Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

リズ・トラス政権の見かけ上の「多様性(ダイバーシティ)」と、「グローバル・ブリテン」について

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今回は、パレスチナについて前々回および前回の続きを準備していたのだけど、英国の新内閣について言うまでもない当たり前のことをTwitterでちょろっと書いたら数千の単位でRetweet/Likeされるということになってしまったので、それについて少し詳しく扱っておこうと思う。よい機会だ。パレスチナについては明日。

リズ・トラス政権が発足し、「多様性」が注目されているようだ。だが私はその「多様性」は見かけだけだと見ている。ちなみに私は「政局」にはほぼ関心を向けずに、英国政治の細部を10年も20年もずっとウォッチしているオタクである。ただのオタクなので、権力者についてものを書き、その権力者に直接会ったといってきゃあきゃあ騒いだりしない立場にある。

順番に話をしていこう。英語を読むという技術的なことについても、いつも通り、ちょいちょい挟んでいく。いつもは当ブログは上限4000字を目安に書いているのだが、今回は無視する。

英国では、7月上旬に、当時のボリス・ジョンソン保守党党首(つまり英国首相)が辞意を表明した。数々の嘘に耐えかねた保守党員たちが、いつものように自己保身のために嘘をついたジョンソンに反旗を翻して次々と閣僚の座や党内の職を辞したことによって起きたことだった(たったひとつの嘘で、ではない。何百と重ねられてきた嘘の最後のひとつだった)。そして8月の夏休みシーズンを挟んで、後任の保守党党首を決める党内の選挙が行われ(この間、ジョンソンはずっと夏休みを満喫しっぱなしだった)、最終的な決選投票が今週月曜日に実施されて、リズ・トラス前外務大臣が新党首に選出された。それは選出当日に当ブログでも扱った通りである。

hoarding-examples.hatenablog.jp

英国は、日本と同様の*1議院内閣制をとる(このあたり、アメリカ人にはイマイチ話が通じないことが多い。政治学者でもひょっとして混乱してるのかなって思う人がいるくらいだ)。議会最大党(与党)の党首が、政府のトップ(内閣総理大臣; 首相)になる。首相は、日本でも儀礼的に天皇が任命するが、英国も国王(現在はエリザベス女王)が任命する。今回のように、議会の選挙をせず与党党首の交替という形で首相が代わるときは、簡単に説明すると、現職首相(今回の場合はジョンソン)が国王のもとを訪問して辞職を申し出、それを国王が承認し、続いて新首相(トラス)が同様に国王のもとを訪問して、そこで任命される、という形になる。デイヴィッド・キャメロンからテリーザ・メイになったときも、メイからジョンソンになったときも、そういうふうにして引き継がれていて、その様子はBBC Newsなどが中継していたので、YouTubeなどで映像を探せば出てくるだろう。

今回は、エリザベス女王が毎年夏の休暇を過ごしているスコットランドのバルモラル城にいるので(首相任命のためにロンドンに戻ってくることはしなかった)、ジョンソンとトラスがそれぞれバルモラル城を訪れて、この儀式的な手続きを行った。このとき、2人が別々にプライベート・ジェットを使って移動したので、「税金の使い道としてどうなのか」とか「環境負荷がこんなに高い」といった指摘が、パロディアカウントからも通信社からもなされている(が、新旧首相2人を一緒に飛行機に乗せるわけにもいかないだろう。リスクが高すぎる)。

(猫のラリーさんのツイートにある "used to travel" は見かけ上は《used to do ~》だが、実は《used something to do ~》のsomethingが関係代名詞になったうえに省略されている形で、「~するために…を使う」の意味なので、早合点しないように注意。この "to travel" は《to不定詞の副詞的用法》である)

というわけで、月曜日に党首選が行われ、火曜日に女王による任命の儀式が行われ、水曜日に組閣となった(歌いたくなった方、こちらでどうぞ)。

その結果、予想通りとはいえ、呆れるほどあからさまに極右リバタリアンで気候変動否定論に親和的で反EUで反左翼な顔ぶれが並んだ。個人的には北アイルランド大臣がERGでNIOトップもERGという人選狂気を感じるしかないのだが、そんなことを書いたって日本語圏ではほぼ通じないだろうから先に行こう。

 

なお、リズ・トラスという人は学生時代は、米語ではない英語でいう「リベラル」つまりLiberal Democrats (LibDems: 自由民主党) の一員だったが*2、保守党に入ったあとは、かつての日本語の政治用語でいう「風見鶏」的というか、節操がないというか、要は確固たる理念や思想信条があって政治家をやってるタイプではないのだろうと思う(そういうタイプはトニー・ブレアゴードン・ブラウンが最後だったかもしれない)。Brexitに関しては2016年のレファレンダムのときは「離脱反対」陣営だった。それが、Brexitがいまだに片付かず、政治的に非常にまずい状況を作り出している北アイルランドに、保守党内の反EUの超強硬派集団で一時はアイルランドを「敵」として情報戦を本気で展開していたERGを送り込むのだから、ちょっと感覚を疑うほどである。

あと、Secretary of State for Business, Energy and Industrial Strategy (日本で言う経済産業大臣のポスト)に、まさかのジェイコブ・リース=モグを起用したことが、「化石燃料バンバン開発して使っていきましょう!」という方針を強く感じさせるのだが、トラス本人が化石燃料業界の出身である。

ウィキペディアを参照すると、トラスは職業としては会計士で、シンクタンク勤務時代に数学に関する文章を書いてもいる。夫(ファースト・ハズバンド)のヒュー・オリアリーも会計士であり、父親のジョン・トラスは数学者で大学教授(今は引退して名誉教授)*3

さて、英国の内閣 (Cabinet) は、現在、首相を含め23人の閣僚 [Secretary of State*4] と、「閣僚」の肩書は持たないが閣議に出席する要職者8人 [Parliamentary Secretary*5, Attorney Generalや何人かのMinister*6] から成っている、ということが、Truss ministryのエントリで確認できる。閣僚ポストは新設されたり統合されたりもするので、人数等は変動の可能性もある。

en.wikipedia.org

23の閣僚ポストのうち、内閣総理大臣 (Prime Minister) と財務大臣 (Chancellor of the Exchequer)、および外務大臣 (Secretary of State for Foreign, Commonwealth and Development Affairs: Foreign Secretary) と内務大臣 (Secretary of State for the Home Department: Home Secretary) を、Great Offices of Stateと呼ぶ。この "great" は別に「あたくしたちはグレートでございます」と威張るためのものではなく、選挙で選ばれた議会から来た一般の国民の代表と、国家元首(国王)との関係にルーツのある表現だ。現代政治を見る上では、ざっくりと、「他の閣僚ポストとは別格」という認識でだいたい大丈夫だと思う。

今回のトラス政権では、このGreat Officesの面々が、4人とも「白人男性」ではないということが「ダイバーシティのあらわれ」として注目されているようだ。

実際、ここにあらわれている見かけ上の多様性(ダイバーシティ)には、私も感じ入るところがないわけでもない。しかし、それは「女性首相」と同じくらいのインパクトしか感じられない*7。そのくらい、英国政府において非白人が閣僚、それも重要ポストを務めるいうことは当たり前になっている。ジョンソン政権での財務大臣は2人ともAsian*8だったし(サジド・ジャヴィド、リシ・スナク)、内務大臣もAsianだった(プリティ・パテル)。今回外務大臣になったジェイムズ・クレヴァリーもジョンソン政権から閣僚を務めている人だし、内務大臣のスーエラ・ブラヴァマン*9はジョンソン政権では司法長官 (Attorney General) だった――あまりにも恐ろしい、法の支配の破壊者としか呼びようのない司法長官だったが。

そんなことより、この人たちが全員、イングランド*10「エリート」、というか「エスタブリッシュメント」に属している、ということに注目すべきだろう。今、英国の作家トールキン原作の映像作品について黒人が配役されていることで白人至上主義者がネットで騒いでいるようだが、「肌の色」で「世界観がぁぁぁ」みたいにぎゃあぎゃあ騒いでいる人たちが見ている「白が当たり前」という世界は、実際にはユニバーサルなものではない。あの人たちの価値観に合わせてうちらまで「肌の色」を基準にして「今度の英国政府は白人でない人がいっぱいいてすごい」と騒ぐ必要はない。それは女性政治家について「女性が選出されてすごい」という言説が出るのに対して「女性だから何」と言い返すのと同じだ(実際に、小池百合子都知事などについて、こういうやり取りを英語圏の人としたことがある)。ただ、「移民が英国のエリートになっているわけがない」とかいう妄言を言う人がいるかもしれないから、その点は注意が必要だ。

「特別な教育」というのは、私立学校での教育やオックスブリッジでの高等教育という意味である。このツイートで触れたような「指摘」の一例。クイーンメアリ大学(ロンドン)のティム・ベイル教授(政治学): 

