Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

素早く読んで内容を把握する練習に好適な文(シアトル・マリナーズのステートメント)、「~の間」を表す表現、和製英語の表現の表し方

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今回の実例は、イチロー選手の引退を告知するシアトル・マリナーズの広報の文章。

MLB開幕戦のオークランド・アスレチックスシアトル・マリナーズの第2戦が行われる3月21日の昼間、日本語の報道で「イチロー選手が第一線を退く意向を球団に伝えた」というニュースが流れた。英語ではそれは「第一線を退く」という遠回しな表現ではなく、ド直球で "retire" と伝えられた(NHK共同通信のような日本の報道機関でも、英語では "retire" という単語を使っていた)。 

イチロー選手は8回に交代となり、現役生活に別れを告げた。ダグアウトに戻った彼をチームの皆がハグで迎えた。

そしてマリナーズのブログに、チーム広報からのステートメント掲示された。

marinersblog.mlblogs.com

最初の方は記者会見でのご本人の発言の一部を英訳して掲載しているが、そのあとはイチロー選手がキャリアを通じて残した記録が淡々と並べられたような文面で、分量はあるが英語として難しくはないので、素早く読んで内容を把握する練習に好適である。

マリナーズでは、 "Ichiro Suzuki Announces His Retirement from Major League Baseball" と述べているが、本人が会見で日本球界に戻るということもないと述べており、「MLBからの引退」だけではなく「完全に競技からの引退」となる。

 

マリナーズのブログの見出しの下にあるリード文は、"Future Hall of Famer had 19 year Major League career, including 14 with Seattle" で、「将来は野球の殿堂入りするこの選手は、MLBで19年を過ごした。うち14年がシアトルだった」という意味。

 

さて、実例として見るのは、このステートメントの最後のパラグラフ。渡米する前のイチロー選手のキャリアをまとめた部分だ。

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2019年3月21日、Mariners Blog

During his career with Orix, Ichiro, a native of Kasugai, Aichi prefecture, Japan, led the Pacific League in batting average for a Japanese-record seven consecutive seasons. He was a 3-time league MVP and was named to the Pacific League’s “Best Nine” for seven consecutive years while also earning seven consecutive Gold Gloves. He led Japan to World Baseball Classic Titles in 2006 and 2009. 

 「~の間」を表す表現が立て続けに出てきている。

まず最初のduringは前置詞で、直後には名詞を取る。

  During my stay in London, I visited the British Museum. 

  (ロンドン滞在中に、私は大英博物館に行った)

 

これは、接続詞のwhileを用いた複文に書き換えることも可能である(接続詞なので、すぐ後にはS+Vの形を置くことは、言うまでもない)。

  While I was staying in London, I visited the British Museum. 

 

一方で、副詞節においては、主節と主語が同じ場合は、《主語+be動詞》は省略できるので、すぐ上の例文は次のように表すこともできる。

  While staying in London, I visited to the British Museum. 

 

その形のwhileが出てくるのが、上記の実例で2番目に太字にした箇所だ。

He was a 3-time league MVP and was named to the Pacific League’s “Best Nine” for seven consecutive years while also earning seven consecutive Gold Gloves.

だがここは、whileのあとにhe wasが省略されているというよりも、分詞構文に接続詞がついていると考えたほうがよいだろう。

分詞構文は、通例、接続詞を省略して節の動詞を現在分詞にして作る。上の「ロンドン滞在中に大英博物館に行った」の例文なら、次のようになる。

  Staying in London, I visited the British Museum. 

だがこれだけでは文意がいまいち不明確だ。「ロンドンに滞在していたので」などという意味にも解釈できるからである。そこで「滞在していた間に」と明確に示したいときは、接続詞のwhileを残しておく、ということが行われる。

  While staying in London, I visited the British Museum. 

実例の "while also earning" の部分は、この構造になっている。文意は、「彼は3度リーグ最優秀選手に選出され、7年連続でパ・リーグの『ベストナイン』に選ばれ、同時に7年連続でゴールデングラブ賞を受賞した」ということである。

 

なお、「ベストナイン」が “Best Nine” と大文字始めの上に引用符付きで表記されているのは、それが日本語(というか和製英語)だからである。英語では、大文字で始めただけでも固有名詞だということは了解されるはずだが、「英語の単語ではない」「現地の表現のままである」ことを明示するために引用符が用いられているわけだ。

日本の野球の「ベストナイン」は、英語ではBest Nine Awardと言うことになっているそうだが、今回のマリナーズのブログ担当者はそれではわかりづらいと考えて、引用符付きで表記したのだろう。

 

試合後のイチロー選手の記者会見は、Yahoo! Japanでストリームされていたのを途中からだが見ていたが、とても言葉が明確で、いわゆる「言葉のキャッチボール」がうまくできる人だという認識を新たにした。語られている内容も深み・重みがあった。現役を引退したあとも野球との関係は続いていくだろうし、日本とアメリカの架け橋としても活躍されることだろう。

長い間、お疲れさまでした。

 


【全編】イチローが引退会見「後悔などあろうはずがない」(2019年3月21日)

 

 

英文法解説

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