Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

関係代名詞の非制限用法, 連鎖関係代名詞, など(フランス大統領選の結果を報じる記事)

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今回の実例は、報道記事から。

4月24日(日)、フランスの大統領選挙の決選投票が行われ、即開票されて、日本時間で25日(月)午前3時には、選挙の場合のフランスのやり方なのだが*1、そこまでの開票の結果と出口調査から判断した当選確定情報が流された。

マクロンの勝利はclearでcomfortableではあるが、1対1の選挙で得票60%にも満たなかった結果は、overwhelmingとかresoundingとかいった形容詞で表せるようなものではない。だから、結果が出た瞬間は、私の見ているTwitterの画面は「よかったよかった、ルペンを阻止できた」という安堵のため息が欧州からも米国からも一気に聞こえてくるような画面になっていたけれども、そのため息が引いた次の瞬間には、「いやあ……」みたいなムードになった。ティモシー・ガートン・アッシュ先生の次のツイートが代表的なものだ。

前置きはこのくらいにして、今回の実例はこちらの記事から。

www.theguardian.com

マクロンの勝利を伝え、二分している(ように見えるけれど、実は単なる二分ではない)フランスの状況についての分析も含めた報道記事である。書いているのはこの10年か15年はずっとフランスから伝えているアンジェリーク・クリサフィス記者(私がネットを使いだした頃は彼女はアイルランド特派員だった)。

実例としてみるのは、ずーっと読んでいって、かなり下の方から。

https://www.theguardian.com/world/2022/apr/24/emmanuel-macron-wins-french-presidential-election-say-projected-results

キャプチャ画像の一番上のパラグラフ: 

A significant number of the 7.7 million first-round voters for the radical left’s Jean-Luc Mélenchon, who narrowly missed reaching the final, had said they felt torn over abstaining or voting to keep out Le Pen.  

文法的見どころはたくさんある文だが、特に注目したいのは、太字にした《関係代名詞の非制限用法》。これは先行詞が "Jean-Luc Mélenchon" という固有名詞で、関係代名詞の節はそれに説明を加えるためのものなので、こういう構造になっている。非制限用法としては極めてオーソドックスなものだ。単語さえわかれば、この部分は中学3年生で読める。文意は大筋、「ジャン=リュック・メランションは、もう少しのところで決選投票進出を逃したのだが、第一回投票でそのメランションに投票した人々は……と述べていた」ということになる。

そして、2番目のパラグラフ: 

Macron had leaned to the left in the final days to try to court Mélenchon voters, promising to speed up measures against climate breakdown and expand environmental policy. His first task is to appoint a new prime minister, who he promised would be specifically devoted to addressing the climate crisis.

こちらにも、太字で示したように、《関係代名詞の非制限用法》がある。だが、こちらは先の例と異なり、先行詞は "a new prime minister" で固有名詞ではないし、《連鎖関係代名詞》の構造になっていて少々難易度が高い。

文としては、 "His first task is to appoint a new prime minister" の "a new prime minister" に説明を付け加えているという形なので、あまり難しく考えずに素直に前から読んでいけばよい。「彼(マクロン)の最初の仕事は、新たな首相を任命することである」という文で、その「新たな首相」の説明を後にぶらさげてあるという形だ。

で、関係詞節だが: 

who ( he promised ) would be specifically devoted to addressing the climate crisis

連鎖関係代名詞なので、青字にした部分を頭の中でカッコに入れるなどしていったん外すことで節の中の構造を把握する、ということになる。

マクロンが新たに任命する首相は、マクロンが約束したところでは、気候変動に取り組んでいくことに専心してもらうことになっている、という内容だ。

これが、このパラグラフで先行する1文、 "Macron had leaned to the left in the final days to try to court Mélenchon voters..." をサポートするという構造になっている。つまり、第1文で述べたこと(「マクロンは、選挙戦最終盤において、メランションに票を投じた人々の心をつかもうとした」こと)の具体的な中身が、「首相には気候変動に熱心に取り組んでもらう人を当てる」、という構造である。

タブロイドはそうではないこともあるが、一般紙の英語の報道記事は、こういう《トピック文》と《サポート文》という構造を意識しながら読むと、書かれている情報がすとんすとんと頭の中に入ってくるような感覚を味わえるのではないかと思う。

(なお、BBC Newsは、報道記事では1文ごとに改行するというスタイルを取っているので、こういうパラグラフ・リーディングができない。)

あと今回見たこの部分、《前置詞+動名詞》の構造も複数個所に入っている。何気なく読んで、そこは考えずに読んじゃったな、という方は、改めて読み直してみてほしい。少し下に、どの部分がそれに該当するのか、色をつけて示しておくことにする。

 

※3150字

 

 

 

《前置詞+動名詞》の構造のあるところは下図のピンク色のマーカーの通り。

https://www.theguardian.com/world/2022/apr/24/emmanuel-macron-wins-french-presidential-election-say-projected-results

 

*1:選挙のときに何をどこまで報道していいということについて、フランスは何か厳格なルールがあったはず。サルコジ対オランドのときにツイートしてるので、関心がある方は私のTwilogを掘ってください。

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