ベイル教授のツイート全体は、最初に世間一般で言われていることを確認したうえで「しかし」として自分の考えを展開するというスタイルで、重要なのはButから後である。あ、ここでも「文頭のBut」が使われているね。こないだ「文頭のButはご法度」なるガセネタへの反証をまとめておいたんだけど。

"privately-educated" は英国の文脈では「学費がただの公立校 (state school) に通わず、学費を払って私立学校 (public school) に通った」という意味。Public schoolに通うとprivately-educatedになるというのは「ホワイ、ブリティッシュ・ピープル、ホワイ」と叫びたくなるかもしれないが、そういうふうになっているのであきらめて覚えるしかない。

実際、ベイル教授のツイートしているこれらの4人のGreat Officesの面々が、大学に入るまでにどういう教育を受けてきた人々なのかを、ウィキペディアを頼りに確認してみよう。各人のエントリのEarly life and educationのセクションを見ればそういうことが確認できる。

まずリズ・トラス首相(以下、引用部分の太字は引用者による)。トラスは親が労働党左派とのことで、学校教育も公立である(学校は特別ではないが、親がインテリ、大学教授だ): 

The family moved to Paisley, Renfrewshire, in Scotland when she was four years old, living there from 1979 to 1985, with Truss attending West Primary School. She then attended Roundhay School, in the Roundhay area of Leeds, a school which she later claimed had "let down" children. Aged twelve, she spent a year in Burnaby, British Columbia, where she attended Parkcrest Elementary School while her father taught at Simon Fraser University.

Liz Truss - Wikipedia

トラスはオックスフォードに生まれたが、幼少のころの何年かをスコットランドで過ごしている。最初に記載のある "West Primary School" はスコットランドの学校制度での「小学校」で(スコットランドイングランドとは学校の呼び方も違うなどしているのだが、その説明はここではしない)、「スコットランドの公立小学校のリスト」に記載がある。

2番目の "Roundhay School" はイングランドのリーズの学校で(親の仕事で引っ越したと思われる)、「私立学校として設立されたが、現在では公立になっている」と説明されている (Originally a private school, now a Community school)

3番目は親の仕事についていったさきのカナダの学校で、これも現地の公立校のようだ。

このあと彼女はオクスフォード大マートン・コレッジでPPEを専攻している。たぶん学業が優秀だったのだろうし、若かりし頃の彼女が何を目指していたのかは私は知らないが、オックスフォードのPPEは「エスタブリッシュメント」の代名詞みたいなものである。

 

次。財務大臣のクワジ・クウォーテング*11

After starting school at a state primary school, Kwarteng attended Colet Court, an independent preparatory school in London, where he won the Harrow History Prize in 1988. Kwarteng then went to Eton College, where he was a King's Scholar and was awarded the prestigious Newcastle Scholarship prize.

Kwasi Kwarteng - Wikipedia

いちいち個別に調べなくてもこの記述を読んだだけでわかるようになっていてありがたい。最初は公立小学校だったが、そのあと私立の予備校に入って、順調にイートン校に進んでいる。イートン校を出たあとはケンブリッジ大トリニティ・コレッジで古典と歴史を専攻し、米ハーバード大でも学び、最終的にはケンブリッジ大のPhDを取得している。奨学金取りまくりの超優秀な学生で、2010年には大英帝国が世界各地に残したマイナスの影響について本を一冊書いたりもしているが、政界入りしてからはずいぶん変わったようで、最近ではテレビやラジオなどに出てはいわゆる anti-woke の姿勢を強めにアピールしているのをよく目にする。

クウォーテングはロンドン生まれだが、両親は学生だった1960年代にガーナから脱出してきた人々で、父親はエコノミスト、母親は法律家である。このお母さんがすごい。人種差別・女性差別の二重の逆風の中、ロンドンで法律家として誰からも一流とみなされるようになった人だ。デイリー・メイルだけど記事がある。

 

次。スーエラ・ブラヴァマン内務大臣: 

She attended the Uxendon Manor Primary School in Brent and the fee-paying Heathfield School, Pinner, on a partial scholarship, after which she read law at Queens' College, Cambridge.

