Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

助動詞+have+過去分詞, prefer O to do ~, 接続詞though(エリザベス女王のステートメント)【再掲】

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このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、真の意味での「クイーンズ・イングリッシュ」から。といっても何か特別な言い回しがあったりするわけではない(と強調しておくのは、とにかく英文そのものを読んでもらいたいからだ)。

言うまでもないかもしれないが、今の英国(イギリス)の国家元首エリザベス女王で、次の国王となるのが息子(長男)のチャールズ皇太子、その次の国王となるのはその息子(長男)のウィリアム王子(ケンブリッジ公)である。なお、子供がたまたま男ばかりだが、英国の場合は(日本の皇室と違って)女性でも王位に就くことを邪魔されない(エリザベス女王を見ればわかる通り)。

ウィリアム王子にも子供(息子)がいるので、チャールズ皇太子やウィリアム王子の弟・妹たちは王位継承権という点では下位に位置する。つまり、将来英国王となる可能性は極めて低いという立場の王族たちだ。

チャールズ皇太子の弟が、昨今性犯罪が注目されているアンドルー王子(ヨーク公)と、エドワード王子(ウェセックス伯)。ウィリアム王子の弟がハリー王子(サセックス公ヘンリー)である。

そのハリー王子が、王族のシニア・メンバーの地位を下りると突然宣言したのが1月8日。以降、英国のメディアは連日(イラン情勢やオーストラリアの火災といったニュースと同時に)その話をしている状態で、ノイズも根拠不明なゴシップもとても多いようだ(あんまり見てないからよく知らない)。

そういう感じで何日か過ぎたあと、1月13日に王室のシニア・メンバーたち(つまり女王、皇太子、ウィリアム王子)とハリー王子が直接、女王の私邸であるサンドリンガム・ハウス(イングランドノーフォーク州)で会って話し合いをした。その話し合いが終わったところで、エリザベス女王ステートメントを出した。今回の実例はそこから。記事はこちら: 

www.theguardian.com

「上流階級調のイギリス英語」のことを俗に「クイーンズ・イングリッシュ」と言うが、今回のこのステートメントは女王名義なので、文字通りのクイーンズ・イングリッシュである。

といっても、特に何か特徴的な言い回しがあるわけではない(大事なことなので二度言いました)。普通に大学受験生が知っているような文法の知識で読める英文である。

 とりあえずざっと読んでもらいたい。

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2020年1月14日, the Guardian

どうだろうか。特に難しいところはなかったと思う。

実例として見るのは下記の部分: 

Although we would have preferred them to remain full-time working Members of the Royal Family, we respect and understand their wish to live a more independent life as a family while remaining a valued part of my family.

まず、太字にした部分は《助動詞+have+過去分詞》である。ここでは助動詞がwouldになっているが、これは《仮定法》であるし、それ以上にpreferという動詞を使うときにはwouldを伴うことが多いという習慣的な要素もあるだろう ("I'd prefer a red one." 「赤いののほうがいいな」のように言うことが習慣化している。このwouldについて、意味はあまり深く考えなくてもよい。しっかり考えたほうがいいのは、《have+過去分詞》の完了形が時間的に過去のことを表すために用いられているということだ。

《prefer O to do ~》は、《want O to do ~》の類義表現で、「Oに~してもらいたい」の意味。

これが完了形で過去を表すようになっているので「Oに~してもらいたかった」の意味になる。

さらにここまで見てきた部分は接続詞althoughの節で、「~だけれども」という意味を表している(これを文法用語で《譲歩》という)。

よって全体をまとめると、「私たちは彼ら(サセックス公夫妻)に、ロイヤル・ファミリーのフルタイムで働くメンバーのままであってもらいたかったのですが」となる。

 

さて、上で「女王の英語だが、特に変わった言い回しがあるわけではない」と述べたが、実はある。それがこのAlthoughの節の主語(主節の主語も同じだが)のweだ。これは the royal "we" と呼ばれるもので、一般人ならば一人称単数のIを使うところで、英国王はweを使うのである。多くの人々を代表する立場にある者としては、一人称単数ではなく一人称複数を使うべきだ、というのが、この一見珍妙な用語法の背景にある思想である。詳細は下記などを参照: 

en.wikipedia.org

 

今回の実例では、この "we" はエリザベス女王が使う一人称単数と解釈することも、その会合の場にいた人々(女王、チャールズ皇太子、ウィリアム王子)を指すと解釈することもできよう。そう解釈しても無理なく読めてしまうので、この実例では royal "we" は知らなくても文意を取るうえでは支障がない。より正確な読解や翻訳などをやる際にはそれでは済まないのだが、大学受験生がざっと読んで意味を取る練習をするには、weは普通に「私たち」としておいても構わないだろう。要は、「王室としてはこのように考えている」ということを公に告知するための文なのだから、主語が「私たち」なら「王室は」と考えればよいし、「私は」なら「王室を率いる立場としての私、エリザベスは」と考えればよい。よりこういうweについて詳しいことを追求したいと思った人は、大学に進んでからそれを研究するように計画を立てるとよいだろう。

 

参考書: 

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 
英文法解説

英文法解説

  • 作者:江川 泰一郎
  • 出版社/メーカー: 金子書房
  • 発売日: 1991/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

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