今回は、文法をネタにした英語圏Twitterのやり取りを見てニヤニヤする会。またの名を、文法警察の慰労会です。文法警察が嫌いな方はここでお帰りください。
というわけで元ツイート:
Grammar nerds: Are we moving on from being militant about using "fewer" instead of "less" when referencing countable things?
— Max Weiss (@maxthegirl) 2022年12月13日
この "militant" はaggressiveの言い換えだが、いろいろと背景のある語なので面白おかしさが増している感じ。
ここで取り上げられている「fewerかlessか」は、文法警察ネタの定番で、この2つの語をGoogleの検索窓に入れてEnterキーを押すだけで、いろんなものが見えるはずである。画像の検索結果を見るとさらに効率がよいだろう。
簡単に説明すると、fewerの原級fewは数えられる名詞とともに用いられ、lessの原級littleは数えられない名詞とともに用いられる。逆に言えば、fewer+不可算名詞という形はありえないし、less+可算名詞という形は間違っている。文法的には。
○ few apples (数少ないリンゴ) | ○ little water (少量の水) |
× few water | × little apples |
↓ ↓ ↓
○ fewer apples (より少数のリンゴ) | ○ less water (より少量の水) |
× fewer water | × less apples |
しかし実際には、このfewerとlessが混同されていることもよくある。例えば私がロンドンにいたときに話題になっていたのは、大手スーパーのTescoが、前に並んでいる人の買い物の量が多いため、自分は少ししか買わないのに会計にかかる時間が無駄に長すぎてイライラするという客の不満を解消するために導入していた「買うものの数が少ない人専用レジ」の表示で、"items" という可算名詞について、"fewer" ではなく "less" と書いている、ということだった。上に埋め込んだGoogle検索結果のキャプチャ画像内にもあるが、 "10 items or fewer" (10品以下)とすべきところを "10 items or less" としていたのだ。
Max Weissさんは、「文法オタク (grammer nerds)」に当てて、このような事象について、「攻撃的な態度を取ることは過去のものとなりつつあるのでしょうか」と尋ねるツイートをしている。つまり、「最近ではそこらへんはもういいかとスルーすることが多くなっているのでしょうか」ということだ。
これに寄せられたリプライが……
No!
— James Surowiecki (@JamesSurowiecki) 2022年12月14日
We are not moving on.
— James Fallows (@JamesFallows) 2022年12月14日
No. Corrected my older son just the other day.
— Alec MacGillis (@AlecMacGillis) 2022年12月14日
Definitely not. For some reason this one really ticks me off, tho' I feel like I'm trying to (silently) hold back the tide.
— Rodney North (@Rodney_S_North) 2022年12月14日
Absolutely not. Less flour and fewer eggs, as always.
— Frank Bajak (@fbajak) 2022年12月14日
Hell no
— Dylan Smith (@DSmith_Tucson) 2022年12月14日
Never!
— Rob Person 🇺🇸🇺🇦 (@RTPerson3) 2022年12月14日
……とまあ、こんな調子で、文法警察一歩も引かない。
まあ確かにこれは譲れない一線だろう。
と思いきや、意外と柔軟な人もいる。
Hell yes. Usage always wins in such matters.
— xpostfactoid (@xpostfactoid) 2022年12月14日
See also "that" as a pronoun for people.
「戦闘的だったのは過去の話である。このようなことにおいては、用例が常に(文法規則に)勝つものだ」というコメント。
でも、そういう考えの人は、ここで確認できる限りは、ごくごく少数者のようだ。
で、@xpostfactoidさんも言っているが、関係代名詞で先行詞が人のときにwhoではなくthatを用いるという傾向について……
Yes, because I need to save my energy for insisting on “who” instead of “that” (eg, “The woman WHO played the piano…”). Many writers are doing away with “who” for some reason
— Amanda Kolson Hurley (@amandakhurley) 2022年12月14日
「thatではなくwhoを使うべきと主張するためのエネルギーをとっておかねばならないから、fewerかlessかにはさほどこだわらなくなってきた」という人。マジなのかネタなのかはわからん。実際、最近、BBC Newsでも関係代名詞のwhoの代わりのthatをよく見るんだよね。やたらとthatを使いたがるのはアメリカ英語だと思ってたんだけど……。
We are not! It’s my personal your/you’re. Then we move to “that” which should be “who”. Bring it!
— Donna Kozik 📕 (@DonnaKozik) 2022年12月14日
ここにもwho/thatは問題だと言っている人がいるな……。
それからこんなツイート:
Yeah. It's less trouble. Fewer things to worry about.
— Bob Lessick (@lessick) 2022年12月13日
うまい。troubleにはlessを使い、thingsにはfewerを使うという正確さを見せておいて、「fewerかlessかにこだわるなんて過去の話だよね」と言ってみせるという高度なレトリックである(実際には、この人はfewerかlessかには厳格にこだわり続けている)。
というわけで、Maxさんのツイートのリプはざっと見てみるとおもしろいと思う。文法警察最前線、密着24時だ。
結論としてはこんなところだろう。
A good hill to die on.
— Ranger Retrocenter (@retrocenter) 2022年12月13日
「ここを守って死ねるなら本望じゃね」
※3600字