Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

記事見出しに含まれるto不定詞, either A or B (英国、ボリス・ジョンソン退任後の首相が決まる)

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今回の実例は、報道記事の見出しから。

当ブログでも簡単に触れてはきたが、今から2か月前の7月上旬に、英国では財務大臣をはじめとする複数の閣僚や、その他政権の要職にある人々が50人あまりも、次々と辞任した。雪崩のような辞任を引き起こしたきっかけは、ボリス・ジョンソン首相が要職に登用していた……ええと、何て名前だっけ、もう忘れてしまったし、検索していると遅くなるから名前なしで進めるけど、保守党の議員についての嘘だった。この保守党議員は、会員制クラブという閉ざされた場で恥知らずにも痴漢行為を働いて被害者に精神的な傷を与えたのだが、議員にとってはそういう性的な接触は何でもないことだったらしく、ジョンソンはこの議員がそういう人物だと知っていて要職に就けたのではないかと追及されたときに「まさかあんな人物だとは知らなかった」と答えたのだがこれが真っ赤なウソだった。

ジョンソンの辞任を引き起こしたのはこのたった一つの嘘ではない。この嘘は、英語でいうthe last strawとして作用したかもしれないが、ジョンソンは口を開けば嘘しか出てこないというレベルの嘘つきであり、首相になってからも何度も何度も嘘を重ねてきた。それでも支持してきたのは、国民であるというより、保守党員たちである。

下記は「ジョンソンの嘘、精選50件」というデイリー・ミラーのまとめである。辞意表明の7月7日に出た記事だが、あまり見栄えのしない成績で大学を出たあとでありついた職場(名門の新聞、ザ・タイムズ)から、嘘を理由に放り出されたところから始まっている。

www.mirror.co.uk

ちなみに、嘘を理由にジョンソンを早々に見限ったタイムズの編集長は、つい先日亡くなった。

このペースで書いているとまたエントリを書き終わらないので先を急ごう。

こうして7月上旬に現職が辞意を表明し、その後任が、約2か月後の今日、決まったのである。2か月も時間がかかっていたのは、間に夏休み期間が入っていたことも大きいが、いくら「夏休み」とはいえ、首相がずっと官邸を留守にしているという異常な状態が英国では1か月続き(昨年、2021年はそうやって政治トップが夏休みを満喫している間に米国がアフガニスタンから全面撤退して、カブールの空港に国外脱出を求める人々が詰めかけ、現地の英国大使館のトップはヴィザ発給のために最後まで残っていたのだったが)、しかもその間、引っ越し業者の車が首相官邸前に来ていたというのだから、夏休みに出たっきりで首相官邸には戻らない(=仕事をしない)つもりだったと考えられている。

その間、英国では異常な高温や豪雨に渇水といっためちゃくちゃな気候災害が起き、ロシアによるウクライナ侵略とそれに対する制裁に端を発した急速なインフレと光熱費の急騰が人々の生活を直撃している。でも首相は夏休みを満喫していて、何もしない。

そういう「政府不在」の状態(「無政府」だから文字通り、アナーキー・イン・ザ・UK)が、これでようやく終わるというところまで来たが、まあいろいろと、あまり楽観できる状況ではない。私は英国にいる友人たちのことが本当に心配である。こっちもこっちなのだけども。

というわけで、議会制民主主義における手続き通り、首相はすなわち与党のトップで、首相は首相職を辞するだけでなく与党の党首も辞するのだから、後任は(本来は選挙をやり直して決めるべきなのだろうが慣例的に)与党で党首選挙を行って決めることになる。その党首選挙の最終的な結果が、今日、9月5日に出たのだ。

保守党の党首選には何人もが立候補していたが、最終的に決選投票に進んだのが、リズ・トラス外務大臣と、リシ・スナク前財務大臣(上述した「痴漢議員に関する嘘を発端とする大量辞任」のときに辞任した)の2人だった。保守党では、党首選の決選投票は国会議員だけでなく一般党員も投票するが、国会議員はスナク支持が多い一方で、一般党員は圧倒的にトラス支持と伝えられており、決選投票はこの2人と決まった瞬間にはもう、英国の報道には「トラスで決まり」というムードが漂っていた。

その後、2人の間での討論が行われるなどし、どちらも中身がぐだぐだじゃねぇかということで、私がフォローしているような英国の人々は怒るやら呆れかえるやら制度を変えねばならぬと力説するやら猫のラリーさんを首相にしろという運動に加わるやら。

ともあれ、そうして迎えた新党首決定の日、現地時間で12:30(日本時間で20:30)の結果告知を前に出ていた記事の見出しが、今回の実例である。記事はこちら(中身変わってたらアーカイヴで): 

www.bbc.com

 

https://www.bbc.com/news/uk-politics-62788604

見出し: 

Liz Truss or Rishi Sunak to be announced as UK's next PM

ここで赤と青の色を付けた部分に注目してほしい。

まず、赤の色を付けた "Liz Truss or Rishi Sunak" はシンプルで、英語を習いたての人でもわかる表現だと思うが、見出しの簡略化した文体でこのように表記されるものが、より詳しく、意味の取り違えようのないように書くことになっている記事本文の中ではどう表されるか、少し時間を取って考えてみてほしい。

それから、青の色をつけた "to be announced" は《to不定詞の受動態》の形だが、要はto不定詞だ。見出しで使われるto不定詞は、どういう意味だろうか。

というところで、リード文に進もう。赤と青、それぞれ次のように対応している:

Boris Johnson's successor as UK prime minister will be revealed later when either Liz Truss or Rishi Sunak is named next Conservative leader. 

見出しでの "Liz Truss or Rishi Sunak" が、本文では《either A or B》の形を使って "either Liz Truss or Rishi Sunak" と表されているのは、何の意外性もないことだろう。英語を使えるようになりたければ、こういう意外性のない表現こそ、いちいち確認して覚えていくことが重要である。

そして、見出しでto不定詞で表されていた部分は、willを用いた形になっている。つまり、見出しのto不定詞は《未来》のことを表す(単純未来)。

これはどういうことかというと、報道記事の見出しではbe動詞は省略されるという大原則を思い出してほしい。つまり、この記事の見出しは: 

Liz Truss or Rishi Sunak is to be announced as UK's next PM

という文として読む必要がある。

そうすると、これが《be + to不定詞》であることがわかるだろう。

《be + to不定詞》については当ブログでは何度も扱っているので、解説が必要な場合は過去記事を参照されたい。江川やロイヤルなどの文法書を参照されるのがもっとよいのだが。

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

※3500字

 

 

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