Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

so ~ that ... 構文, 英国内の言語的多様性, さまざまな貼り紙の英語(欧州議会議員選挙での投票所 #DogsAtPollingStations )

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。

今回の実例は、5月23日、欧州議会議員選挙投票日のTwitterから。

今年の欧州議会議員選挙はEU加盟各国で23日から26日にかけて投票が行われ、26日の投票締め切りをもって開票が始まった。投票日が早かった英国では26日深夜(日本時間では27日朝6時ごろ)まで報道に制限が課せられており、出口調査結果も出されていなかったが、現地で日付が変わるころ(日本時間27日朝8時ごろ)にはブリテンの大方の結果は出ていた。この選挙に興味がある方は、ガーディアンの開票速報live blogが要領よくまとめられていると思うので、そちらをご参照のほど。

今回、当ブログで参照するのは、選挙そのものについての記事ではなく、選挙に付随的に発生するTwitterハッシュタグ。これが、ツイート本文での言語情報は少ないのだが、写真からいろいろなことを読み取るのが楽しいという人にはめっぽう楽しいはずだ。

まずはこちら: 

ツイート本文の: 

 He was so well behaved he was allowed in.

ここは《so ~ that ... 構文》が使われているが、thatが省略されている。自分で書くときはthatを省略せずに書いたほうが推敲の際なども読みやすくて安心できるのだが、普段英語で報道記事などを読んでいると、このようにthatを省略した形を非常に頻繁に見かける。文意は「彼はとてもお行儀よくしていたので、(投票所の)中に入ることを許された」。

 

本文のあとにあるハッシュタグ、#dogsatpollingstations (= Dogs at Polling Stations) は、今では英国で選挙というと必ずTrendsに入るほど恒例となったハッシュタグで、元々は2015年の選挙のときに自然発生的にTwitterで始まったものだ。下記ページに記録してあるので、ご一読いただきたい。

matome.naver.jp

 

その後、毎年選挙のたびにこのハッシュタグが使われ、今では選挙投票日前日になると地方自治体のアカウントや政党支部のアカウントのようなところが「明日は #DogsAtPollingStations の日ですね」とツイートするほどに定着した。

今年、2019年は5月の第1木曜に地方選挙が行われていて、そのときもこのハッシュタグがTrendsに入っていたのだが、その3週間後の欧州議会選挙でも同じようにこのハッシュタグが活発だった。

 

というわけで、少し写真を見てみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

このように投票所前に貼り紙で "POLLING STATION" とだけ表示されているのは、イングランド北アイルランドでの写真である。

 

スコットランドでは「投票所」のことは "POLLING PLACE" と言う。

 

 

このツイートは、Brexit Party(「ブレグジット党」、UKIPを離党したナイジェル・ファラージが今回立ち上げた新党)をBiscuit Party(「ビスケットを食べる会」)と聞き間違えた犬が「ビスケットないの? うそだったの?」と言っている、というネタ。飼い主さんが「そうだよ、うそだったんだよ」と答えているのも込みで、完成度が高い。

 Archieという名前の犬。Archieといえば先日生まれたハリー王子とメーガンさんの赤ちゃんがそう名付けられているが、スコットランドの名前(アーチボルドの愛称形)である。pawliticsはpoliticsのダジャレ (paw = 「前足」)。

 

 

一方、ウェールズ公用語ウェールズ語と英語なので、上の段にウェールズ語、下に英語という形で2通りの「投票所」の表記がなされている。

 

 

 

 

さて、イングランドに戻るが、「投票所がオープンしている時間」は "OPENING TIMES" と表現されていることが貼り紙で確認できる。

「投票所のオープン時間」の表示、ウェールズ編: 

 

また、車椅子の人用の出入り口は "DISABLED ACCESS" と表されている。このまま読むと「ableでない経路」とも読めてしまうが、ピクトグラムを見れば英語の解釈に不安がある人もわかるだろう。貼り紙用にAccess for the Disabledを簡略化すると "Disabled Access" になる、というのもなかなかおもしろい。

下記は同じく「車椅子の方の入り口」の表示、ウェールズ編: 

投票所の中には今は原則として犬は入れないようだが(2015年にハッシュタグが始まったときは、投票所の中に犬を連れて入っている人の写真が報道写真で流れていたが)、もちろん盲導犬介助犬は別である。

