このエントリは、2021年1月にアップしたものの再掲である。ちょうど今まさに、このクーデター未遂/暴動についての特別委員会の公聴会が始まったところで、私の見ているTwitterの画面には、それに関連したツイートがよく流れてきている。日本語ではこの公聴会に触れた報道フィードは見ていない。1月6日の暴動を引き起こしたデマは日本人でも信じている人がいっぱいいたのに、日本ではこれは報道されないのだろう。
10分もあるから全部は見ていないが、2021年1月6日の米クーデター未遂事件のまとめ。ドナルド・トランプの演説も入っている。これを「左翼がやった」と主張する者が出たこと、それを信じて「BLMの暴徒がががが」みたいになった人が出たことの方が、ロシアによるBLM便乗扇動などよりずっと重要だし深刻だ https://t.co/MN2LuJvjPK
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年6月11日
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今回の実例はTwitterから。
現地先週水曜日(1月6日)のワシントンDCでの騒乱(議事堂乱入)を受けた事態は、まだ全然終わっていない。トランプ政権から、残る任期はほんのごくわずかという段階になってから、次々と閣僚が離脱している現状は、政権の「終わり」のように見えるかもしれないが、ワシントンDCの政治の中枢の外に目を向ければむしろあれは「始まり」であろう。6日の乱入時のように「ボスからの指令」を待っている武装した人々が、全米各地で組織化した形で存在していることは、FBIが明らかにしている通りだ。だから(日本語の中に閉じた世界ではどうか知らないが)「全世界の目がアメリカに注がれている」状態になっていて、BBC Newsのサイトは今、次のようになっている。
TwitterやFacebookがドナルド・トランプのアカウントを停止・削除したり更新禁止にしたり、また、今回の議事堂乱入関係者が広く使っていたSNSサービス「パーラー Parler」(ここは「言論の自由」を標榜しつつユーザーに社会保障番号を登録させるなどしていたのだが)が、Apple (iPhone) やGoogle (Android) から追放され、Amazon Web Serviceからも切られたりしているのは、そのような「ボスからの指令」の経路を断つためで、形式上は「私企業の判断」ではあるが、おそらくそれ以上の背景があってのことだろう。
とにかくドナルド・トランプはおとなしく「終わり」にするつもりなどないということをかねがね公に発言してきたわけで、これから1月20日の新大統領就任式までの期間で、また就任式当日に何が起きるかはまだわからない。
そういう状況下だが、6日に何があったのか、この数日で細部が次々と明らかになってきてはいるが、米国の政治の中枢があのような形で襲われた(それも手製の爆発物まで持ち込まれていた)というのに、国としてのまとまった声明はいまだに出ていない。トランプ自身も、Twitterが最初に「12時間のアカウント凍結」という措置をとったのが解除されてすぐに投稿したビデオで、なんかそれまでと全然違うことを言い出してはいたが、それをフォローするようなことは何もしていない。
そういう問題を指摘しているのが、英インディペンデント紙のリチャード・ホール記者の次の発言である。ホール記者は11月にフォー・シーズンズ・トータル・ランドスケーピングでの奇妙な記者会見の現場から実況していたが、1月6日の議事堂にも行っていた(最終的には報道機関の人々が機材を奪われ暴徒に襲われているのを目撃していたが)。
というわけで今回の実例はこちらから:
The outgoing president’s supporters are threatening to attack state capitols across the country, and in D.C., and he has done nothing to try to stop them. He could issue a statement calling for calm, for them to accept the result, to protest peacefully even. He has done nothing.
— Richard Hall (@_RichardHall) 2021年1月11日
第1文は、特に難しいところはないだろう。あえて言えばto不定詞だが、解説が必要なほど難しい用例ではない。
第2文:
He could issue a statement calling for calm, for them to accept the result, to protest peacefully even.
太字で示した "could" は、canが過去形として用いられているのではなく、《仮定法》である。if節はないが、「~することもできるのに(していない)」という、いわゆる《反実仮想》(事実と異なること)を述べている。
そのあとの "calling" は《現在分詞の後置修飾》で、《call for ~》は「~を呼びかける」。「彼は平静を呼びかけるステートメントを出すこともできるのに(出していない)」という意味だ。
次、下線で示したセクションだが、まずここは《to不定詞の意味上の主語 + to不定詞》の形になっていることに注目しよう。"for them" が《to不定詞の意味上の主語》で、"to accept the result" が《to不定詞》である。そのあと、コンマを挟んで言い足されている "to protest peacefully even" も、"for them" を意味上の主語とするto不定詞。意味は「彼らが選挙結果を受け入れるように呼びかけることすらしていない。抗議するなら平和的に抗議するようにという呼びかけさえしていない」ということになる。
ここで全体が、《call for ~ to do ...》の形(「~に…するよう呼びかける」)になっていることにも注意したい。
※2140字
参考書: