさんは弟の殺害後、"Global Acts of Unity" という活動を開始し、イスイス団が進めようとしている社会の分断に抗っていくことを若い世代に積極的に伝えようとしている。

今回実例として見るのは、前々回・前回見たのと同じ記事から、そういったことを書いた部分。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

f:id:nofrills:20191101120836j:plain

2019年10月28日、the Guardian

キャプチャ画像で一番下のパラグラフより: 

After his brother’s death, fearing that innocent Muslims would be blamed or victimised in the aftermath, Haines set up Global Acts of Unity, a campaign promoting unity, tolerance and understanding in schools.

コンマが多くてかなり息の長い文だが、構造は難しくない。ひとつひとつ見ていこう。

文を最初から素直に読んでいくと、なかなか主語が出てこないので困惑するかもしれないが、リアルな英文ではよくあることだ。最初の書き出しのAfterの部分は前置詞句なので主語にならないから、その次に行くと、ここも主語ではないものが来ている。

最初のコンマのあと、"fearing that innocent Muslims would be blamed or victimised in the aftermath" の部分は、形式的にはコンマとコンマで挟まれた《挿入》で、中身は《分詞構文》である。したがって、文の前半は「弟の死後、~することを恐れて、ヘインズ氏は…した」という意味になっているということが読み取れるだろう。

ここで文の主語と述語がようやく出てくる。主語が "Haines" で、述語が "set up" だ。「弟の死後、~することを恐れて、ヘインズ氏はGlobal Acts of Unityを設立した」ということになる。

その後、"a campaign ..." の部分は、"Global Acts of Unity" という固有名詞を説明する《同格》の句である。

この部分でわかりづらいかもしれないのは、またコンマが出てきている点だが、これは等位接続詞andで3つのものをつなぐときのコンマ、つまり《A, B and C》のコンマで、意味は「学校で、団結と寛容と理解を促進するキャンペーン(取り組み)」となる。

 

その次の文: 

“By ensuring (that) our young people know how to stand up to hatred together, we will defeat those who seek to divide us,” he said.

太字で示した-ing形は動名詞で、前置詞のbyの目的語になっている。また、その直後にはthat節のthatが省略されていて、"our young people know how to ..." の部分は、our young peopleが主語、knowが述語という構造だ。ここまで「私たちの(社会の)若い人々(子供たち)が、憎悪に対してともに立ち上がる方法を知っているようにすることによって」という文意になる。

そしてこの文の主節、" we will defeat those who seek to divide us" は、《those who ~》(「~する人々」)が出てきているが、「何とかして私たちを分断しようとする者たちを打ち負かす」という意味である。seek to do ~は「~しようとする」だが、try to do ~やwant to do ~となかなりニュアンスが異なり、「~しようと腐心する」といった意味合いになるだろう。

 

 

マイク・ヘインズさんのGlobal Acts of Unityの活動については、彼自身のサイトを見るのがわかりやすいだろう。特に "My story" というページに、マイクさんの理念が分かりやすく説明されている。

https://mikehaines.globalactsofunity.com/my-story/

 

 デイヴィッドさんには子供がいた。現在、22歳になった娘のベタニーさんが今年シリア北部のクルド人支配地域を訪れ、父を殺したイスイス団の女性メンバーたちが収容されているキャンプで彼女たちと話をし(決定的に通じないところもある)、イスイス団を打ち負かしたクルド人武装勢力の人に案内されて父を殺した「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エムワジが爆殺された現場に立ち、父が殺された映像に出てくるのとよく似たラッカ郊外部の平野に行く。墓標もなく埋められている遺体が掘り起こされ、身元特定のための調査が行われている現場も見ている。「何年かかるかわからないけれど、必ず父を取り戻す」と彼女は語る。


Daughter of British aid worker David Haines murdered by ISIS travels to Syria | ITV News

 

参考書: 

 

英文法解説

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徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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