今回の実例は、新聞に出ている解説記事から。
文脈は下記連ツイ参照。(変換ミスは見逃してください)
しばらく前に英国のニュースで呼んでたこととほぼ同じ。今日もガーディアンにこの話しに関連する記事参照出てる。この次にぶら下げるの https://t.co/tVSXMePbWS
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 7, 2020
How can Coronavirus models get it so wrong? https://t.co/1TS5tXkMuL この記事の文法事項を今日の英語実例ブログで取り上げる予定。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 7, 2020
これもそうだ。UCLのコステロ教授、4月3日: Despite what Matt Hancock says, the government's policy is still herd immunity | Anthony Costello https://t.co/JoMdbCDMwz (最初にherd innunity論に異を唱えた専門家のひとり)
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 8, 2020
コステロ教授による最初の記事、3月15日: https://t.co/tQkxJGBTud The UK’s Covid-19 strategy dangerously leaves too many questions unanswered
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 8, 2020
UCLのコステロ教授のこの指摘のあと、3月17日にImperial Collegeのファーガソン教授らによる研究論文が出て https://t.co/Dl6DmzlvQY 、英国政府は方針を転換した(少なくとも表向きは)https://t.co/upEgw7KSZL 。しかしそこで示された「検査検査検査の方針」はあまり実行されていない。←今ココ
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 8, 2020
記事はこちら:
この「ピークはいつなのか」論は、4月8日現在、米国各州の地域メディアで大きな関心事となっているようで、Google newsで "the peak" あるいは "peaked" で検索すると記事がザクザク出てくる。その辺のことは英語表現集Wikiの方に少し書いたのでそちらもご参照のほど。
english-vocab-covid-19.memo.wiki
english-vocab-covid-19.memo.wiki
記事から:
キャプチャ画像の最初の文:
This is a different type of model from that of the Imperial College London group advising the government, because it will constantly evolve.
《be different from ~》の形は丸暗記しているので何も苦労せずにすっと出てくる人がほとんどだと思うが、このdifferentが名詞を直接修飾する用法(「限定用法」と言う)で使われていると、ちょっと戸惑ってしまうかもしれない。その場合も、このようにfromを使って「~とは」を表す。
My plan is different from yours.
(私の案はあなたがたのとは異なります)
I have a different plan from yours.
(私は、あなたがたとは異なる案を持っています)
文意は、直訳すると、「これは、政府にアドバイスしているインペリアル・コレッジ*1・ロンドンのモデルとは、異なったタイプのモデルである。なぜならそれは常に進化することになっているので」となる。ちょっと意味が分かりづらいかもしれないが、文章全体の中での一文なので、これだけ読んで意味が分からなくても当たり前である。要はdifferentとfromという組み合わせを覚えてほしい。
それより本題はこちら。もう少し先にあるこの文:
Famously, their changed advice persuaded the government to bring in physical distancing guidance, with towns closed for business and people staying home to reduce what, it had suddenly become apparent, would be an unacceptably high death toll.
まず、下線で示した "changed" は過去分詞で、形容詞として機能している。adviceを直接修飾しているわけだ。「彼らの変更されたアドバイス」となる。
次、太字で示した《persuade ~ to do ...》は「~を…するよう説得する」、「説得して~に…させる」。文意は「政府を、フィジカル・ディスタンシングの指針を導入するよう、説得した」。
"physical distancing" は、最近日本語にも「ソーシャル・ディスタンシング」というカタカナ語で入っている social distancingと同意の表現。socialという語の意味が、理系の専門分野から解き放たれて一般社会に出てきたときの意味のズレというか、誤解されやすさゆえに、「象牙の塔」の外で一般人の一般の言語に接する機会が多い学者たちが提唱している、というと分かりやすいだろうか。これも表現集Wikiで取り上げてある。
その先、withから後の部分だが:
..., with towns closed for business and people staying home to reduce what, it had suddenly become apparent, would be an unacceptably high death toll.
おなじみ、《付帯状況のwith》で、《付帯状況のwith+O+過去分詞》と、《付帯状況のwith+O+現在分詞》の欲張りセットみたいな文だ。マニア大喜び。
"closed for business" は一種の成句といえるくらいこの形でよく見るが「休業中の」の意味。「街は休業中の状態で」となる(わかりやすくするために「街の商店などは休業中の状態で」と補ってもよいだろう)。
"people staying home" の部分は「人々は家にとどまっている状態で」。つまりここまでで「街の商店などは休業し、人々は家にとどまったままという状態で」といった意味になる。
下線で示した "to reduce" は《to不定詞の副詞的用法》で、ここは《目的》を表している。「~を減らすために」。
そしてその後の青字で示した部分、"what would be ~" は、《関係代名詞》のwhatを使った表現。これについては以前説明してあるので、そちらを参照されたい。要は、「かっこいい言い方」なので、意味を取るとき、解釈するときは外してしまって構わない。
hoarding-examples.hatenablog.jp
次、朱で示した ", it had suddenly become apparent," は、コンマ2つで挟んだ《挿入》の形で、ここでは節(S+Vの構造)が挿入されている。
逐語訳は極めて難しいが、to以降を意味を取ってなるべく原文に逐語的に日本語にすれば、「死者数が受け入れられないほど多くなるということが突然明らかになっていたのだが、その死者数を減らすために」といった意味になる。
ところで、今回見た中に出てきた "stay home" の表現については、先日Twitterで翻訳者の松丸さとみさんと興味深いやり取りをしたので、それもついでにシェアしておこう。
先日、アメリカで「stay-at-home order」(外出禁止令)が出た時、atを付けるんだ?と違和感があって色々調べてしまったんだけど(文法的にはどちらも間違いではない)、「atありが英式、なしが米式」って説明を見ても腑に落ちなかった。今ロンドンのFMで流れた英政府CMでは「stay home」と言ってた。
— 松丸さとみ (•̀ᴗ•́)و (@sugarbeat_jp) April 5, 2020
つまり言いたいのは、stay homeまたはstay at homeというフレーズの場合、「atありが英式、なしが米式」ではないし、英式ではむしろatなしで使ってるよね、ってこと。(使われる文脈によってhomeにatを付けることで微妙にニュアンスが変わるケースもあるので、その場合はその限りではありません)
— 松丸さとみ (•̀ᴗ•́)و (@sugarbeat_jp) April 5, 2020
"stay (at) home" の件、Twitterで実例を拾ってあります。 https://t.co/SZV9N1WdlE イングランドのサッカークラブの掲出した標語でもatがあるクラブとないクラブがあり、さらに画像ではatがあるのにツイート本文で使っているハッシュタグではatなしといった事例もあります。ご参考までに。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 5, 2020
追記です。集めた事例ではたまたまatありのほうが多く見えていますが、それは本当に「たまたま」だと思います。ただ「atがあるとイギリス人っぽく聞こえる傾向がある」といった程度のことはあるのかもしれません。明確な英米差はなくても、何となく語調でそう聞こえる、程度の何かはあるのかも、です。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) April 5, 2020
松丸さんのお仕事:
英語で読む錦織圭 The Kei Nishikori Story【日英対訳・CD付 】 (IBC対訳ライブラリー)
- 作者:松丸さとみ
- 発売日: 2017/03/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
錦織圭さんについての本は学生さんにお勧めしたことがあります。休校中で困っている高校生(難関大志望)の方々にこのシリーズはお勧めできます。ほかのトピックもいろいろ出てるのでチェックしてみてください。
参考書:
*1:collegeはイギリス英語では「コレッジ」と発音する。potを「パット」ではなく「ポット」と発音するのと同じで、米音と英音の違いである。