Twitter/Xを見てたら、《前置詞のcome》の実例があった。これは普通にウェブ検索やコーパス検索をしても非常に見つけづらく、実例は見るたびにメモっておきたいのだが、当ブログでは、これまでに1例しかメモれていない。貴重な実例だ。
発言主は、今年4月までスコットランド自治政府の首相を務めていたハムザ・ユーサフである。1985年グラスゴーに生まれたユーサフは、まだ40歳にもならない若さだが、2011年に26歳でスコットランド自治議会に初当選している。
実例としてメモっておきたい投稿は、そのことに関連する一文で書き出されている。
Come 2026, I will have served 15 years as an MSP. The time will be right for me to move on.
— Humza Yousaf (@HumzaYousaf) 2024年12月17日
As the son of immigrants, I could never have imagined the incredible political journey I have been on. I feel blessed.
Thank you to all of those who have supported me over the years. pic.twitter.com/m1WmuG09X7
ていうか、ここは何ですか、《完了形》の鉱脈か何かですかね。(目をキラキラさせながら)
ともあれ、ひとつずつ見ていこう。
Come 2026, I will have served 15 years as an MSP.
太字にした "come" が《前置詞のcome》である。誰でも確認できる辞書ということで、Wiktionaryを見てみよう。
Used to indicate a point in time at or after which a stated event or situation occurs.
つまり、日本語でいえば「きたる~」という表現に相当する。毎日新聞の校閲部ブログで、「毎日新聞では『きたる』という言葉の送り仮名を、名詞などの体言につく連体詞の場合は『来る』、動詞の場合は『来たる』と使い分けています」と説明しているように、この表現は「来る~」と表記するのが一般的だが、文脈なしで語だけで示されたらどうしたってこれは「きたる」ではなく「くる」と読めてしまうので、ここではひらがなで書いておく。この日本語表現は「きたる12月20日に〇〇さんの講演会が行われます」とか、「きたる2025年4月に、本学は開校〇周年を迎えます」といったふうに用いられるが、友達や家族などとの日常会話ではまず使わないだろう。広く一般に何かを告知する場合によくみられる。
英語のcomeについてもそういうことを調べてみたいのだが、何しろ、一般人が使えるコーパス検索ではとても検索しにくいので、まだ調べたことがない。こういうのこそ、ChatGPTだとかCopilotだとかいった新規のサービスを使って調べればよいのかもしれないが、あいにく、この14か月、それどころではない。
閑話休題。
上記引用部分で下線で示したのは、《未来完了》である。未来のある時点で「~してしまっているだろう」といった意味を表す。
この文に見られるように、《前置詞のcome》は《未来完了》と相性がよい。私が最初に《前置詞のcome》を覚えたとき*1もそういう用例だった記憶があるが、肝心の実例はとっくに記憶のかなたにいっている。
というわけで、文意は「きたる2026年で、私はスコットランド自治議会議員を15年務めたことになるでしょう」。
あ、そうだ。MSPはMember(s) of the Scottish Parliamentの略語(頭字語)である。英国政治に関して何かを英語で読むなら必須の語彙のひとつだ(ほかにMP, MSもしくはAM, MLAがある)。
次の文:
The time will be right for me to move on.
《不定詞の意味上の主語》の構文。直訳すれば「そのときが、私が先に進むために、ぴったりでしょう」。要は「その機をとらえて、私は先に進みたいと思います」という宣言だ。
えっ、ハムザ・ユーサフ、政界引退すんの?
……と誰もが思うだろう。その詳細は、ユーサフ氏の投稿に画像でついている長文を読むとして、ここではツイート本文を最後まで見ていこう。
As the son of immigrants, I could never have imagined the incredible political journey I have been on. I feel blessed.
《have + 過去分詞》の連続だ。2番目の(下線部)はシンプルな《現在完了》。最初の(太字)は《助動詞 + have + 過去分詞》の構造で、couldが少々難しいかもしれないが「想像することもできなかっただろう」と《仮定法》を含んでいる。実際には実現したことについて「想像もつかなかったであろう」と事実に反することを言っているので仮定法を使っているのだ。
文頭の "As" は《前置詞》。文意は「移民を両親に持つ子供として*2、私は、自分がこれまで歩んできた信じられないような政治的な旅程は、想像することもできなかったでしょう」。
次の "I feel blessed." は、ちゃんと訳そうとすると大変なのでここではスルーする。方向性としては「大変に光栄に思います」という発言である。
そして最後の一文:
Thank you to all of those who have supported me over the years.
下線部はシンプルな《現在完了》だ。太字にした《those who ~》は「~する人々」で、文意は「これまでの歳月、私を支持してくださったみなさまがたに感謝申し上げます」。
ユーサフ氏はこの投稿に、2026年に実施されることになっている次のスコットランド議会選挙に立候補しないことを、ユーサフ氏の後にSNPの党首となったジョン・スウィニー氏に伝える書簡の文面を、画像として添付している。これもまたフォーマルなレターの文例として見どころは多いのだが、そこまで解説していられるほどの時間的なゆとりがなく残念である。

今回のおまけ部分は、関連して見つけたツイートのメモです。ガザ・ジェノサイドとユースフ氏についても少し。あと、日本語圏でも信奉者というかファンが多いジョージ・ギャロウェイが、実はひどい差別主義者で、いかにとんでもないいかさま師かということについても(私も2003年イラク戦争のころはギャロウェイの舌鋒はすごいと思ってたし、その発言を翻訳もしていました。そのことは否定しない。それと同時に、その後に明らかに見えるようになってきたギャロウェイの特権意識と他者への見下しも否認していない)。話の流れで、the Scottish National Partyを日本語でどう翻訳するかも。ちなみに、一番長いのはギャロウェイについての記述です。
*1:確か大学受験に備えた長文読解の教材だった。
*2:ユーサフ氏はお父さんが1960年代にパキスタンから移住してきた家族の息子で、お母さんがケニアに生まれ、差別による暴力にさらされて英国に移住したパキスタン系の人である。See Wikipedia.





