今回の実例は、新型コロナウイルスについての、日々の数字の動きや社会的な影響の報道とは違った点からの記事より。
このウイルスが人間の体に入ったときにどんなことを引き起こすのかは、実はまだよくわかっていない。顕著なのは肺炎だが、それだけではない。当初「子供は感染しない」というイメージがあったにもかかわらず、子供が川崎病のような全身の炎症を起こして死亡するケースも多く、米国ではミュージカル俳優が、脚の血流が止まってしまったために片足を切断することになった。
今回の記事は、その点について、医療を専門とする記者が回復者や現場の医師に話を着てまとめたものである。記事はこちら:
上記キャプチャは、この記事の前置きの部分。記者が読者と共有しておきたい情報がまとめられている箇所である。
特に読みにくいところはないので、さくさくと読んでみてほしい。
第2パラグラフ(文):
As each week passes, it is becoming increasingly clear that coronavirus can trigger a huge range of neurological problems.
太字で示した "as" は《時》を表す《接続詞のas》で、「毎週毎週、1週間が過ぎるにしたがって」の意味。下線で示した "is becoming" は《現在進行形》で、この部分は「ますます明らかになってきている」と解釈すればよい。
青字で示した《it is ~ that ...》の構造は《形式主語のit》だから、「that...ということがますます明らかになってきている」の意味となる。
これと対照してみたいのが、第4パラグラフ(文):
But it's at the more severe end that there is most concern.
これも《it is ~ that ...》の形だが、これは形式主語の構文ではなく、《強調構文》である。
この文を、強調構文でない形に書き直すと:
There is most concern at the more severe end.
となる。意味は「最大の懸念は、より重篤な方にある」ということ。ここで「より重篤な」と言っているのはこの前の部分で述べられている「記憶力の問題、倦怠感、集中力の欠如」といったものと比べて、ということで、よりダイレクトに、生命維持機能に関わるような場合のことを言っている。
記事はこの後、一時は回復しないと医師も判断せざるを得なかったPaul Mylreaさんのケースを中心に、血栓・脳の血流の症状について、医師の話を交えて解説していく。
このウイルスについて、「肺炎を引き起こすウイルス」で「肺炎にさえならなければ大丈夫」という思い込みは、そろそろ過去のものになるだろう。AIDSも最初は「肺炎」と認識されていた。検査して陽性と分かった人々のたくさんの症例が世界中で蓄積されている――検査すらろくにしていない日本はそうではないかもしれないが。
※1407字
参考書: