Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

so ~ that ... 構文, 接続詞unless (英国の研究者ヴィザ事情)

今回の実例は、前回見たのと同じ記事から。

記事で報じられていることの背景などについては、前回のエントリの長々しい前置きを参照。今回はサクサクと本題だけ。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

……と本題に入る前に、さっきたまたま知ったおすすめの電子書籍のセールについて。セール期間はhontoでは今日(9月19日)までで、KoboKindleでも同じだと思う。

 

 では、以下、本題……。

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先行詞がcaseの場合の関係副詞はwhere, have + O + 過去分詞, など (英国の研究者ヴィザ事情)

今回の実例は、英国の入管制度の一面についての切羽詰まっていすぎる記事から。

英国は入国管理(イミグレ)はとても厳しい。空港のイミグレーションで係官から「これから私はあなたを入国させないことを前提として質問させていただきますので、あなたは私が『その心配はない』と納得できるような証拠を示してください」的な態度でお・も・て・な・しされた経験がある人はとても多いと思う。私ももちろんその経験があるのだが、人から聞いた話はもっとひどくて、中には(20年ほど前の話だが)英国で開催される学会に同じ飛行機で赴いた2人の日本人学者の1人はすんなり入国でき、1人は入国拒否となったという事例もある*1

というわけで、英国は、大学や専門学校(特に語学学校)には外国人学生を大勢受け入れているが、すでに教育を終えて研究者となっている外国人の扱いは、決して丁重ではないという話は、ずっと前から小耳にはさんではいた。学者は要するに脳みそがあればどこでも仕事ができるわけで、国に帰らずに英国で職を見つけて居つくつもりではないかと疑ってかかられるのだ、という話だった。

さて、現在EU離脱Brexit)という問題を抱えてしっちゃかめっちゃかになっている英国だが、Brexitの焦点のひとつが「外国からの流入人口(移民)」である。EUの一員である限りはEU加盟国からの人の流入は制限できないという問題――それは同時に、英国からEU各国への流出に障害がないということでもあるのだが――について、自身は外国で就職など絶対にしないという庶民層からの感情レベルでの反発(「近くの工場で働くために通りの奥に引っ越してきた人たちが、わけのわからない言語でしゃべっている」「ここはイギリスだ、英語をしゃべれ」的なもの)を、ポリティカル・クラス(政治の上層部、国政の政治家たち)が無視し、侮ってきたツケが爆発した、と言えるわけだが、そういった感情的反発はBrexitが議論の俎上に乗るようになる前からずっと可視化されていたわけで(ゴードン・ブラウンの "Bigoted woman" 発言と、その後のブラウンへの批判の嵐をご記憶だろうか。わからない方は英語圏でウェブ検索を)、ある意味でその不満のガス抜き調整弁として利用されてきたのが「外国からの留学生の数」だ。2010年、労働党ゴードン・ブラウンが選挙で負けて、保守党のデイヴィッド・キャメロンがLibDemsと連立を組んで新政権を発足させたあと、テリーザ・メイ内相のもとで積極的に進められたイミグレ政策のひとつが、「留学生を減らす」という政策だった。具体的にはインチキ学校(「ヴィザ取り学校」と呼ばれたような実体のない学校……今、日本で問題になりつつありますね)の認可を取り下げたり、ヴィザ発給要件を厳しくしたり、ポイント制を導入したりといったことが進められた。さらに、大学で留学した場合、学位を取得したあと英国に残れるのは4か月までとされ、要するに、卒業したら速やかに英国外に退去することが求められていた。

