今回の実例も、前回と同じ、ウェールズで初めて行われた独立要求デモについての報道記事から。
背景的な話は前回のを見ていただくとして、記事はこちら:
続きを読む今回の実例は、ウェールズで初めて行われた独立要求デモについての報道記事から。
ウェールズはブリテン島の南西部にあり、13世紀以降隣国イングランドの支配を受け、16世紀には(客観的に見ればかなり曖昧という印象を受けるようなやり方で)イングランドと合同した。
元々の言語であるウェールズ語はイングランド支配下で弾圧され、使用や教育を禁止され、強制されたイングランドの言語、すなわち英語がウェールズの日常の言語になっているが、20世紀以降の言語保存運動によって、近年はウェールズ語話者もウェールズ語が用いられる機会も増えている。ウェールズでは公用語はウェールズ語と英語と定められているため、道路標識などはこの2言語が併記されている。
その標識をめぐって、10年ほど前にとんでもないことが生じたことが世界的に話題になったことがある。今でもBBCのサイトで普通に記事が読めるので、よければ読んでみていただきたい。めちゃくちゃ笑えるので。
さて、そのような歴史的背景を持つウェールズでは、常に「イングランドからの独立」を目指すナショナリズム(こういうnationalismを「国家主義」とか「国粋主義」と訳すのは間違いである)の流れがあったが、それは「大きなうねり」と呼べるようなものでは必ずしもなかった。かつて、アイルランドのナショナリスト武装集団IRA(その当時は、のちの北アイルランド紛争の時代に比べるとIRAはメンバーも支持者も少ない弱小集団だった)が武装活動をやめようかという話になったときに、持っていた武器弾薬をウェールズのナショナリスト武装集団に譲り渡した、などという説がもっともらしく囁かれていたが(私も英語で書かれた本でそう読んだ)、仮にその武器の譲渡が事実であり、それなりに強力な闘争になる可能性があったのだとしても、最終的には、ウェールズの武力闘争はさほどの規模にはならなかったようだ。
武装集団とは別に、政党としては、ナショナリスト政党Plaid Cymru(ウェールズ語の名称で、「プライド・カムリ」と読む)が1925年に結党されている。ただし、この党が初めて英国会に議席を獲得したのはずっと後、1966年のことだった……などという背景解説を書いていると、いつまでたっても書き終わりそうにないので、そろそろ先に行こう。
というところで今回の記事はこちら:
続きを読む今回の実例は、文法というより単語の話。
日本語圏では英語に関する解説は「学校で習わない」と打ち出すとウケがよくなるので本稿もそういうウケ狙いと思われるかもしれないが、実際にこれは学校では習わないのではないかと思う。だが卑語や下ネタではないし、俗語ですらない。
出典はTwitterから:
Our manager crying on the floor after we scored the winner tonight 🙌 #HesMagicYouKnow #Pochettino pic.twitter.com/CDlYu9H8N1
— Zeus (@superspurs34) May 8, 2019
続きを読む
※この記事は、このブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておきたい。なお、文中の「昨日」などは初出当時のまま。
****************
今日の実例も、出典は昨日のと同じ。米トランプ大統領とロシアとのつながりに対する特別検察官による捜査に関する報道記事から、ウィリアム・バー氏の発言のなかに、注目すべき文法ポイントが含まれている。
ウィリアム・バー氏はジェフ・セッションズ氏が解任されたあと、次期司法長官に指名されている法律家で、1990年代に司法長官を務めた経験がある。つまり、法律のプロ中のプロと見なしてよい人物だ。
続きを読む今回の実例は、「反ワクチン anti-vaccination movement, anti-vax」についての論説記事から。
最近、米国で麻疹(はしか)の流行が報告された影響か、「反ワクチン」は日本語圏でもかなり話題にのぼるようになってきたが、今のこのムーヴメントの発端はおよそ20年前、『ランセット』という権威ある医学分野の論文誌(学術雑誌)に、ウェイクフィールドという学者が発表した論文にある。その論文の内容は、概要を書くだけでも「反ワクチン」のデマを再生産し拡散することになってしまうのでここではスルーするが、当該の論文は発表直後から複数の問題点が指摘され、その後最終的には全面撤回されるということになった。つまり、その論文の内容は全然正しくない、論文はデタラメ、と結論されている。
