Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

時制の一致, 近未来の予定を表す現在進行形, 前置詞+関係代名詞, 連鎖関係代名詞, など(連載:「フォー・シーズンズ」事件、その2)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

今回は、前回の続き。前置きを書いているとまた終わらなくなるのでサクサク行こう。

前回は、現地時間で7日(土)の朝、現職の大統領が「弁護士による記者会見を行う。フィラデルフィアフォー・シーズンズで11時」とツイートしたのをすぐに消して、「でっかい記者会見をどーんとやる。フィラデルフィアフォー・シーズンズ・トータル・ランドスケーピングで11時半」と投稿し、現地にいる記者たちが「フォー・シーズンズ・トータル・ランドスケーピングって何よ?」と次々にGoogle Mapsで調べだし、それが普通に記者会見をやるような場所ではなく、市郊外の工業地帯にある小さな造園業者だということがわかったというところまで書いた。どう見ても「フォー・シーズンズ」違いであるが、今にいたるも、トランプ陣営はこれが「間違い」だったとは言っていない。傍観者的には、「記者会見場の手配もまともにできないのか」と思うし、「会見場の手配もまともにできないたちが不正投票について法廷で追及するって息巻いたところで、無理があるのでは」としかも思えないのだが。

ともあれ、リアルタイムでこれを見ていた私が、目をぐるぐる回しながらなんとか記録したものによると、早くもこのタイミングで英タブロイド、デイリー・ミラー(米国でいうとニューヨーク・デイリー・ニュースに相当)のミッキー・スミス記者が手早く記事をまとめていた。下記記事である。

www.mirror.co.uk

この見出しを見たとき、私はまだ、爆笑しながらも「わけがわからないよ、どうしよう、英語が読めなくなっちゃったのかも」というモードだったのだが、"Confusion" と言い切ってくれているので「わけがわからなくっていいんだ」と大いに安心することができた。ミラーは英国のメディアなのでイギリス英語で "gardening" としてくれているのも安心感があってよい(米国からのツイートでは "landscaping" という用語で入ってきていて、それも私の中では不安を引き起こした……あまりなじみがない用語だから)。

この記事は次のように書きだされている。茶化しているような部分(これがあると英語学習者には単に読みにくくなるという部分)*1をグレーで示して転記すると: 

Donald Trump sparked confusion today as he announced a press conference by his legal team would take place outside a landscape gardening firm.

In a series of tweets, the President announced his team of lawyers, led by Borat 2 star and former New York Mayor Rudy Giuliani, would speak to the press outside the Four Seasons in Philadelphia.

He wrote: "Lawyers press conference at Four Seasons, Philadelphia. 11.00 A.M."

But eight minutes later, the original tweet was deleted.

The President, who is expected to lose the election at some point today, said: "Four Season's (sic) Landscaping!" - quote tweeting his original tweet, which had already been deleted.

Finally there was clarity.

Trump tweeted to clarify that the Four Seasons he meant was not the hotel in Philadelphia, but a landscaping business around 11 miles away, called Four Seasons Total Landscaping.

2か所ある "would" は、どちらも《時制の一致》による過去形で、可能性を表すのにつかう仮定法のwouldではない。「~する予定であると述べた」「~することになっていると告げた」みたいに訳出すればよい。

ほかは特に文法解説ができるところはないのだが(強いて探せば関係代名詞があるが飛ばす)、内容としては、トランプは最初の「フォー・シーズンズで」というツイートを投稿して8分後にそれを消していて、それを消す前にそのツイートを引用する形で「フォー・シーズンズ・ランドスケーピングで」と修正したツイートを投稿していたが、そのどちらも最終的には削除されている。つまり、いったんアップした情報を修正したり削除したりと混乱しているわけだ。

そして「ようやくはっきりしたことがわかった (Finally there was clarity)」のだが、トランプの言っていたのはホテルのフォー・シーズンズではなく、「都心部から11マイル(約18キロ)離れたフォー・シーズンズ・トータル・ランドスケーピングという造園業者」のことだった、と。