テリーザ・メイが内相時代に導入したその方針が、ここにきて転換された。「転換」といってもメイ以前の時代の制度に戻っただけだが、学位を取得したあと、2年間の残留が認められる。転換の理由は、メイの導入した政策のもとで英国の大学は外国人留学生を大量に失うことになった(つまり学費収入が減ってしまった)ことだと考えられる。詳しくは下記報道記事を参照。

www.theguardian.com

というわけで、英国の大学・大学院で学ぶ人にとっては、メイ内相に改悪された制度が元に戻ってよかったね、ということになりそうだが、既に研究者として英国で研究機関に所属していた外国人にとっては、メイの「敵対的環境(なるべく居づらい環境) hostile environment」の政策は、現状、変わっていない。今回実例として参照する記事は、その最新の事例として、スコットランドで大学に籍を置いてスコットランド音楽史を研究してきた米国人の学者が、所属をイングランドの大学に移そうとしたらヴィザ更新を拒否されたという一件の報告から始まり、何人かの学者の厳しい体験が記述されている。記事はこちら: 

 

www.theguardian.com

かなり分量のある記事だが、長文多読素材としてはよい文だと思う(ただし、気分がものすごくヘコむかもしれない)。実例として見る部分は、記事をずーっと読み進めていって、下の方から。

*1:もちろん、2人とも必要な書類は全部揃えてあったが、1人はその書類が真正なものと認められなかったといった事情があったようだ。こういうの、イミグレの係官の裁量&判断次第なので、打つ手がない。

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asが接続詞か前置詞か、be動詞の省略された分詞構文(形容詞だけの分詞構文)、複合語、【ボキャビル】be equivalent of ~など(知られざる温室効果ガスの増加と、環境負荷の少ない発電方法)

今回の実例は、環境問題についてのBBCの大きな記事から。私も知らないことだったので記事を読んだときは「衝撃を受けた」といってよい状態だったが、あとから調べてみたら多少なりとも専門的な知見の場では周知の事実で、そのことは十分に共有されているようだった。問題は、それが一般人の知るところではなかった(だからBBCが 'secret' という単語を見出しに使った大きな記事を組んで、問題があるということを明らかにしている)ということだろう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

この記事が取り上げているのは、Sulphur hexafluorideという物質。略称はSF6で、化学物質の名称に慣れている人ならわかるだろうが、sulphurは「硫黄」、hexaは「6」で、fluorideは「フッ化物」。つまり「六フッ化硫黄」だ。

この物質名でウェブ検索すると、日本語でも多くの解説・説明がなされていることがわかる。ウィキペディアのような事典はもちろん、メーカーや研究機関など多くのサイトが検索結果に上がってくる*1。そのひとつが、東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センター物質循環分野のサイトの解説である。ここからわかりやすい説明を少し長くなるが引用しておこう。

六フッ化硫黄(SF6)も温室効果をもつ気体のひとつです。六フッ化硫黄はもともと大気中にほとんど存在していませんでしたが、1960年代から工業的に生産されるようになり、それが大気に排出されることによって急激に大気中の濃度が増え続けています。主に、電力供給に関係した装置などで絶縁ガスとして利用されてきました。六フッ化硫黄を製造する際や、それを利用している装置が修理されたり廃棄されたりする際に、六フッ化硫黄が大気中に漏れ出ていると考えられています。現在の大気中の濃度はおよそ6ppt(pptは1兆分の1を表します)と極めて微量ですが、最近のわずか10年間の間におよそ2倍に増えたとされています。今後もこのような増加が続いた場合、地球温暖化に対する寄与が無視できないほど大きくなる可能性があります。……

六フッ化硫黄の最大の特徴は、大気中で安定であるということです。対流圏や成層圏の中では、化学反応によって消滅することはほとんどありませんし、海水に溶ける量もわずかです。このように安定であるということは、人間が大気に放出した六フッ化硫黄が、どこにも除去されずに、大気の流れに運ばれて広がってゆくということを意味しています。

 

http://caos.sakura.ne.jp/tgr/observation/sf6

 

caos.sakura.ne.jp

今回のBBC記事では、この物質のこのような用途や性質についてかなりたっぷりと説明した上で、現在それが「汚い秘密 dirty secret」と呼ばれている背景が解説されている。つまり、20世紀の終わりごろから「環境負荷の少ないクリーンな電力」として世界各地で風力発電・ソーラー発電などの導入が進められてきたが、発電の動力は「クリーン」でも、その電力を人々に届けるための送電設備は、二酸化炭素(CO2)とは比べ物にならないほど強力な温室効果を有するSF6を使っている。

