Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

make it ~ for ... to do --, it is ~ for ... to do --, 関係代名詞の非制限的用法など(アムネスティ・インターナショナルの香港拠点閉鎖)

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今回の実例は、前回見た報道記事で参照されていた国際NGOステートメントから。(本当は前回、ここまでやってしまうつもりだったのだが、力尽きてしまっていた。)

前回見たように、2020年夏に中国政府が香港について導入した「国家安全維持法」の影響で、アムネスティ・インターナショナル(以下「AI」とする)が香港に開設していた拠点を畳むことになった。前回はそのことを報じるBBCの報道記事を見たのだが、今回はAI自身の出しているステートメント(あるいはプレスリリース)から。

記事はこちら: 

www.amnesty.org

今回見る部分は、文法項目としては、前回見たのと重なるし、内容的にももちろん同じことを言っているので、情報を得るという点では「無駄」に思えるかもしれないが、英語学習としてはこのように、同じ内容を違うソースで、微妙に異なった記述で読んでみるというのは、かなりよい勉強になる。英語での表現の幅を知り、いずれの場合にも使える(使われている)単語や文法項目を確認することで「こういう場合にしっくりくる表現」というものを感覚的に知ることができるからだ。別な言い方をすれば、こういう方法をとることで「習うより慣れる」ことができる。

AIのこの文面は、まずテクニカルなこと(拠点閉鎖の日程)を端的に述べ、そのあとに理事長の言葉が引用されている。

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https://www.amnesty.org/en/latest/news/2021/10/amnesty-international-to-close-its-hong-kong-offices/

キャプチャ画像内の最初のパラグラフは、前回見たBBC記事で引用されていた語句を含む部分で(下記に青字で示しておく)、文法項目としても前回のと同じだ。

“This decision, made with a heavy heart, has been driven by Hong Kong’s national security law, which has made it effectively impossible for human rights organizations in Hong Kong to work freely and without fear of serious reprisals from the government,” said Anjhula Mya Singh Bais, chair of Amnesty’s International Board.  

下線で示した部分が前回と同じ、《make + O + C》の第5文型(SVOC)で、Oが "it" でこれが《形式目的語》、Cは "effectively impossible" で、そのあとの "for ~ to work" が《真目的語》であり、太字で示した "for ~" は後続の "to work" というto不定詞の《意味上の主語》になっている。

"for ~" の部分は具体的には "for human rights organizations in Hong Kong" で、これは文法的には何も難しいところはないだろう。英文読解(解釈)上注目したいのは、 "human rights organizations" と複数形になっていることで、つまり、活動が容易でなくなっているのはAIに限らず、人権について取り組んでいる団体は、AIでなくても、この「国家安全維持法」の締め付けを受けているわけだ。

 "to work freely and without fear of serious reprisals from the government" の部分は、《等位接続詞》のandの構造が入っている。通例、andの前後には文法的に同じものが来るのだが(「名詞 and 名詞」、「副詞 and 副詞」のように)、ここは少々変則的で、"freely and without fear", つまり「副詞 and 前置詞句」という構造になっている。「少々変則的」と書いたが、実はさほど変則的ではなく、法律の条文や法律関連の文書、契約書などではよく見る形で、こういう構造があるということは実用英語では必須の知識である。

太字で示した ", which" は《非制限用法の関係代名詞》で、先行する "Hong Kong’s national security law" に補足的に情報を付け加えている(補足的に説明している)。

文意は、「この決定は、重い心で為したものですが、香港の国家治安法によって取らざるを得なくなったものであり、同法は、香港の人権組織が自由に、また政府からの深刻な報復のおそれなしに仕事を行うことを、事実上不可能にするものです」となる。

 

次のパラグラフ: 

“Hong Kong has long been an ideal regional base for international civil society organizations, but the recent targeting of local human rights and trade union groups signals an intensification of the authorities’ campaign to rid the city of all dissenting voices. It is increasingly difficult for us to keep operating in such an unstable environment.”

このパラグラフが丸ごと《引用符》でくくられているのは、これが前のパラグラフの続きで、同じ人の発言の引用であることを示す。この読解法も、実用英語では基本中の基本である(大学受験レベルでも長文読解ではこの知識が要求される場合もある)。

文全体は《A but B》の論理構造になっており、Aの部分が「香港はこれまで長く、国際組織にとって理想的な拠点であった」、そして「しかし」とつないで重点を置かれるBの部分が「最近、香港を地元とする人権団体や労組を標的とすることが行われるようになっており、それが当局のキャンペーンの激化を示している」。

つまり「これまでは理想的な環境だったが、最近、そうではなくなってきた」という説明だ。

"the authorities’ campaign to rid the city of all dissenting voices" に見られる《rid A of B》は「AからBを除去する」の意味の重要な熟語。

このパラグラフの第2文: 

It is increasingly difficult for us to keep operating in such an unstable environment.

お手本のように美しい《it is ~ for ... to do --》の構造である。"keep operating" は《keep -ing》の形で「~し続ける」。文意は「そのような不安定な環境のなかで活動を続けていくことは、私たちにとって、どんどん難しくなっている」。

 

※3000字

 

 

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