11マイル(18キロ)というと相当遠い。東京で都庁を基準に、ほぼまっすぐ西に見てみると、23区の西の端を突き抜けてJR中央線の武蔵境のあたり、ICUや東京外語大のあるあたりである。(東京以外にお住まいの方にはすみませんが、各自でマップを見てみてください。)

f:id:nofrills:20201109192946p:plain

https://goo.gl/maps/UZ2YRRTiHTSB75sy7

そんな距離を走らされた取材陣は、「あんなところで会見やるからには何かあるのだろう」「その造園業者が何かを目撃したのでは」と考えたことだろう。

英デイリー・ミラーのスミス記者は現地にいたわけではないが、前回見た英インディペンデントのリチャード・ホール記者は現地で、ホテルのほうのフォー・シーズンズに電話で確認を取ったあと、車を飛ばしていた。

 "is being held" と《現在進行形の受動態》になっている。受動態の方は何も疑問はないだろう(「開催される」のだから)。現在進行形は《確定している予定》を表す用法で、「開催されることになっている」。訳出するときは「開催される」でよいだろうが、試験などで文法項目がわかっていることをアピールするためには「開催されることになっている」としつこく訳出するのが無難かもしれない。

ホール記者は、このあとで長文記事を書いているのだが、そこではフォーシーズンズ(ホテルの方)の電話に対応した人は慣れた様子だったらしい。つまり、何人かが「今日、トランプ陣営の会見が貴ホテルで開かれるのか」と尋ねているという。

I decided to call the Four Seasons Hotel, from whom I was sure I would get confirmation that this press conference was indeed being held on their premises — perhaps in a grand ballroom or conference room.

A woman answered — she was primed: I was obviously not the first person to call.

“Yes there has been some confusion about this,” she said politely. “The press conference is not taking place here, it is taking place at Four Seasons Total Landscaping.”

www.independent.co.uk

引用部、最初の行の関係代名詞のところなどはしっかり確認しておきたいところ。

I decided to call the Four Seasons Hotel, from whom I was sure I would get confirmation that this press conference was indeed being held on their premises — perhaps in a grand ballroom or conference room.

太字で示した《前置詞+関係代名詞》の関係代名詞 "whom" の先行詞は、"the Four Seasons Hotel" で、このように企業などそれ自体が人格を持たないものでも、このケースのように「話をする相手」のように人格のある誰かと接するような場合には、関係代名詞としてはwhichを使わずwho(m) を使う方が自然と感じられる。ただしこれには英米で違いがあるかもしれない(ないかもしれない)。

下線で示した "I was sure" は《挿入》されていると考えてよいが、要はこれは《連鎖関係代名詞》だ。これについては先日書いたのだが、この文法用語を無理して覚える必要はなく、「関係代名詞の後ろに〈S+V〉がはさみこまれた形」(『アトラス総合英語』p. 237)と理解しておくとよい。 

青字で示した "that" は《同格》 のthatで、"confirmation that ~" で「~という確定情報」の意味。なので、ここまでで「フォー・シーズンズ・ホテルに電話してみることにした。そこから、きっと、~という確定情報が得られるだろうと思ったのだ」という意味。

that節の中だが、朱字で示した "was being held" は《過去進行形の受動態》で、この過去進行形は、上述した《近未来の予定を表す現在進行形》が《時制の一致》で過去進行形になったもの。ここだけ取り出せば、「~されることになっていた」という意味だ。だが文全体が過去形のときに時制の一致で過去形になっている従属節を過去形で日本語に訳してしまうと、日本語では大過去のことになってしまうので、訳出に際しては注意が必要だ。どういうことかというと、下記の例でおわかりいただけるのではないか: 

  Tom said that he was driving. 

  トムは、運転中だと言った。

  × トムは、運転していた言った

引用部分の最後、ダッシュ (— ) からあとは《言いたし》《付け足し》で、このthat節全体の意味は、「この記者会見は、本当に、彼らの施設内で――おそらく大宴会場か会議場で――行われることになっているという(確定情報)」という意味。

 

……と、ここで今回すでに4800字を超えている。英文を引用するとどうしても文字数を食うのだが、これ以上書くと文章量が多くなりすぎるので、続きはまた次回。いつまで引っ張るんじゃ、という気もするが。

ちなみに、ジャーナリストたちからこういう問い合わせが何度も来たようで、フォー・シーズンズ・ホテルは、本来自分たちの仕事ではないだろうに、下記のようなステートメントを出すはめになった。強調のための大文字の使い方などは参考になるだろう。

 

※5290字。

 

f:id:nofrills:20201115045224p:plain

https://twitter.com/FSPhiladelphia/status/1325102014964109312

 

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

*1:英語の報道文はこういうふうにして情報を入れ込んでくる。これに慣れないと報道記事は小説などよりも読みづらいと感じると思う。