というわけで今回実例として見る部分である。

*1:情報があやふやなことが多い「いかがでしたか」ブログの類は、私が見たところではなかったので安心と思ったが、逆に「一般には知られていない」ということで危機感を覚えるべきかもしれない。

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A rather than B が A not B という意味になることがある【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。教科書英語とはちょっと離れた、「実際の英語」の実例と言えるものかもしれない。

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今回の実例は、3月12日、英国下院で、Brexit(英国のEU離脱)に関するテリーザ・メイ首相の合意案について、いわゆる「意味ある採決 meaningful vote」の第2弾が行なわれる日の国会審議を伝えるライヴ・ブログから。

www.theguardian.com

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one of the + 複数形、倒置【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。ここに出てくる「倒置」は、英作文などで自分で書けるようにしておく必要性は必ずしもないが、読解で出てきたときには理解できるようにしておきたいし、整序英作文など文法問題では問われがちなので、受験生には復習必須の項目である。

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今回の実例は、2月12日のアイリッシュ・タイムズの論説記事から。書いたのは同紙で長く執筆しているベテラン・ジャーナリストのフィンタン・オトゥールで、トピックは英国のEU離脱関連。

アイルランド島北部の6州が「北アイルランド」として「英国の一部」ということになっているため、EU離脱後の英国にとって唯一のEU加盟国との間の陸上のボーダー(境界線、国境)を、アイルランドが有するということになる。その点が問題の核になって、テリーザ・メイ首相がEUとの間で合意を取り付けても英国会での承認が得られないという事態がもう何か月も続いており、とうとう予定されている離脱日まで2週間、というところまで来てしまったのが3月半ばの状況だが、この論説記事が書かれたのはその1ヶ月前である。といっても、状況が大きく違っているわけではないのだが。

www.irishtimes.com

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no other ~, 「総称」のthe, grow used to ~【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。大学入試(特に国公立の二次試験や中堅以上の私大)でざっと読んで内容を把握する力を問う設問で使われる長文に、こんな感じの文が多いなあという印象である。

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今回の実例は、この冬、ロシアで人が暮らす区域にシロクマの大群が出現したことを受けて、英ガーディアンの環境部門エディター、ジョナサン・ワッツさんの分析記事から。

「シロクマの侵略」と伝えられたこの件、下記の映像(カナダのCBCニュース)がよく整理されている。YouTubeのプレイヤーで字幕を表示させることができるので、英語の聞き取りに不安がある人も見てみていただきたい。

 

 

さて、記事はこちら。

www.theguardian.com

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冠詞: aやtheにも意味・機能がある (a UK Prime Minister, the UK Prime Minister, as Prime Minister)

今回の実例は、a prime minsiter, the prime minister, prime ministerの違いがはっきりわかる(に違いない)報道記事から。

日本語を母語とする人がSNSなどのプロフィールを英語で書いているときに冠詞が抜けていることは珍しくない。"I am designer living in Tokyo, Japan" などといった例をよく目にするが*1、正しくは "I am a designer living in Tokyo, Japan" である。

こういったことは「細かいこと」で「どうでもいい」と嫌われがちだが、少なくとも、「意味がわかればいいんだよ」じゃなくてまともに通用する英語が使えるようにしたいならば、「どうでもいい」と流すべきではない。

ていうかそもそも最初に "I am a student" ってaを入れることを習うはず。その基本文をコピーして自分で応用すれば(つまり、"I am a student" → "I am a footballer", "He is a pianist", "Jane was a teacher", "You will be a good writer" などというように単語を入れ替えて短文を作る練習をして、形を頭にたたきこめば)、aを落としてしまうなどということは生じないはずなのだが。

閑話休題。まずは基本中の基本を確認しておこう。

文法用語で、aは《不定冠詞》、theは《定冠詞》という。これらの文法用語は別に覚えなくても困らないかもしれないが、覚えておいたほうが便利だ。

不定冠詞》は「不定」、つまり「特定されていない」ものについて用いる。"Do you have a pen?" といえば「(どんなのでもいいから)ペン、持ってる?」の意味だ。

一方《定冠詞》は「特定の」ものについて用いる。"Do you have the pen?" といえば「(あの)ペン、持ってる?」だ。つまり「例のペン」とか「昨日一緒に100均に行ったときに買ったあのペン」とか、「こないだ僕が借りたときにこれいいねって言ったあのペン」とか。

同様に、"I saw a cat." といえば、単に「(1匹の)猫を見た」ということ。これは実際には「猫がいたよ」的な意味で用いられる文だ。

一方、"I saw the cat." ならば、「特定の(その)猫を見た」ということ。例えば道端で「猫を探しています」という貼り紙を見て、「この猫なら見かけたよ」と言うときはこう言う。

いずれにせよ、英語では「冠詞なしで(可算名詞の)単数形を用いる」ということは、基本的にしない(例外はあり、今回はその例外の話も下の方でするつもり)。つまり、"I am student" とか "Do you have pen?" とか "I saw cat" とは言わない。必ず "I am a[the] student", "Do you have a[the] pen?", "I saw a[the] cat" など、可算名詞の単数形は冠詞とセットにして使うのが大原則だ。

最小限の基本確認はこんなところである。「冠詞」というものは日本語にはないし、英語の不定冠詞と定冠詞については説明しようと思ったらいくらでも説明でき、実際それだけで本が書けてしまうくらいなので、確認したい人は大型書店の英語本のコーナーを見てみてほしいと思う。個人的には下記の正保先生の本がおすすめ。例文がUK寄りでおもしろいし。 

英語の冠詞がわかる本[改訂版]

英語の冠詞がわかる本[改訂版]

 

 

というところで、今回の記事はこちら(米CNN, 9月6日): 

edition.cnn.com

*1:この例はどこかからの引用ではなく、万が一誰かのプロフと一致していても、それは偶然であるということをお断りしておく。

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of + 抽象名詞、比較級の構文、代名詞that、完了不定詞など (英国会の閉鎖は法律違反とのスコットランド裁判所の判断の持つ意味)

今回の実例は、FT(フィナンシャル・タイムズ)に寄稿された文章を、寄稿したご本人がキャプチャ画像で紹介している一節から。

寄稿された文章の背景は、私が解説しようとするととても長くなって時間も食うので、時事通信の下記記事をご参照のほど。見出しの意味がわかりづらいのだが、「スコットランドの裁判所が、英議会閉鎖は違法と判断した。野党議員の提訴を受けたもので、野党議員の主張を支持したことになる。敗けた政府は上訴した」ということである。

www.jiji.com

今回の実例として見る文章は、この判決についての法律解説である。書いたのはデイヴィッド・アレン・グリーンさん。法律家で、弁護士として活動していたときには、サイモン・シンを英カイロプラクティック協会が名誉棄損で訴えた裁判で、被告となったシンの側にプロ・ボノ(社会のために無報酬で業務を行うこと)で参加し、最終的には訴えた側からの訴訟取り下げという結果を勝ち取っている(この裁判についてはシンの著書を翻訳された青木薫さんによる解説に詳しい)。現在は法律解説を専門とする著述家として活動している。

そのグリーンさんが、上記のスコットランド裁判所の判断について、「スコットランドの判事たちは、国会休止は法に反するものであり、ジョンソン首相は女王をミスリードした(欺いた)と判断した」と端的にまとめた一文を添えてTwitterにフィードしたのが下記、FTへの寄稿の一節のキャプチャ画像である。

f:id:nofrills:20190912110437j:plain

2019年9月11日、Twitter @davidallengreen

 