※上記、写真の全体像を見るには写真をクリック/タップ。英国でこういうハーネスをした犬がいたら盲導犬介助犬なので、なでなでしようとしたりしないように。

 

 

日本語で「この駐車場で盗難、破損などがあっても、当方では一切責任を負いません」というような貼り紙の文言を英語にしたいとき、機械翻訳にかけて意味不明な英文もどきを産出するのではなく、下記の写真にある掲示を思い浮かべていただきたい。あるいは映画『ロッキー・ホラー・ショウ』でもいい。「当方では責任を負いません」は、"At your own risk" という表現でよいのだ。

 

見たまま書くだけ!宣伝・貼り紙・注意書き6カ国語文例集

見たまま書くだけ!宣伝・貼り紙・注意書き6カ国語文例集

 

 

下記は飼い主と犬が同じ顔をしていておもしろいが、ツイート本文は1940年代の音楽家の用いた文言をベースにしたものだ。これと同じ元ネタに基づいた表現を日本でやったらネットでばかばかしい大騒ぎが起きたことがあるのだが、英語圏ではもちろん何も騒動になったりはしていない。少なくとも今は。(そのうちに「殺害予告だ」ときぃきぃ喚き出す人も出てくるだろう。)

en.wikipedia.org

 

こちらも飼い主と犬が何だか似ている。ロンドンのカーン市長。

 

この子、Bowieっていうのか……ロケーションのせいだろうけど、何かに似てる。

 

 

下記ツイートの "dapper" は「おしゃれな、粋な」という意味の形容詞だが、独特の雰囲気のある言葉で、この写真の男性と犬はその点についてとても雄弁だと思う。 

 

あと、最近「投票所の犬たち」で柴犬を見ることも多くなってきた。下記ではちゃんと "doge" と呼んでいて、Wow. Many nice. Very humour. Such perfect. と思う。

 

 

もちろん、犬を投票所に連れて行くことにはちょっとした危険も伴う。建物の外につないでおくと犬泥棒に連れていかれてしまうかもしれないので、2人で行って交替で投票するか、犬をつないでおく間は誰かに見ていてもらうなどしなければならない。また、投票に案外時間がかかってしまった場合、車の中に置いておいたりすると犬が熱中症になってしまうかもしれない(英国で5月の選挙の時期にそこまで暑くなることはほとんどないのだが)。そういった点について、Dogs Trustという犬の保護団体が注意喚起するツイートをしている。「動物が水を飲むボウルを設置してもらうよう、投票所に要請してみてください」など、実に細やかな心遣いである。

 

 

すごいどうでもいいかもしれないし、英語とは関係ないんだけど、私、こういう「英国式ガムテープの貼り方」 見るの、好き。バラバラだったりクチャっとしてたり。2つ目のなんて、ガムテープとダックスフントが調和していてほとんど美しさを感じるほどだ。

こんなくしゃくしゃの紙を貼りづらそうな場所に毎度毎度選挙のたびに貼るより、しっかりした看板的なものを作ったほうが楽なんじゃないのかなと思うけど。下記のような。

 下記の看板はかなり古そう。フォントが。

 自治体が看板を用意しているところもある。Tower Hamletsはロンドンの区の1つ(ロンドン塔のあたり)。

 

「犬連れて投票に行ってきたんだけど、スマホを持っていくのを忘れたので、こちらが投票所から帰ってきた犬になります」といううっかりさん。

 

あと「うちには犬はいないので、僕が犬になってみました」という人がいたりして: 

 「そりゃヤギになろうって人も出てくるよね……」と思わずにはいられない。

 

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

 

 

最後にフォトジェニックな子: 

 

 

 

 【おまけ】

アイルランド。英語とアイルランド語の二段表記で、アイルランド語の表記には2通りあるみたい。

 

 

 

 

 

Urban Voices: Accent Studies in the British Isles (English Edition)

Urban Voices: Accent Studies in the British Isles (English Edition)

 
ウエールズ語の基本

ウエールズ語の基本

 
英語の帝国 ある島国の言語の1500年史 (講談社選書メチエ)

英語の帝国 ある島国の言語の1500年史 (講談社選書メチエ)

 

 

※サムネ用写真 via 

https://twitter.com/suninp/status/1131442602115338240

f:id:nofrills:20190527102236j:plain

https://twitter.com/suninp/status/1131442602115338240

 

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。