Suella Braverman - Wikipedia

この人も親が1960年代に英国に移住している。両親とも、ルーツはインドだが英国に渡る前にいたのはアフリカだ(アフリカに住んでいたインド系の人々が、アフリカ大陸諸国の独立とその後の社会主義政権の時代に渡英した例は、とても多い。前任者のプリティ・パテルの親もウガンダから脱出したインド系の人だ)。スーエラ本人はロンドンで生まれ育ち、ロンドンの公立小学校に通ったあと、地元の私立学校ヒースフィールド校に、一部奨学金を得て進んでいる。そのあとはケンブリッジ大クイーンズ・コレッジで法律を専攻し、弁護士の資格を持っている。

ちなみに、ブラヴァマンは学生時代に欧州というかEUの交換留学プログラム「エラスムス」でフランスに留学していた経験を持つが、彼女が強く支持したBrexitはその「エラスムス」プログラムで英国人の若者が学ぶ機会を真っ先につぶした。自分が受けた恩恵を次の世代につなぎたいという考えはあまりない人なのだろう。

 

最後、外務大臣のジェイムズ・クレヴァリー

He was privately educated at Riverston School and Colfe's School, both in Lee, London. Cleverly then trained in the army, but his training was cut short by a leg injury in 1989. He went on to gain a bachelor's degree in Hospitality Management from the Polytechnic of West London.

James Cleverly - Wikipedia

父親が英国人測量技師、母親がシエラレオネからの移民の助産師で、ロンドンに生まれ、学校はずっと私立。特にコルフス校は歴史ある名門校である。その後、大学に進まずに軍隊に入るが、負傷したため除隊し、ロンドンのポリテク(当時あった職業専門学校の制度で、今は「大学」に改編されている)でホスピタリティで学位を取った。負傷がなければ軍隊でエリートコースだっただろう。

 

上で見たツイートでベイル教授が " Fact is that, nowadays, the real lack of diversity in Parliament is class-based" と述べているのはこういうことである。

ついでに言えば、保守党党首選で最後まで争ったリシ・スナク元財務大臣も、60年代にアフリカ大陸から英国に逃れてきたインド系の夫婦の間に英国で生まれた子で、ばりばりの名門私立校の出、ウィンチェスター校からオックスフォード大でPPEという経歴。サンデー・タイムズが出している「富豪リスト」に、第一線の政治家として初めてランクインしたことでも知られるほどの大金持ちでもある。

サッチャー政権は古いものをいろいろとぶっ壊したのは確かで、人種だの階級だのというものもあの人によってある程度はぶっ壊された*12。その時代を舞台にした映画『マイ・ビューティフル・ランドレット』の冒頭で、主人公のパキスタン系青年のおじ(事業家)が、サッチャリズムに希望とチャンスを見出して主人公に語るシーンがある。あの映画はサッチャリズムもネオナチもゲイの立場も全部入ってるので、見る機会があったら見るといいと思う。

一方で、トラス政権のこの人事は、保守党が思いがけずに実行することになってしまったBrexitの影響を強く感じさせるものでもある。Brexitにより、英国は "Global Britain" という自己イメージを追求し現実化させなければ、という局面にある。ブレア政権下でのCool Britainと同じような政府のスローガンにもなっている。

www.gov.uk

このGlobal Britainというのは、ポスト・コロニアルな立場をとる主に白人のインテリ層からは「大英帝国2.0」などと呼ばれて不評なのだが、立場を変えてみればどうだろうか。かつて「大英帝国」に組み込まれていたアジアやアフリカの植民地にルーツがある人々にとっては。とりわけ、それらの旧植民地が独立したときの動乱や共産化から脱出してきた難民・移民たちにとっては。

上で見たように、現在の保守党で有力政治家となっている非白人の「多様」な人々のルーツは、1960年代に祖国を逃れて英国に渡った人々にある。その人たちにとって、旧大英帝国という枠組みはセーフティネットであり、命綱でさえあっただろう。さらに、そのようにして祖国から脱出した彼ら・彼女らが頑張るための足場を得ることができた英国、子供に立派な教育を授けることを可能にした英国は、すばらしい夢の国であっただろう。「アメリカン・ドリーム」ならぬ「ブリティッシュ・ドリーム」の地だ。

そう考えたときに、私のフィルターバブル内での「大英帝国2.0」的な像とは別の像が立ち上がるわけである。そう、第二次世界大戦時のあのプロパガンダポスターのような像が。

By William Little - This file is from the collections of The National Archives (United Kingdom), catalogued under document record INF3/318. For high quality reproductions of any item from The National Archives collection please contact the image library., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19786846