FTは基本的にサブスクライブしていないと記事が読めないのだが、記事はこちら: 

https://www.ft.com/content/12097e7c-d47f-11e9-8367-807ebd53ab77

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【ボキャビル】that being said (独立分詞構文), 《数》の表現を含む英文読解 (ジョン・ボルトンの更迭/辞任)

今回の実例は、11日未明(日本時間)のびっくりニュースから。

つまり、この件。ジョン・ボルトンがトランプ政権を追われた: 

 すぐさま、原油価格が断崖絶壁とアメリカからの報告: 

トランプ政権側は「クビにした」ということを言っているが、ボルトン自身は「自分が申し出た」と言っており: 

 実際どうなのかは微妙なところで、私がほぼずっと見ている英語媒体の2つも、BBCは「ボルトン自身が申し出て辞任した」説をとり、ガーディアンは「トランプがクビにした」説を取っている。

というわけで、今回の実例はそのガーディアンlive blogから、英国時間で18:47のエントリより(日本との時差は8時間):

https://www.theguardian.com/us-news/live/2019/sep/10/trump-news-today-latest-economy-north-carolina-republicans-live?page=with:block-5d77e0c38f08143ee1ae3ca2#block-5d77e0c38f08143ee1ae3ca2

※Live blogは刻々と見出し(ヘッドライン)が変わってしまい、いつもの形式で「ヘッドラインとサムネ画像」が表示されるようにしてここに埋め込むと、ぱっと見、わけがわからなくなってしまうため、URLだけ貼り付けておきます。上記URLをクリックして記事、というかエントリをご確認ください。

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長い文、《譲歩》の接続詞、等位接続詞、挿入、continue to do ~, avoid -ingなど(MITメディアラボが性犯罪者ジェフリー・エプスタインの金を受け取っていた件)

今回の実例は、The New Yorkerの調査報道記事から。

The New Yorkerは1925年の総合雑誌で、優美なアールデコ調のロゴは創刊からのもの。日本語圏では小説や随筆など文学分野のコンテンツで広く知られているかもしれないが、ファクトチェックが厳しいことで有名で、調査報道での存在感が大きな媒体でもある。近いところでは#MeTooの大きなうねりを引き起こした映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインに対する告発報道を最初にやったのが、新聞のThe New York Timesと、この雑誌 (2017年10月23日号) だった。 両媒体はこの報道でピュリッツァー賞を受賞した。

The New Yorker [US] October 23 2017 (単号)

The New Yorker [US] October 23 2017 (単号)

 

そのワインスタイン告発の取材をし、記事を書いたのが、弁護士の資格を持つジャーナリストのローナン・ファローだが、その彼が2019年9月に同じ媒体で書いた記事が今回の題材である。

この記事がきっかけとなって起きたことは、日本語圏のメディアでも、一般紙およびIT系のメディアで報じられている。例えば下記: 

www.itmedia.co.jp

www.asahi.com

朝日新聞のこの見出しは、文字数の制限があるとはいえ、非常にミスリーディングなので注意が必要。「MIT」(マサチューセッツ工科大学)ではなくMITの中の研究機関「MITメディアラボ」だし、「性的虐待疑惑の富豪」ではなく「性犯罪で有罪判決を受けた者 (convicted sex offender)」である(「疑惑」の段階ではなく、フロリダ州で有罪判決を受けたあとでの資金受領が問題となっている。なお、当人は今年2019年8月にニューヨークの拘置施設で自殺したが、これはフロリダ州で司法取引の末に有罪となった件とは別に、連邦法で人身売買の容疑で逮捕され、裁判を待っている間のことだった)。

 

というわけで、何があったのかは日本語報道記事で確認できるとして、今回はファローの記事そのものを見てみよう*1。記事はこちら: 

www.newyorker.com

*1:なお、The New Yorkerは、読者登録していない場合は1か月に読める記事の上限が決まっているので、すでにそれを超えてしまっている人がもしいらしたらごめんなさい。

