Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【ボキャビル】「ほとんどの」の表し方, 前置詞のas, different to ~, 等位接続詞and, やや長い文, make use of ~, など(タバコに関するWHO報告書)

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今回も前回と同じく、世界保健機構 (WHO) が出したタバコに関する報告書から。

以下、前置きとして前回と同じ文面を少々……

この報告書は、タバコを人間の生活からなくしていこうという方向の動きがどのくらい進んでいるかを世界規模で調査してまとめられたもので、WHOのサイトで全文や全体要旨、付属データなどがすべて公開されている。

www.who.int

報告書(全文)は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語国連公用語6言語にポルトガル語*1を加えた7言語で公開されている。当ブログで参照するのはもちろん英語で、下記URLからPDFファイルが誰でも自由にダウンロードできる。ファイルサイズがわりと大きい(7MB近くある)ので注意。 

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/326043/9789241516204-eng.pdf

 

この報告書のなかで、「加熱式たばこ」に関する部分が、NHKの報道記事になっている。(リンク切れになっている場合はこちらからどうぞ。)

www3.nhk.or.jp

 

今回実例として見るのはその「加熱式たばこ (Heated tobacco products)」に関する部分から、PDFで前回見たところの次、報告書の54ページだ。

 

f:id:nofrills:20190730020449p:plain

この最初のパラグラフ: 

Most marketing of HTPs deliberately tries to position them as different to cigarettes. They are promoted as “smoke-free” through claims that the aerosols they produce are not smoke and that HTPs do not produce tar. This means they are often marketed as a more environmentally friendly and socially acceptable alternative to cigarettes. In addition, HTPs are extensively promoted as modern, hightech and high-end lifestyle products, with minimalist designs, a presence in flagship stores, and high-profile product launches that portray them as attractive and harmless luxury consumer products. All of these efforts make use of social positioning techniques that were previously used to market cigarettes, and which are particularly effective in targeting young people.

項目の目次:  

 

「ほとんどの」の表し方

まず、最初のmostは「ほとんどの」という意味の形容詞だ。形容詞だから、後ろに続くのは名詞である。

この「ほとんどの~」とか「ほとんど~」の表現は、うろ覚えのままになっている人が非常に多い項目で、大学受験生の英作文練習答案でも減点しなければならなくなることがとても多い。一度スッキリと整理して、しっかり覚えておく必要がある。

「ほとんどの~」は形容詞で、直後に名詞を取る表現だ。例えば「ほとんどのボトルが空だった」のように。

  Most bottles were empty. 

これとほぼ同じ意味を、次のように表すこともできる。このMostは代名詞。

  Most of the bottles were empty. 

 

一方、「ほとんど~」は形容詞や動詞を修飾する表現、つまり副詞だ。例えば「そのボトルはほとんど空だった」のように。このときはmostは使えない。almostを使う。

  The bottle was almost empty

この「ほとんど~」は、「~に極めて近い」の意味で、別の表現をすれば「~しそうになる」とか「~すれすれになる」の意味でも用いられる。

  Dinner is almost ready. 

  (夕食は〔まだ完了はしていないが〕もうすぐ準備ができます)

  I almost cried. 

  (私は〔実際に泣いてはいないが〕泣きそうだった/泣きそうになった)

「ほとんどの~」と「ほとんど~」については、まずは、これらの基本例文をしっかり頭に入れておくことが重要かつ必要である。

 

前置詞のas + 形容詞

Most marketing of HTPs deliberately tries to position them as different to cigarettes.

太字にしたasは《前置詞のas》で、「~として」の意味である。

  He worked as a language teacher in Japan. 