最後に、今回の保守党党首選で誰の目にも明らかになったのだが、「非白人」だからといって、米語でいう「リベラル」だと思っていてはいけない。「黒人なのにanti-woke」みたいな「反リベラル」陣営の求めるものを満たす(満たそうとする)非白人がいるのだ。「ヒスパニックだけどドナルド・トランプの移民制限壁に賛成」という人がいたように。

こういうの、何か月も前の話題なので、当然みんな知ってると思ってたんだけど、それは私のフィルターバブルの中だけの話。これらの一連のツイートが数千という単位でバズってる*13ことから明白なのだが、なんだかね……何か月も前に書いてるヨ (´・_・`)

というわけで、私はいつも通りの北アイルランド・ウォッチに戻ります。アイルランドのコヴニー外相のジャブが早速出ているし。

 

※なお、「ダイバーシティ」ということで性的マイノリティ(「LGBT」とか「LGBTQ」とかいった用語で表象されるが)についてはどうなのかという関心を持つ方もおられるだろうが、正直、それは英国ではもう問題にならない。「婚姻の平等」というゲイ・ライツ運動の一大目標が達成されてもう何年にもなる。今どき、LとかG(ホモセクシュアル)が新作映画情報のようなもの以外で話題になることもほとんどない*14。B(バイセクシュアル)はそこまで一般化していないかもしれない。Q(クイア)は認識されているかどうかもわからない。一方で、T(トランスジェンダー)は、かつての同性愛をめぐる「セクション28」と同じような「保守派の死守すべき最前線」になっているようで、今回内相になったスーエラ・ブラヴァマンなどはアンチ・トランスの立場を鮮明にしている政治家のひとりである。なお、英国のトランスジェンダー政策はかなり迷走していて先日もタヴィストック診療所の件で大きなニュースがあったばかりだ。私はネットでTについて書くと、私のことを何も知らないくせに「このTERFめがーーーー!」「あなたのようなシス女性はーーーー!」と何の根拠もなく叫んで殴りかかるチャンスを探して言葉尻をとらえようとする人々によって発言の場を奪われるので(これが理由ではてなブックマークを非公開にした)、このことについては書かない。知りたい人は各自、勝手にお調べいただきたい。

 

※13,000字以上。いつもの上限4,000字の3倍を軽く上回っている。

 

 

 

*1:というか日本が真似したのだが。

*2:なお、LibDemsを「中道左派」とする言説があるが、この政党は「左派」のつかないただの「中道」である。っていうか世界史に出てくる「トーリーとホイッグ」の「ホイッグ」。

*3:日本のマスコミが「英国のリケジョ政治家」云々と騒いでも驚かない。マーガレット・サッチャーも化学者だったし、コラム1本くらいは軽く書けるネタだ。←これ、パクるなよ。

*4:日本語でいう「大臣」は英国ではSecretary of State, 略してSoSまたはSecretaryである。

*5:日本語では「政務官」

*6:Ministerは多くの場合は日本語では「閣外大臣」と訳されるが、このように閣議に出るministerもいる。ややこしいですね。

*7:私が見た範囲では、トラスについて「女性首相」と書き立てていたのは、日本語のメディアだけだ。英語では書く意味もないくらいにあたりまえのことになっているようだ。

*8:英国でのAsianは「南アジア人」つまりインド亜大陸にルーツのある人々のことを言う。うちら東洋人はEast Asian, Orientalなどと表される。

*9:配偶者の姓だが、この姓の発音は「ブレイヴァーマン」ではない。ルーツが英語圏の人ではないのだろう。via https://en.wikipedia.org/wiki/Suella_Braverman

*10:ちょっと前まで英国の主要政治家にはスコットランド出身の人がかなり多かったのだが(トニー・ブレアゴードン・ブラウン、チャールズ・ケネディ、イアン・ダンカン・スミス、リアム・フォックスなど)……。

*11:名前の読み方は via https://www.youtube.com/watch?v=zghAInU4V1M [Sky News]

*12:リズ・トラスはサッチャーを尊敬していると言っているが、この人選はその「因襲の破壊者」の側面のコピーかなということもちょっと思っている。

*13:当人としては「何でこんなのが」なんだが。

*14:昨日から今日にかけて、ハリー・スタイルズの新作映画が話題になっていた。クローゼット・ゲイの警官を演じているという。私はその予告編を見て、「自分がゲイであることを隠すために女性と結婚した男性の話だ」と思い、ダシにされた女性のことを考えたよ。互いに納得して世間体のための偽装結婚をしたというのならまだしも。

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