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「万が一」を表すshould, if節のない仮定法, 倒置, 関係代名詞(主格), 【ボキャビル】come in handy(防災バッグの勧め……なぜか英国で)

f:id:nofrills:20190909044041p:plain今回の実例はTwitterから。

9月9日未明、台風15号 (Typhoon Faxai) のくっきりした目が東京湾の上を通っていて、都内のうちのあたりも激しい風雨に見舞われていることが音だけで確認できていたころ(台風の西側なので予想したほどではなかったが、東側は大変だったと思う)、ふとTwitterの画面に目をやると、英国で #GrabBagがTrendsに入っていた(右のキャプチャ参照)。

GrabBagという表現は初めて見たが、意味を推測するのは簡単だ。grabは動詞で「~をつかむ」の意味だから、grab bagは「つかんで持って出るバッグ」、つまり「緊急時に際して避難するときに持って出るバッグ」で、日本語でいえば「防災バッグ」だろう。また、ハッシュタグの下にTwitterでつけている短い解説文に、"Police advice about having an emergency bag prepared has folks worried" とあり、grab bagはemergency bagの言い換え表現だとわかる。

というわけで今回はこのハッシュタグでのツイートからケンブリッジシャーの消防救急当局のもの: 

 

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複合関係代名詞、時を表す副詞節【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。トピックは科学技術だが、将来、いわゆる「理系」の学部に進んで英語での論文や報道記事を読むときにも必ず遭遇するような基本的な文法事項を取り上げているので、確認のつもりでご一読いただければと思う。

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今回の実例は、日本の「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ」への着陸に成功した、というニュースから。

はやぶさ2」の着陸成功は、英語圏でもかなり大きなニュースになっていて、大手メディア各社に記事が出ていたから、興味のある人は探してみるとよいだろう(英語圏の報道機関は、日本のNHKなどと違って、ネット上にアップした記事を消さないのが普通なので、ずっと前の記事でも検索できるし)。ここでは私がたまたま読んでいたというだけの理由で、ガーディアンの記事を見る。

www.theguardian.com

 

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仮定法過去 (if only ~) 【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。文法項目もだが、それより記事自体が本当に読む価値のある文章なので、ぜひ全文をお読みいただきたいと思う。(たぶん2019年の今でもなお、コロンバイン高校銃乱射事件といえば「トレンチコート・マフィア」だと思っている人はかなり多くいるだろうし、そういう説明もかなり多くあるだろうが、それは初期報道での不確かな情報が拡散されて定着してしまったもので、事実とは異なっている。)

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今回の実例は、2018年2月14日にアメリカで発生した高校での銃撃事件から1年を迎える前にガーディアンに出た「コロンバインからパークランドまで: 大量銃撃について私たちはいかに誤った解釈をしていたか」という文章から。

www.theguardian.com

 

この文章の筆者はジャーナリストのDave Cullen (デイヴ・カリン)。1999年4月20日コロンバイン高校銃乱射事件を最初に取材したジャーナリストたちの一人で、事実確認より速報性を重視したことが原因で生じた誤報(「トレンチコート・マフィア」説)の当事者の一人。彼はその誤報の経験を踏まえ、非常に丁寧な取材を行なった結果を一冊の本としてまとめた。それが事件から10年となる2009年に出版され、高く評価されたColumbineという本(下記)である。日本語訳も出ている(下記)。 

Columbine (English Edition)

Columbine (English Edition)

 

 

コロンバイン銃乱射事件の真実

コロンバイン銃乱射事件の真実

 

 

さて、今回見るカリンの文章は長い文章だが、実例は、コロンバイン高校事件の犯人についての「誤った物語」(英語でいうmyth, つまり「神話」)と、それを信じた上でコロンバイン高校事件の犯人を英雄視し、自身も大量銃撃犯となった者たちについて述べた箇所から。

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SVOCの文型 (call, label) , labelの過去形・過去分詞形の英米差(サンフランシスコ市、NRAを「国内テロ組織」と位置づけ)

今回の実例は、米国から、ちょっとびっくりするようなニュースより。

報道自体は、BBC Newsの日本語版が日本語記事を出しているので、それを参照していただくのがよいだろう。

www.bbc.com

というわけで、今回は前置きなしでいきなり文法解説に入る。記事はこちら: 

www.bbc.com

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Why don't we do ~?, tooを強める副詞のfar, 等位接続詞andの接続(ジェレミー・クラークソンの箴言?)

今回の実例は、普段は私の見てる画面には流れてこない人のツイートから。

私のTwitterは、英語圏(主に英国とアイルランド)の報道機関やジャーナリスト・コラムニスト、研究者、NGOや国連専門機関などのフィードが大半を占めている。フォローしている報道機関などは政治的には左派で、英国の極右系アカウントはミュートないしブロックしてあり、デイリー・メイルやザ・サン、デイリー・エクスプレスなど右派煽動・デマゴーグ系報道機関のフィードは、特にミュートなどの機能を使わなくても、あまり視界に入ってこない(実際、デイリー・エクスプレスのフィードなどは、ワード検索したときにしか目にしない)。これが「フィルターバブル」と言われるもので、わかりやすく図式的に言えば、ガーディアンをフォローしてガーディアンで書いてるジャーナリストやコラムニストのツイートによく反応する私の視界には、対極にあるデイリー・メイルのフォロワーやそこで書いてるジャーナリストたちの言ってることはほとんど流入してこないわけだ。「フィルターバブル」について、詳細は下記書籍を参照のこと。 

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

 

 

さて、このような事情で、Twitterを使っていて何十万人単位のフォロワーを持つ著名人・芸能人は英語圏にもそりゃもう大勢いるが、私がフォローしているような人々とは対極に位置する人たちに好まれる著名人のフィードは、私の見ているところには現れない。ジェレミー・クラークソンはそういう著名人のひとりだ*1

私が車に興味があったり、『トップ・ギア』をよく見ていたりすれば、私がフォローしていたりよくインタラクトしたりしているユーザー経由で、クラークソンのフィードが表示されることもあったのだろうが、あいにく車には全然興味がないし『トップ・ギア』も年末年始の夜中にまとめて放映しているのをダラダラ見たりしたことがある程度で(車運転しなくてもそれなりにおもしろく見れたのはさすがの番組作りだと思ったけど)、つまりどこをどうたどっても接点がない。そういう人のフィードは、どんなに著名な人のであれどんなに話題になっているツイートであれ、Twitterはシステム上、基本、表示しない。私がフォローしている人たちが大勢フォローしていようとも*2、誰かが特にリツイートでもしない限りは、私の見ている画面には彼の発言は表示されない。

そして実際、ジェレミー・クラークソンのツイートを、私がフォローしている誰かがリツイートするということは、これまでなかった。

 

だから昨日、英国会下院ですごいことになったあとゲラゲラ笑いながらふと見た画面に流れてきていたおもしろい発言に「ははは」と笑ってから発言主を確かめたとき、文字通り、二度見してしまった。 

「ジェレミー・クラークソン」って、あのジェレミー・クラークソン?

Verifiedのバッジもついてるし、 そうなんだろうな。

この人、Brexit支持じゃないのかな? と思ってさくっとウィキペディアを見てみると、Brexit不支持で、10年くらいまでよくいた右翼のEU強化論者のようだ*3

ともあれ、本題に入ろう。

*1:この人はルパート・マードックのNews Corp傘下の新聞でコラムを書いたりもしているが、読めば読むほど言語的にバカになる系の文章なのでおすすめしない。「あれかこれか」の単純化が彼の持ち味だが、元からニュアンスが体感できていない英語学習者にとっては、筆者の意図していないような害が大きい。

*2:今見たら私がフォローしている2166人中90人がクラークソンをフォローしていた。案外多い。

*3:'Clarkson does not support Brexit, stating that while the European Union has its problems, Britain would not have any influence over the EU, should it leave the Union. He envisions the European Union being turned into a US-like "United States of Europe", with one army, one currency, and one unifying set of values.' --- Wikipedia: Jeremy Clarkson

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