しかし論文の発表から全撤回までの10年余りの間に、そのデタラメな中身は難しいことなんかわからない一般人の(一部の)あいだにパニックを引き起こし、「ワクチン忌避」という新たなムーヴメントを引き起こした。それが、論文全撤回から9年になる現在でも終わっていなくて、その影響(と思われるもの)が実社会で確認されてきている。それが昨今の麻疹の流行だ。
麻疹の流行に関してはウェブ検索で報道機関の記事を読んでみていただきたい。例えば米WSJの日本語版には下記の記事(2019年3月9日付)がある。
前置きはこのくらいにして、今回参照する記事はこちら:
続きを読む今回の実例は、AFPのTwitterフィードから。
AFPはAgence France-Presseの略で、フランスの通信社だが、フランス語だけでなく英語での報道も充実しており、ネットでは「英語の報道機関」としての存在感が高い。英語報道部門のTwitterアカウントは @AFP である。
参照するツイートはこちら:
A New York judge ordered that a key hearing in the rape and sexual assault case against Hollywood producer Harvey Weinstein be held behind closed doors, prompting protests from US media https://t.co/jhDZiai72D
— AFP news agency (@AFP) April 26, 2019
続きを読む
※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。
****************
今日の実例は、スコットランド出身のプロ・テニス・プレイヤー、アンディ・マリー*1が引退の意向を示した記者会見での発言より。標題に書いたように、短い発言に文法事項がみっちり詰まっていてお得感が高い。少し細かいようだが、こういうことをひとつひとつ確実に押さえることができていないと、英文の正確な読解・理解・内容把握はできないので、丁寧に見ていこう。
*1:日本語圏では「マレー」と表記されていることが多いが、原語では「マリー」の音に近い。英語として見れば確かに「マレー」と読みたくなるが、スコットランドの名字は、イングランドの読み方の規則とは少々異なることがある。
今回の実例は、UEFAヨーロッパ・リーグ(旧UEFAカップ)決勝進出を決めたアーセナルの正ゴールキーパーで、今シーズンをもって現役を引退することが決まっているペトル・チェフについての記述から。
チェフはかつて10年以上にわたてチェルシーの正ゴールキーパーだったが、2015年にロンドンを横断してアーセナルに移籍。チェルシー時代に試合中に頭を強打したことが原因で、その後はずっとヘッドギアを着用してプレイしている。趣味はドラムの演奏で、スポーツではサッカー以外にアイスホッケーもやるという人で、今回見る文章に引用されている本人発言でもそのことへの言及がある。
ヨーロッパ・リーグ決勝での対戦相手は、フランクフルトをPK戦の末に制したチェルシーで、チェフにとっては長年在籍した古巣との国際舞台での決勝が、現役生活最後の試合となる。ただでさえ「ロンドンの2チームが、えらい遠いところで行われる決勝で対戦」ということでもろもろ熱くなっているところに、彼の場合はなおさら劇的なおぜん立てが整っている、という感じだ。
記事はこちら:
続きを読む今回の実例は、時事的なトピックに関する論説記事から。
アフリカ東部に位置するスーダンで、30年にわたって強権政治を行ない、ダルフール紛争や南スーダン(現在は独立国)での苛烈な武力弾圧を行なってきたオマル・アル=バシル大統領に反対する民衆のデモが、政権側の圧力にも負けず粘り強く行動した末に、国軍が政権側のデモ鎮圧という意向に従わず、今から1か月ほど前に、逆に大統領を退陣に追い込むという、誰もが驚かずにはいられないようなことが起きた。日本語版ウィキペディアにも少し詳しく出ている。(5月11日追記: 本稿初出時、この段落の冒頭の一部が欠けていました。編集時にブラウザの動作が重くてカーソルがわけのわからないところに飛んでいたことによるミスです。失礼しました)