  (彼は日本で語学教師として働いた)

……という説明に「?」と思った人は正しい。ここでは "as different to cigarettes" と、「as + 形容詞」の形になっているからだ。これはどういうことかというと、先行する動詞からのつながりによるものである。

ジーニアス英和辞典』でasの項を参照すると5ページ近くもあってびびるのだが、前置詞のasは最初に配置されているのでそこを見よう。2番目の語義に次のように述べられている。

[思考・判断を表す他動詞と共に]…(である)と、…として《◆(1) 名詞のほか形容詞・状態を表す分詞を従える。…略…》

ここで今回の実例を見ると、"position them as different to cigarettes" となっている。position ~は「~を位置付ける」の意味で、「思考・判断を表す他動詞」のひとつだ(「判断」を表している)。

このasの用法の例文には、下記のようなものがある。これも頭に入れておきたい。

  I consider him as trustworthy. 

  (私は彼を信頼に値すると考えている)

 

また、今見た文の次の文: 

They are promoted as “smoke-free” through claims that the aerosols they produce are not smoke and that HTPs do not produce tar.

このasも、「思考・判断を表す他動詞 + 目的語 + as + 形容詞」の形で用いられている。ただしこちらは受動態だ。

 

different to ~

different(「異なる」)という形容詞は、「~とは」を表すため、fromという前置詞を伴うことが多いが、このfromの代わりにtoやthanが用いられることもある。自分で書くときはdifferent from ~の形を使うように統一しておくのが無難だが、読解に出てきたときはdifferent to ~やdifferent than ~の形を見ても戸惑わないようにしておこう。

  Big cats are different from[to, than] domestic cats. 

  (大型のネコ科の動物は、イエネコとは異なる)

なお、もっと細かいことを言うと、fromの代わりにtoを用いるのはイギリス式、thanを用いるのはアメリカ式である。詳細は下記などを参照。

https://www.dictionary.com/e/different-from-or-different-than/

  

同格のthat

今回の実例の第二文: 

They are promoted as “smoke-free” through claims that the aerosols they produce are not smoke and that HTPs do not produce tar.

太字にしたthatは《同格》のthatで、"claims that S + V" の形で「S+Vという主張」の意味。この《同格のthat》については既に説明しているので、詳細はそちらをご参照のほど。文意は「それらが出すエアロゾルは煙ではないという主張、および加熱式たばこはタールを出さないという主張を通じて、それらは『煙が出ない』として販売促進されている」の意味。

 

前置詞のas + 名詞

その次の文: 

This means they are often marketed as a more environmentally friendly and socially acceptable alternative to cigarettes. 

このasも《前置詞のas》だが、先ほど見たのとは異なり、後続が「冠詞+形容詞+名詞」の形になっている。前置詞のasとしてはこちらのほうが標準的な形だ。

  Roger is known as a superb tennis player

  (ロジャーは非常に優れたテニス・プレイヤーとして知られている)

 

さらにこの次の文も、同じ「前置詞のas+名詞」の形が入っている。  

In addition, HTPs are extensively promoted as modern, hightech and high-end lifestyle products, with minimalist designs, a presence in flagship stores, and high-profile product launches that portray them as attractive and harmless luxury consumer products.

ここでは "modern, hightech and high-end" と《等位接続詞》andでつながれた形容詞3つが、"lifestyle products" という複数形の名詞を修飾しているので不定冠詞がなく、なおかつちょっと長たらしくなっている。

 

さらにいうと、第4文の "portray them as attractive and harmless luxury consumer products" の部分にあるasもこのasで、"attractive and harmless" という形容詞2つが、"luxury consumer products" という名詞を修飾している。

 

訳しづらい前置詞のwith

この文に含まれるwithは、意味としては「~を伴って」だが、そのままだとうまいこと日本語にならない。読んで内容を把握するだけならそこまで考えなくてもよいのだが、こういう文が下線部和訳などで問われたときがなかなか大変だ。特に受験で限られた回答時間内に適した訳語を考えることは、特に「和訳」をほとんどやらなくなっている現在の方針の中で英語を勉強してきた人にとっては、練習を積んでおかないと難しい。下線部和訳が出題される大学を受験する予定の人は、早めに練習を開始しておこう。重要なのは「意味」を変えずに「表現」だけ工夫して自然な日本語にする(「自然な日本語」を優先しすぎて意味を変えてはならない)ということだ。

