Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

英語話者が思いつくままに挙げる、「どうしても気になる間違ったor微妙な英語」あれこれ(less/fewer以外)

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今回の実例は、前回の続き。というか、前回見た「lessとfewerの混同」という、英語母語話者や英語を日常の生活言語として使っている人々の間で見られる文法的なよくある間違い (common errors) のひとつについての問いかけの投稿に対するリプライに寄せられている、less/fewer以外の「『文法警察』とそしられようが『上から目線 (pedant)』となじられようが、やっぱり気になる文法的なよくある間違い」についての雑談を集めておきたい。

念のために言っておくがこれは「日本人の英語の間違いをネイティブが上から目線で指摘していて差別的だ」と非難されるようなスレッドではない。英語母語話者をはじめ、英語を日常生活の言語として使っている人々(の中で言語的にちょっと敏感な人たち)の間での雑談である。てか、街にあふれるめちゃくちゃな英語もどきについて「めちゃくちゃだ」と指摘されるとキレてしまう日本の人たちは、「間違いを指摘される」ということについて、本当に英語で物を伝達する気があるのなら、もうちょっと前向きになったほうがいろいろと建設的だと思う*1

かつて英語学習関連の出版物で「ネーティブはそうは言わない」系の粗雑な量産本が、出版社の営業と編集者の考える「売れ線」としてハバをきかすようになる前は、「日本人(より正確には日本語話者、日本語母語話者)に共通する英語のミス」を分析し、よき指南を与えてくれる本がいろいろと出ていたのだが(私もそれらの本から非常に多くを与えられた)、最近、大型書店に並ぶものすごい量の英語学習本の背表紙を眺めても、そういう「ミスを指摘する」方向の本は目にしないと思う。

さて、本題に入ろう。前回見たMax Weissさんのツイートへのリプライから、less/fewer問題以外の「気になる言葉遣い」を指摘したツイートを見ていく。 誰もそんな話はしていないのについつい話したくなる、それがnerdというものだ、ということも示した好スレッドである。

※大学受験生向けではなく、いわゆる「上級者向け」の内容です。今回も当ブログの文字数上限を無視してまとめます。

目次

 

元のツイート: 

 

▼まずは、more thanとoverの混用について: 

これはさすがに私もpedantだと思うけど、文脈によってはそうではない場合もあるし(私が接する文はだいたい「文系」の文なので、more than a centuryなのかover 100 yearsは厳密に区別されていないが、数値に厳格な文では区別される)、技術畑の人やいわゆる「理系」の人は「そもそもpedantじゃないよ」と思うかもしれないなあと思う、という例。

 

▼「増加する」のup/increase, raise: 

increaseやraiseを使うべきところで動詞のupという用法は、報道記事ではまだあまり見ないけれど、increaseという2音節語の重さを嫌うのか、フレンドリーな感じの文面ではそこそこ見るかも。

 

▼文法警察の王道ネタ、コンマとアポストロフィ

Oxford commaとは、3つ以上のものを列挙するときに、andの前にコンマを置くスタイルを言う。つまり、《A, B, and C》と書く、というスタイルだ。私は日本の中学でこれとは違う書き方、つまり《A, B and C》を正式なものとして教わったが、実際に英語でものを読み書きするようになってから、Oxford commaを使うようになった。その理由を端的に説明してくれているのが、有名な、下記の説明用イラストである。

Oxford commaがある場合は、"two strippers, JFK, and Stalin" で「ストリッパー2人とJFKスターリン」と難なく読めるが、Oxford commaなしで "two strippers, JFK and Stalin" とすると、"strippers" の直後のコンマが《同格》を表すそれと解釈されうるので、一瞬「ストリッパー2人、つまりJFKスターリン」という意味に読めてしまう、ということである。

 

▼これは当ブログでも扱っているトピック:  

「Andで文を書き始めてはならない」というのは、英語圏でも作文の技術として教えられてはいるらしい。ただし、それ自体が神話なのだが。

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

▼これも「よくある間違い」の定番ネタで、haveがofになる件: 

文字で見てもピンとこない人は、音で聞いてみてほしい。《should have + 過去分詞》のhaveは、強勢が置かれないので、h音が脱落してaの音がごく弱い母音の音になり、veの音は次の語との連結もあって無声化してfになり、結果、haveがofの音になる。これを聞こえたまま書いてしまうと、「should  of + 過去分詞」という珍妙な文面になってしまうわけだ。日本語でいえば、「日本語という言語」と表記すべきときに「日本語とゆう言語」と書いてしまっている、というような例である。

