今回の実例は報道記事から。
世界の目がウクライナに集まり、ウクライナから脱出した人々は、普通の国ではrefugeesとして、日本という奇妙に特殊な国では「難民」ではなく「避難民」として次々に受け入れられて「ほっこりするニュース」的に消費されてすらいる一方で、ロシアがウクライナを侵略する前から続いていた、よその土地での国家的な暴力は、相変わらず、というかウクライナ情勢の影となってしまってますます、見過ごされている。
そして今日2022年4月15日は、西洋のキリスト教圏ではキリストが受難した聖金曜日(グッドフライデー)で、ユダヤ教では過ぎ越しの祭り (Passover) なのだそうだが、イスラム教ではラマダンという神聖な月の、金曜日という礼拝の日である。
その日、パレスチナ、というかエルサレムからTwitterで伝えられてきたのは、アル・アクサ・モスクでイスラエル当局が非武装のパレスチナ人たちに対して殴ったり叩いたりしている映像と、礼拝の場でガス弾やゴム弾が使われているという報告だった。
この日、東京の私は、毎月2回オンラインで開催されているジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の読書会に参加していたが、その横で開いている画面には、エルサレムからの映像・写真による弾圧の報告が次々と流れてきていた。
今回の実例は、その弾圧を報じるアルジャジーラ英語版の記事から。記事はこちら:
書き出しの部分:
書き出しの1文より:
Israeli police have raided the Al-Aqsa Mosque compound in occupied East Jerusalem, with medics reporting at least 152 Palestinians injured ...
太字で示した部分は《付帯状況のwith》が《現在分詞》を伴っている構文。主節に情報を付け加える役割の分詞構文的なものだが、ここでは単に付け加えるというよりも対照するためにこの構文が用いられている。「一方では~」の意味合いだ。
文意は「イスラエル警察が、占領地東エルサレムのアル・アクサ・モスクの敷地を急襲し、一方で医療関係者は、少なくとも152人のパレスチナ人が負傷していると報告している」。
次の文:
The Islamic endowment that runs the site said Israeli police entered in force before dawn on Friday, as thousands of worshippers were gathered at the mosque for early morning prayers.
アル・アクサ・モスクを運営する機関は、イスラエル警察が入ったのは金曜日の夜明け前だったと述べている。
周知のとおり、イスラム教では今はラマダンの時期で、太陽が空にある間は人々は飲食を断っている。逆に言えば、「夜明け前」は、就寝していない人はまだ飲み食いのできる時間帯だ。
同時に、それは活動時間帯ではない。
そしてさらに同時に、これは金曜日というイスラム教での礼拝のための大切な日の、夜明けの礼拝という大切な時間帯だ。
そういうときに、警察はモスクの敷地に踏み込んだ。
In an unprecedented incident, Israeli occupation forces brutally assaulted and arrested Palestinians from inside Al-Aqsa mosque.#AlAqsaUnderAttack pic.twitter.com/tLDaEnmGk7
— PALESTINE ONLINE 🇵🇸 (@OnlinePalEng) 2022年4月15日
An Israeli soldier aggressively pushing elderly worshippers at one of the gates of Al Aqsa mosque.#AlAqsaUnderAttack #SaveAlAqsa pic.twitter.com/BeJrcddNR8
— Noura Shehada ♓ (@NouraShehada) 2022年4月15日
この映像報告のツイート、映像は何も流血などないしsensorされるようなものではないのだが、sensitive contentとかいうことで映像があらかじめ表示されないようになってる。映像は、大勢の治安当局者が丸腰の子供一人をひっつかんで取り囲んで連行していくところ。 https://t.co/kGPs696fvc
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年4月15日
The moment an occupation soldier attacked a Palestinian woman in Al-Aqsa Mosque this morning.#AlAqsaUnderAttack #Palestine pic.twitter.com/q52tjjEnmd
— 𝕟𝕖𝕤𝕞𝕒 | 𓂆 🇵🇸 (@nesma_2002_) 2022年4月15日
ラマダーンのさなかの大切な金曜日のお祈りの日に、アルアクサーで静かに祈りたいと願い集う人たちが襲われ、怪我人を救助する救急隊員や、一連の出来事を伝えようとカメラを構えるジャーナリストが襲われる不条理。もうたくさんだ。叫び出したくなる。
— 高橋美香 (@mikairvmest) 2022年4月15日
でも、こういうことがきちんと報じられ、目を向けられることは滅多になく、いつも「ロケット弾」「テロ」「襲撃事件」とかが「突然の始まり」のように報じられる不思議。ずっとずっと常態化した占領下の暴力も弾圧も人権侵害も超法規的殺人も集団懲罰も日々絶え間なく続いているのに。
— 高橋美香 (@mikairvmest) 2022年4月15日
Gas bombs and live bullets were used against the worshippers at Al-Aqsa this morning. pic.twitter.com/6jNdHHHF1T
— TIMES OF GAZA (@Timesofgaza) 2022年4月15日
Israeli forces beat and detain Palestinians in al-Aqsa prayer hallhttps://t.co/EeElvVqC7k pic.twitter.com/lpnFggRxid
— Middle East Eye (@MiddleEastEye) 2022年4月15日
さらに付け加えるならば、今週、イスラエル軍はパレスチナ人を立て続けに襲い、何人も殺している。
My timeline is full of death.
— Marwa Fatafta مروة فطافطة (@marwasf) 2022年4月14日
Fathers bidding farewell to their murdered sons, mothers grieving over their dead children’s bodies.
Six Palestinians were killed in the last 24 hours by the Israel occupation forces.
※3500字