"modern, hightech and high-end lifestyle products, with minimalist designs, a presence in flagship stores, and high-profile product launches" は、「ミニマリスト的なデザインで、フラッグシップ・ストア(旗艦店)に並べられており、発売時には大々的にプロモーション活動が行われる、現代的でハイテクで高級なライフスタイル・プロダクト」といったふうに日本語にできるだろう(カタカナ多すぎだが)。

 

関係代名詞のthat

その次にある "that portray them as attractive and harmless luxury consumer products" のthatは《関係代名詞》(主格)で、先行詞は直前にある "high-profile product launches" である。「それらを魅力的で無害な贅沢な嗜好品(消費財)として描き出す、発売時の派手なプロモーション活動」という意味になる。

今見た第4文は、等位接続詞や関係代名詞でかなり長たらしくなっているが、落ち着いてこのような構造を取ればすんなりと読めるだろう。

 

make use of ~

続いて第5文: 

All of these efforts make use of social positioning techniques that were previously used to market cigarettes, and which are particularly effective in targeting young people.

《make use of ~》は大学受験に際して習う基本熟語のひとつで「~を使用する、~を利用する」の意味。

以前、英語嫌いの受験生に英語を教えていたときに「そういう意味だったら単にuseって言えばよくね?」とか「自分だったらシンプルにuseと言って済ませるので、こんな無駄に長い表現はネイティブもきっと使っていない」とかゴネて、覚えるのを拒否されたことがあるのだが(そうやって拒否している間に覚えてしまえばいいのに)、このように、報告書やプレスリリースのような文章でも実際によく使われるのがこの表現である。ここで単にuseを使ってもよさそうに思われるかもしれないが、それだとどうもしっくりこない。日本語でも「利用する」と「使う」は、「意味」は同じであるにせよ、文にはまるかどうかという点で何か違うのだが、英語でもそれと同じようなことがあるわけだ。

 

関係代名詞

All of these efforts make use of social positioning techniques that were previously used to market cigarettes, and which are particularly effective in targeting young people.

第5文には関係代名詞が2つ用いられている。1つはthatでもう1つはwhich。どちらもthatでもよいし、どちらもwhichでもよいと思うのだが、ここはこの文章を書いた人の判断だろう。特に文法的にどうということはない。

ここで注目すべき点があるとしたら《時制》で、「以前、紙巻きたばこを宣伝するために用いられていたテクニック」のほうは過去形のwere, 「特に若い人々をターゲットとするうえで効果的であるテクニック」のほうは現在形のareが用いられているということ。後者は昔も今も言えてる一般論なので、(過去形ではなく)現在形を使っているということで納得できよう。

 

以上、WHOが「加熱式たばこ (HTP)」について、「何やら新規でオシャレで健康に害のない新しいものとして売り出されているが、要するに中身はタバコなので、タバコとして規制すべき」との見解を示した報告書の一節をみてきた。

前回も述べたが、「加熱式たばこ」と「電子たばこ (ENDS)」は別で、WHOのこの報告書でも別に扱われている。「電子たばこ」についてはPDFでこのあとにまとめられているので、関心がある方はそちらを参照されたい。

 

なお、たばこ産業の広告宣伝を扱った、Thank You For Smokingという映画がある。邦題はなぜかForを抜かして「サンキュー・スモーキング」と意味不明な文字列になっているのだが(映画配給業者は何でこういうことするんだろうね)、元ネタは「喫煙はご遠慮ください」という標識などにある "Thank you for not smoking" という表現だ。とはいえ現代では、大勢の人が利用する施設内では喫煙可能な場所のほうが少ないので "Thank you for not smoking" というフレーズも死語だが……。ともあれ、映画はよくできたコメディ調の作品なので、関心があればぜひ。

 参考書類: 

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

 
Collins Cobuild Advanced Learner's Dictionary: The Source of Authentic English

Collins Cobuild Advanced Learner's Dictionary: The Source of Authentic English

 
徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 
英文法解説

英文法解説

 

 

 

*1:人口の多いブラジルの公用語

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