おそらく、書き言葉がプロの書き手や編集者がかかわる紙と活字から解放されて、一般の人が手元の端末でキーを打ったものがそのままアプリやブラウザの画面内に表示される時代になったときに、どっとあふれ出したのだろうが、本当にしょっちゅう目にする「間違い」である。

これと同じくらいの定番ネタに、yourとyou'reの混同、thereとtheirの混同がある。

 

▼これもhaveがほとんど聞こえないことが理由かと: 

"I've seen it" の "'ve" はほとんど聞こえないからね。小説の登場人物の発言の中で見たりする表現。

 

▼おお、これは日本の受験英語……!!

farの比較級・最上級には2つの形がある。far-farther-farthestは《距離》を言うとき、far-further-fursestは《程度》を言うとき、と習うが、英語圏では前者がdistanceなのは当然として、後者はtimeなのか……。

 

▼これは語彙のレベルは高いけど、基本的に受験英語的: 

辞書ひいてください。exciting/excitedみたいな感じです。この違いが他人に説明できるレベルで理解できないと英語は使えるようにならないと言われてきた重要なポイントです。

 

▼人称代名詞: 

これも定番ネタ。主語だから主格を使って "she and I did ..." と言わなければならないところで、目的格を使ってしまう例。

下記の曲のタイトルは目的格だからこれでいい ("Good enough for me and my Bobbie McGee")。こういうことも、文法を知らないと理解できない。


www.youtube.com

 

▼代名詞の単数と複数: 

これはたぶん、3人称単数の代名詞で男女を特定しない(heとかsheを使わない)ためにtheyを使うという最近の用法の影響もあるのかもしれない。「そのtheyとは誰のことか」を特定するために、会話で手間取るようになった、という指摘である。

代名詞を使わなければいいのよ。日本語みたいに固有名詞を繰り返せばいい。(過激派)

 

▼giveの代わりにgiftを使うようになっていると: 

「贈り物を贈る」はgive a giftと言うんだけど、giftには「~を授ける」という他動詞の用法があるので*2、それが一般化しているということか。

 

▼giftと同じように、他の品詞から転用されている例の指摘。動詞のimpact, 名詞のcreativeなど: 

3つ目のツイートはこういう用法が目に付くようになった原因の考察だが、ああ、広告か。広告の言葉は少ない文字数で人にインパクトを与えて人の印象に残るように考えられているから、「普通の言葉」ではなく、「ちょっとずらした言葉」を使うことがある。日本語でも形容詞の「おいしい」が名詞化して「おいしいを大切に」みたいな用法が目に付くよね。本来は「『おいしい』という感動を大切に」みたいな表現であるべきところ、インパクト勝負でちょっとひっかかるようなフレーズとしてプロがリライトすると「おいしいを大切に」になる、みたいな。

 

▼それは原材料だ: 

レコードの「アナログ盤」(最近は日本語でも「ヴァイナル」と言う)は英語ではvinyl record(s) と言うんだけど、vinylがその意味の名詞化してvinyl(s) と複数のsがつくようになっていると。

「vinyl record→vinyl」という変化は、「携帯電話→携帯」みたいな例だね。

 

▼これに「間違った用法」があるとは知らなかった。

ウェブ検索してみたけど、これはpedantryだと思う……。

“Begs the question” is often used interchangeably with “raises the question;” however, some grammarians argue they are not synonyms. There is a subtle difference in that “begs the question” has to do with a flawed argument and “raises the question” is concerned with missing information.  

For instance, if your friend shares their opinion that eggs are the best food in the world, that statement might raise some questions about how they formed that opinion. Without additional information, you might be wondering whether the determining factor was taste, recipe flexibility, or nutrition. By contrast, the statement that “eggs are the best food in the world because they come from chickens” begs the question, “why chickens?” The argument is fundamentally flawed because not all eggs come from chickens.

https://www.masterclass.com/articles/begs-the-question

 

▼関係代名詞のthat……前回見たけど、改めて: 

 

▼かくして、ぶんぽうけいさつはていこうせんせんをそしきかするため、ひみつけっしゃをつくった


www.youtube.com

 

※今回、文字数に意味はないんだけど、8200字くらい。

*1:ウエメセだ、差別だ」じゃなくて「同じ指摘するんでももうちょっとやり方があるんじゃないですか」でしょ、という話。

*2:特別な才能を授かった子供を「ギフテッド」と呼ぶのはその語義から。「(特別なものを)授けられた」の意味。

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