Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

the + 比較級 ~, the + 比較級 ..., 形式主語, やや長い文 (新聞報道と環境問題)

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今回の実例は、ジャーナリストが自分の仕事と自分について書いている文章から。

通常、ジャーナリストは何か起きていることについて広く知らせる記事を書くのだが、自分について書くことはまずない。今回、こういう形で「自分 (I)」を主語にした記事が書かれているのは、所属の新聞社がこのジャーナリストが専門とするテーマについて、大々的なキャンペーンを開始したからだ。

www.theguardian.com

 

ガーディアンは、これまでもずっと、地球環境というテーマに熱を入れてきていた。「地球環境」という大きな話を構成するのは「それぞれの地域の環境」で、特に南米など開発業者がチャンスを求めて乗り込んでいっている地域では、自分たちの暮らしている環境を(大企業の開発から)守ろうとしている、地域に根差した環境保護運動のリーダーたちが殺害されるなどしている。下記は3か月前の記事。

www.theguardian.com

 

数か月前に全地球規模で(一瞬だけ)大きな関心を集めたアマゾンの火災にもそういった開発の手がかかわっているのだが、つい数日前、自分たちの環境を守ろうと業者に対して立ち上がっていた地元の指導者が殺害されたというニュースがあったばかりだ。

www.washingtonpost.com

 

日本の報道機関はこういうことはほとんど伝えないから、日本語でしか情報を取れない・取らない人たちは、世界でこういうことが起きているということを知らない。そうして、ネットでは、環境保護活動家を冷笑的な目で見ては、感情的な(物事をちゃんと考えもしていない)批判を浴びせて悦に入る人たちの声ばかりが大きく、目立つ。

このいびつな情報空間は、チラ見するだけでも疲れてしまうのであまり見ないようにしているのだが、ああいう冷笑的な人々は、いわゆる「欧米」の環境保護主義運動に大きな影響を与えたのが、日本を含む東洋の自然に対する考え方であるということを果たして知っているのだろうかと思う。

今回の記事は、そういったことが、ジャーナリスト個人の経験を踏まえて書かれている。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

記事を書いたジョナサン・ワッツ記者は、1990年代に日本でジャーナリストとして仕事を始めた。その後、中国特派員となり、美術家のアイウェイウェイさんのインタビューしたり、レアメタルの採掘現場の取材に赴いた先で当局から圧力をかけられたりといった記事をたくさん書いたあと、アマゾンを擁するブラジル特派員となり、当時ブラジルを揺るがしていた政治の問題(汚職)を報じ、環境問題を深く取材し、経済状況がめちゃくちゃなことになった隣国ベネズエラを縦断して実際に何が起きているかを報告するなどしたあと、現在はガーディアンの地球環境エディター (global environment editor) として、地球環境がどういうことになっているかを書いている。2011年3月の東日本大震災に際しては急遽東北に入り、震災後に出火してまだ火がくすぶっていた大槌の町から、地震津波が日本の街に何をしたのかを伝えていた。

今回の記事はとても読みやすく、力強い上に、長さ的にもちょうどよい文章なので頭から読んでいっていただきたいが(大学入試で使われそうな「私 (I)」を主語にしたよいエッセイだ)、実例として見るのは少し読み進めたところ。

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2019年10月28日、the Guardian

But the more I travelled as a foreign correspondent, the harder it became to ignore how the degradation of the air, water, soil and climate was threatening people, other species and future generations.

この部分では《the + 比較級 ~, the + 比較級 ...》の構文(「~すればするほど、ますます…になる」)が使われている。

  The higher you go up, the colder it gets. 

  (上に上がれば上がるほど、寒くなる)

  The bigger the country's population, the more tourists it hosts in tourist accomodations.*1 

  (その国の人口が多ければ多いほど、より多くの旅行者を旅行者用宿泊施設に受け入れている)

 

ここでは、" the more I travelled as a foreign correspondent, the harder it became to ignore ..." は「外国特派員としていろいろなところへ行けば行くほど、…を無視することは難しくなった」という意味である。

"the harder it became to ignore ..." のところが少し意味が取りづらいかもしれないが、 《the + 比較級 ~, the + 比較級 ...》の構文にあてはめられる前の文の形は "it became harder to ignore ..." というものだったということがわかれば、読解は正確にできるだろう。このitは《形式主語》で、to ignoreが《真主語》だ。

 

では、ignoreの後の部分(ignoreの目的語)はどうなっているか。

how the degradation of the air, water, soil and climate was threatening people, other species and future generations.

これは疑問詞のhowの節で、「いかにSがVするか」の意味。

節内の主語 (S) は " the degradation of the air, water, soil and climate" で、ここでは《等位接続詞》のandが3つ以上のものをつなげており、カッコを使って説明すると "the degradation of the (air, water, soil and climate)" となる。

一方、節内の動詞 (V) は "was threatening" で、そのthreatenの目的語が "people, other species and future generations" と、こちらも《等位接続詞》のandが3つ以上のものをつなげている形。

このように、andを使った長めの列挙が1文に2つも入っているので、見た目はかさばったやや長い文になっているが、構造の取り方は比較的シンプルである。

 

次の文: 

These themes rarely made front-page news

このmakeは「~を作る」という意味ではなく「~になる」という意味。

「~になる」という意味を表すmakeについては、以前解説したことがあるが、今回のこれはそれとはまた違う。以前の例は、『ジーニアス英和辞典(第5版)』の他動詞のmakeの語義のうち、15番目の例だったが、今回は他動詞のmakeの4番目の語義だ。『ジーニアス英和』の1285ページを参照: 

(4)〈要素が〉〈物〉を構成する; 〈事・数字が〉Oになる

例文としては、次のようなものが『ジーニアス英和』では用いられている。

This makes his fifth novel. これは彼の5番目の小説だ。 

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

 

 

今回の実例、"These themes rarely made front-page news" は、「これらのテーマが、一面に掲載されるニュースになる(を構成する)ことはごくごく稀だ」、「これらのテーマが、一面のニュースになることはまずない」の意味。

環境問題はそれ自体は地味な、科学の話だ。それが直接一面を飾るニュースにはならなくても、一面にばーんと出ている経済ニュースや政治ニュースの背景に環境問題がある、ということはよくある。

筆者はこの少し上で、「新米記者としては政治や経済やスポーツのニュースを書いていた」と述べているが、そういった、いかにもニュースになりそうなことの背後に、環境問題が、いわば文脈としてある、ということは、特に中国やインドのような新興国では顕著である。インドについては、アルンダティ・ロイの著作が日本語で読めるようになっている。読んでみると「環境問題と政治・経済」について、イメージがつかみやすくなるかもしれない。大学入試での英語の長文読解や小論文の基礎作りをしておきたい高校2年生にお勧めである。

誇りと抵抗 ―権力政治を葬る道のり (集英社新書)

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ガーディアンのジョナサン・ワッツ記者には、約20年前に下記のような楽しい著作がある。現在は古書でしか入手できないし、そもそも情報が古いので実用にはならないかもしれないが、「ロンドン=大阪」説など、かなり笑えるコンセプトで、ロンドナーらしい機知に富んだものの見方を見せてもらえる。 

ほんまのロンドン―生活、旅行、遊び、情報(英会話付き) (王様文庫)

ほんまのロンドン―生活、旅行、遊び、情報(英会話付き) (王様文庫)

 

 

 

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