Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

of whom(前置詞+関係代名詞の目的格)(今回のセンター試験)

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今回は変則的に、センター試験で取り上げられていた文法項目から。

センター試験の英語は、第2問が文法・語法問題である。第2問Aが単純な空所補充で、第2問Bが整序英作文(並べ替え)だ。Aの方は特に解説すべきこともないような、つまり解答する立場だと、知らなければどうしようもないような問題が多いので見た瞬間わからなかったら捨てるようにした方がよいものが多いのだが、Bの方は習った文法の知識を使って考えれば解ける場合がほとんどなので、ぱっと見てわからないと思っても、早々と諦めてしまわずに少し考えて、積極的に点数を取りに行きたい設問である。

今年のセンター試験(2020年実施)では、この整序英作文が3問あって、どれも平易だった。1問目は絵にかいたように美しい仮定法過去完了で、仮定法をかなり多く取り上げている当ブログを読んでくれていた受験生がもしいたら、内心、ガッツポーズだっただろう。

そして2問目。《前置詞+関係代名詞の目的格》で、選択肢にwhomがあった。Twitterでこのwhomについて「もう使わないという風説が流布されている」との指摘があり、その後、私の観測範囲で多少ざわついたのだが、私の知っていることでいえば、かつての「受験地獄」時代への批判がなされた時期(いわゆる「ゆとり教育」の時期)に、「詰め込み・暗記への批判」から、「whomなんてのはもう使わないのだから、教えるのをやめたほうがいい(知らなくても構わないような単語を生徒に暗記させるのはやめるべきだ)」という言説が出てきていた。だがそのような言説のいう「もう使わないwhom」は、文の中の目的語のwhomで、前置詞の目的語となっているwhomはそれとは別だ。

 

「文の中の目的語のwhom」とは次のようなものである。

  John is the man whom I met at the business conference in Paris. 

こういうwhomはもうめったに使われない。それ以前に目的格の関係代名詞なので省略されることが多いのだが、もし関係代名詞を書いておくならばここはwhoにすることがほとんどだろう(thatを使うこともあるかもしれない)。

  John is the man (who) I met at the business conference in Paris. 

 

これとは別に、「前置詞の目的語となるwhom」がある。これはwhoで代替することはない。

  John and Steve, both of whom are from Boston, have been teaching English in Japan for more than three years.

 

今回のセンター試験で出題されたのは、こういうwhomである。

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並べ替えの部分は "(he has three, the) youngest of whom is studying in (London)" という文を完成させることが要求されている。

この《前置詞のof+関係代名詞の目的格whom》は、一般的な受験対策問題集では当たり前に出てくるのだが、なぜか「もう教えられていない」と思い込んでいる人もけっこう多くいる(「受験英語」をめぐる極端で単純化されすぎた言説が原因だ)。

だが実際には教えられている。問題集・教材でもよく見る項目だ。

 

さて、この《前置詞+whom》について、ウェブ上の英語圏を調べてみると、こんな説明がある。"So-so, so-so and so-so, all of who were picked for the award" という(誤った)文をめぐる、「whoではなくwhomを使うところですよね」という、英語学習系のオンラインフォーラムでの質疑応答の一部だ。

In British English this is one of the rare situations when "whom" is still commonly used. (US English seems to use it more often). ...

https://ell.stackexchange.com/questions/222651/all-of-who-or-all-of-whom

つまり、whomはイギリス英語では《前置詞+whom》の形以外はめったに使われなくて、アメリカ英語ではイギリス英語よりはまだ頻繁にwhomを使っているように思われるというのだ*1

興味深い話なので、Twitterで検索してみたら、おおおー、アメリカ人の有名な著述家が使ってますねー。

ツイート主のアン・アップルバウム(ボーム)さんピュリッツァー賞も取っている有名なジャーナリストで歴史研究者だ(専門は冷戦構造下の「東側」の衛星国)。"... said the Polish president, speaking of the sitting judges whom he wants to fine, sack or demote". は、「彼が罰金を科したり解職したり左遷したりしたいと思っている現職の判事たちのことを指して、ポーランドの大統領は……と発言した」。このwhomは、私なら書かないだろう(目的格の関係代名詞なので省略する)。

 

一方、今回のセンター試験に出ていたパターンの《前置詞+関係代名詞の目的格》は、Twitterでもザクザク見つかる。2つ3つ、埋め込んでおこう。いずれも、アメリカ英語だ。

 

 

 

一方、Googleのニュース検索で "of whom" を検索すると、下記のようにたくさん出てくる。こちらは特に英米の差はないと思う(ガーディアンは英国のメディアだし、アルジャジーラ・イングリッシュも使ってる英語は英国系が多い)。

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というわけで、今回は変則的に、センター試験に出てきていた文法項目の実例を見てみた。

 

英文法解説

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  • 出版社/メーカー: 金子書房
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*1:むろん、この発言自体、検証することが必要なのだが、このスレッドでこの発言には誰も異議を唱えていないから、ある程度妥当性があると考えられる。

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