Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

付帯状況のwithと現在分詞、過去分詞(ウクライナ大統領選)【再掲】

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このエントリは今年4月にアップしたものの再掲である。「意味が取りづらい」とか「訳しづらい」と言われる付帯状況のwithと現在分詞・過去分詞の構文がまとめて検討できる、「1粒で2度美味しい」系の実例だ。付帯状況のwithが得意な人はざっくりとおさらいをするつもりで、得意ではない人は弱点を補強するつもりで、読んでいただければと思う。

 

※本年の更新はこれで終了です。今年1年のご愛読に深く感謝します。はてなスターをくださった方、コメントを寄せてくださった方、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。では皆様、よいお年をお迎えください。

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今回の実例は、ウクライナ大統領選挙の結果についての報道記事から。

ウクライナでは2013年冬から、政治腐敗に抗議しEUとのつながりの強化を求める民衆の運動が続き、2014年2月には当時の親ロシア派の大統領が国外(ロシア)に逃亡するという政変が起き、その後、ロシアによるクリミアの併合や軍事介入という非常に難しい事態が続いた。

政変当時の大統領が逃げたことにより、同年5月に新たな大統領を選ぶ選挙が行われEUや米国(というかNATO)に親しく、ロシアとは全然親しくないペトロ・ポロシェンコが、第一回の投票で過半数の票を獲得して大統領となった。

それから約5年が経過し、大統領は任期切れとなったため、今回、2019年3月から4月にかけて、大統領選挙が行われた。第一回投票では誰も過半数を獲得しなかったので、第一回投票で得票率が約30%でトップだった候補と、第二位の候補の間で第二回投票(決戦投票)が行われた。トップの候補はTVのコメディ・ドラマで大統領役を演じている喜劇俳優(コメディアン)、第二位の候補は現職だ。

第一回投票で現職が一位にならなかったこと(それどころか、現職は得票率約15%で、コメディアンにほぼダブルスコアで差をつけられていた)からわかる通り、現職への不満はウクライナ有権者の間にたいへんに高く、コメディアンの勝利が確実視されていて、決選投票前には「問題はどのくらいの得票率で当選するかだ」といった論調の記事が英語のメディアで見られた。(ウクライナは、対ロシアという非常に大きな国際政治上の問題のかなめなので、英語圏での関心が非常に高い。)

そして4月21日、コメディアンのウォロディミル・ゼレンスキーが、7割を超える得票率で圧勝し、ウクライナの大統領となった。ゼレンスキーは、職業は俳優で政治経験は皆無だが、大学で法学を修めており、また彼が大統領役をつとめるコメディ・ドラマで描かれる政治のありかたには、国民に響く要素もいろいろあって、そこからほのかな期待のようなものが出ているようだ。

 

というわけで今回の記事: 

www.bbc.com

 

f:id:nofrills:20190427040304j:plain

2019年4月22日、BBC News

 

まず記事の見出し: 

Comedian Zelensky wins presidency by landslide

見出しでは冠詞は省略されるのだが、"win ~ by a landslide" で「~に地すべり的勝利を収める」という成句的な表現。前置詞がbyであることに注意。なお「地すべり的勝利」というのは「圧勝」という意味で、日本語の「地すべり的」という表現は英語のlandslideからの直訳であるらしい。「地すべり landslide」というのは有権者がみな特定の候補に投票するさまを言い表した表現だそうだ

 

続いて、本文の2文目: 

With nearly all ballots counted in the run-off vote, Mr Zelensky had taken more than 73% with incumbent Petro Poroshenko trailing far behind on 24%.

ひとつの文の中に、《付帯状況のwith》が2つも出てきて、しかも《with ~ +過去分詞》と《with ~ +現在分詞》の両方が入っているという、奇跡と言ってもよいような文である。小躍りしたくなるほど見事だ。

 

《付帯状況のwith》は、基本的に《with + 名詞 + 形容詞・副詞句など》の形で、「~が…した状態で」という意味を表す。

  He stood there with his hands in his pockets

  (彼は両手をポケットに入れてそこに立っていた)

  Don't speak with your mouth full.

  (口が食べ物でいっぱいの状態でしゃべってはいけません)

 

この「…」の部分に、現在分詞や過去分詞が来ることがある。

《with + 名詞 + 現在分詞》は、「~が…している状態で」の意味になる。

《with + 名詞 + 過去分詞》は、「~が…された(されている)状態で」の意味になる。

  The dog stood there with its tongue hanging out. 

  (その犬は、舌がだらりと垂れている状態で、そこに立っていた)

  The dog stood there with its leash held firmly by its owner. 

  (その犬は、引き綱が飼い主にしっかりと持たれた状態で、そこに立っていた)

 

ここでは、まず最初の部分、"With nearly all ballots counted in the run-off vote" は《with + 名詞 + 過去分詞》で、「決選投票において、ほとんどすべての票が集計された状態で」の意味。

 

続いて主節の "Mr Zelensky had taken more than 73%" (「ゼレンスキー氏が73%以上を得票した」)のあとの "with incumbent Petro Poroshenko trailing far behind on 24%" は、「現職のペトロ・ポロシェンコ氏が24%と、はるか後方についている状態で」.。

 

以上をまとめると、「開票がほぼ終了した段階で、ゼレンスキー氏が73%を得票しており、現職のポロシェンコ氏は24%と大きく引き離されている」ということになる。この日本語文からこの英語文を思いつくかどうかは別だが、英語ではこのような表現がなされるわけだ。

 

さて、東京都でもかつて、青島幸男というコメディアンが都知事になったことがある。彼はその前に国会議員(参議院議員)の経験があったが、都知事選出馬に際して掲げたのは、当時無駄だ無意味だと批判されていた「都市博(都市博覧会)」の中止という公約で、都民の多くがそれを支持し、実際、青島は開発計画まで決まっていた都市博を中止した。青島都政の実績といえば都市博中止だけで、ほかの公約はうやむやにされたのだが、ウクライナのこの大統領選挙のニュースを読むたびに、都民は青島都政のことを思い出しているんじゃないかと思う。

 

 

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