今回の実例は、サッカーのバロンドールのニュースから。
「バロンドール」はサッカーの最優秀選手に与えられる賞で、サッカーを専門とするジャーナリストたちの投票で決定される。フランスのサッカー専門誌が創設した賞で、名称はフランス語のBallon d'Or(「黄金のボール」の意味)である。
その賞の受賞者が、日本時間で今朝がた、発表された。すでに日本語でも報道が出ている。
こういった報道でよく使われる「史上最多〇度目」の英語での表し方を、今回は見てみよう。記事はこちら:
「史上最多〇度目」は見出しに入っているので、若干「出オチ」感もあるが……
まず、「報道記事の見出しでは、冠詞は省略される」というルールを思い出していただきたい。この記事、見出しと第一文はほぼ同じ文だが、見出しでは冠詞が省略されている。
見出し:
Lionel Messi: Barcelona forward wins Ballon d'Or for record sixth time
本文:
Barcelona forward Lionel Messi has won the Ballon d'Or ... for a record sixth time.
ここで用いられているrecordは、辞書によっては「形容詞」としてエントリーされているかもしれないが、名詞が形容詞的に使われているという例だ。
「名詞が形容詞的に使われている」というのは、英語では非常によくあることで、いちいち気にしないことが多い。例えばcabin attendantのcabinは「旅客機の客室」の意味の名詞だが、「客室(で働く)乗務員」のように、「乗務員」という名詞を修飾する形容詞として用いられている。
今回の実例のrecordもそれと同じ。意味は名詞で「記録」だが、それがこのように形容詞的に使われることで「記録的な」「記録破りの」の意味になる。この場合、不定冠詞のaを伴うことが多い。
a record number of typhoons
(記録破りの数の台風)=「台風の発生件数が史上最多となった」ということを表す
今回の実例では、sixthという序数詞があるので、通常、冠詞は定冠詞のtheがついてくるはずなのだが、この例ではこのような事情で不定冠詞のaが用いられている。
もうひとつ、注目点としては、見出しでのコロン (:) の用法がある。これは報道記事の見出しでざっくりと《トピック》を表す用法。Google Newsを英語で見るなどしてみれば、たくさんの用例に気づくだろう。
Climate change: Experts Warn of Disaster
(気候変動: 専門家ら、大災害を警告)
Brexit: Deadline Extended
(ブレグジット: 期限延長)
参考書: