このエントリは、2021年5月にアップしたものの再掲である。
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今回も、前回までの続きで、ブリン村焼き討ちについてのMondoweissの記事を読んでいく。今回で最後まで読み切りたいが、毎回冒頭で「前回」「前々回」式に前の記事をリンクするのも限界なので、タグを使って一括管理するようにした。前置きの類は初回のエントリのエントリをご参照いただきたい。
hoarding-examples.hatenablog.jp
さて、ここしばらく、英文法がテーマである当ブログも中東情勢に集中しているのだが、それは今回「ハマスのロケット」で事態の焦点が「ガザ攻撃」という人道に反する犯罪行為に移ってしまった一方で、実際、この非道と悲惨を許してはならないことはもちろん言うまでもないのだけれども、本当にこの非道を止めるべきと考えるのであれば、「ガザ攻撃」にだけ関心を向けていてはならない、ということを、自分でも内面に食い入るような形で思い知ったし、それについて、どんなに少しでも、自分にできることはやらねばならないと考えたからだ。だが私は専門的なバックグラウンドは一切ないし、翻訳をするのでも小刻みにあれこれ調べものをしながらようやく何とかというレベルの基礎知識しかないので、もっとがっつりと専門的なことを勉強できる機会があるとよいのだが……と思っていたところ、先日、酒井啓子さんのTwitterアカウントから次のような告知があった。
緊急ウェビナー「エルサレムを起点にパレスチナ/イスラエルの現在を考える」(5月19日(水)18時~、Zoomを利用したオンライン開催)のご案内 https://t.co/JFSpe5jUpZ
— sakai keiko (@KeikoSakai) 2021年5月14日
予定時間は18時から19時半(90分)。このウェビナーは無料だが、参加(視聴)するには、リンク先で名前とメールアドレスを登録する必要がある。ウェビナー実施の前日である今日の夜、 登録したメールアドレスに当日使うURLなどが届いた。もし明日、このウェビナーに参加したいとお考えの方で、まだ登録されていない方がいらしたら、まだ間に合うかもしれないので登録することをお勧めしたい。 登壇者は次の著作のある4人の方々:
……というところで本題に入ろう。今回も英語の実例として読む記事はこちら:
前回のエントリで見たセクションだが:
「英文法と文法用語」という余談みたいなこと(でも当ブログとしては本題なのだが)を書いてる間に文字数を使い切ってしまったので中途半端にしか読めていなかった部分:
“If we stop going to our land, then they can take it for themselves. And that is what they want.”
第一文の前半は、前回見た通りである。後半、 "then they can take it for themselves" は、見れば何となくわかる気がするが、はっきりと意味が取れているかどうかというと不安、という人がけっこういるのではないかと思う。単語はひとつも難しいものはないが、文となったときに意味がはっきり立ち上がって見えてこないタイプのこういう文は、東大・京大・一橋大あたりを受験する人はたくさん練習するだろう。"take it" の "it" は "our land" を受けており、「私たち(パレスチナ人)が私たちの土地に行くことをやめてしまったら、彼ら(イスラエル人入植者)がその土地を自分のものとしてしまえる」の意味。
次の文、太字で示した "what" は《関係代名詞》で、文意は「そしてそれが彼らの欲することなのです」となる。もっとわかりやすい日本語にすれば「彼らの思う壺になる」だ。
次の文:
The attack on Burin was one of several reported incidents of settler violence in the occupied West Bank this week.
太字にした部分は《one of + 複数形》の形。「ブリン村への攻撃は、占領下にある(ヨルダン川)西岸地区で、今週、報告された何件かの入植者の暴力のひとつである」と直訳される。これは直訳でもそうわかりづらくはないだろうが、いかにも翻訳くさい日本語ではあると思う。
その次の文で、この "several reported incidets of settler violence" が具体的に説明されている。そう、《トピック文とサポート文》の構造だ。ブリン村焼き討ちの前の何日かの間に、車への投石や暴行など、少なくとも5件の攻撃があったという。
こういう暴力は、大手国際メディアはまずとり上げないが(日本のメディアに限った話ではない)、個人でネットで中東情勢をフォローしていると日常的に見聞きする。例えば今日もこんな映像がシェアされてきた。殺傷力の高いごっつい銃を持った男が、通りを走る車を威圧している。東エルサレムにあるベイト・ハニナという地域からの映像だ。(東エルサレムについては、このシリーズの最初のエントリをご参照いただきたい。)
In my village in Palestine Israeli settlers are shooting at any random Palestinian cars. Keep in mind these are just settlers not soldiers they just feel like torturing Palestinians knowing they don’t have to face any consequences. pic.twitter.com/Hwd8aVaMDS
— World (@Dun___Dun) 2021年5月18日
Mondoweissの記事は、このあと最後のセクションに入る。そこでは、国連の人道問題調整事務所 (OCHA) が先月(2021年4月)に出した、イスラエルの違法入植地の住民(入植者)の暴力に関する報告の内容が概説されている。記事の概説で飽き足らない場合は、国連のプレスリリースにリンクが貼られているから、関心のある人は見てみるとよいだろう。
全部で5回に分けてMondoweiss掲載の記事を詳しく読んできた。このメディアの文章は、論説文だともっと難しいのだが、今回のような報道のような記事ならかなり平易である。ぜひ、ときどきチェックしてみてほしいと思う。大手報道機関だけをフォローしていては知ることができない細かいニュースが取り上げられているので。
※3500字
酒井啓子さんの下記の新書は、21世紀に入ってからの(広義での)中東情勢について、基本的なことを知っておきたいという方には非常に適している。特に、年齢が若くて(広義の)中東というとイスイス団くらいしかイメージできない方が、予備知識を底上げするにはもってこいの内容だ。特にパレスチナについては、21世紀に入ってからは「後景化」したという流れも解説されている。紙版だけでなく電子版もある。