そして、2011年のいわゆる「アラブの春」を記憶している人なら誰もが、あの民主化運動の「春」のあとの諸国の様子、特にエジプトの、打倒されたムバラク政権より強権的でデタラメなシーシー政権の成立などを思い浮かべて「スーダンは二の舞にならぬように」と思っているわけだが、「アラブの春」後の中東・北アフリカ世界では結局前より強権的な政権ができた、という展開のほかに、もう一つ大きな懸念材料がある。象徴的なのがリビアで、「権力の空白」が生じれば各地の軍閥がのしてくるし、国境に意味を見出さないイスラム主義勢力も伸長する。スーダンについてもその懸念を指摘する人々は少なくない。
そして、そこに絡んでくるのが、いろいろとアレな面の多いサウジアラビアだ。
というわけで今回の記事:
続きを読む今回の実例は、5月5日(日)に北アイルランドで開催されたベルファスト・マラソンでの珍事についての報道記事から。
この大会は、北アイルランド紛争中の1982年に開始された。伝統的に(「伝統」というには短いが)5月1日に行われてきたが、今年は5月5日(日)の開催となり、キリスト教根本主義(原理主義)の立場からは「安息日にけしからん」という抗議行動が起きたそうだ(北アイルランドだから、誰も驚かない 。ちなみにここで抗議している「フリー・プテスビテリアン」という教会が、Brexit報道でおなじみのDUPの支持母体。DUPを「北アイルランドの地域政党」って流してるとわけわかんなくなりますよ。あれは宗教政党だから)。
Free Presbyterian protest at Stormont about the first marathon in Belfast on a Sunday. pic.twitter.com/69KsQtxBye
— Mark Simpson (@BBCMarkSimpson) May 3, 2019
一方で、「フリー」のつかないプレスビテリアン教会は、ランナーや応援の人々に施設を開放していたそうだ。
Some churches have objected to the first Belfast marathon on a Sunday ... but Stormont Presbyterian Church is offering food & water ... and prayer. 🏃🏼♂️🏃♀️ pic.twitter.com/1IV06F7UvI
— Mark Simpson (@BBCMarkSimpson) May 2, 2019
そのベルファスト・マラソン、今年からコースがアップ・ダウンが少なくなるように変更になったそうだ*1。そして、そのコース変更に伴って、今回の珍事は発生した。
続きを読むBBC Sport - Belfast Marathon: Organisers apologise after course is 0.3 miles too long https://t.co/EXUJSXwm9v 日曜日に行われたベルファスト・マラソン、先導車がコースを間違えるという人為ミスで、参加者は460メートル余分に走らされた。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) May 6, 2019
今回の実例は、サッカーの欧州チャンピオンズ・リーグ(以下「CL」)の準決勝、リヴァプールFC対FCバルセロナの試合の実況テキストから。
CLの準決勝は対戦する2チームそれぞれのホームで行われ、計2試合の得点を総合して勝敗を決する。
今日のカードでいうと、第1戦 (first leg) はバルセロナのホーム(カンプ・ノウ)で5月1日に行われ、バルサが3-0という大きな得点差でリヴァプールを下していた。そして第2戦 (second leg) が7日(日本時間では8日未明)。3-0をひっくり返すのは簡単なことではない。
そのリヴァプールは、1日のCLの試合のあとで行われたイングランド・プレミアリーグでの試合で主力選手(フォワードのサラー)が負傷してしまい、その前から負傷欠場していたもう一人の主力(同じくフィルミーノ)と合わせて主力2人を欠いた状態で第2戦を戦わなければならないことになっていた。というわけで、この時点でバルサの決勝進出はほぼ決まり、みたいなムードになっていた。しかし……
と、当ブログはサッカーのブログではないのでこういう話はこの辺で。要は、リヴァプールはとても余裕があるとは言えない状態でホームに強豪を迎え撃つ、という試合だったということを、前提として把握しておいていただけると、今回の実例は読みやすくなるかと思う。リヴァプールが決勝進出するためには、少年マンガのような奇跡が必要、という状況だ。
というわけで、今回参照するのはこちら:
続きを読む