このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。"A is to B what C is to D" は一時期「いかにも受験英語な構文」などと言われたが、実際には「生きた英語」の中で、かなりよく使われている。
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今回も前回と同じ、金属のコバルトについての「報道特集」的な記事から。
コバルトがどういう物質であるか(どういうふうに貴重な物質であるか)について、概略は前回書いているので、そちらをご参照のほど。
記事はこちら:
今回実例としてみるのは、キャプチャ画像の2番目のパラグラフ:
More than 60% of global supply comes from the DRC, which is commonly described as being to cobalt what Saudi Arabia is to oil.
まず、太字で示した《more than ~》は「~以上の」、「~より多くの」の意味。これは英語で何らかの情報を得ることが毎日の習慣になっていたら、1日に1度は遭遇すると言っても過言ではないくらい、よく見る熟語である。more thanの後に、この例のように数値が来ることが多いが、数値以外の名詞が来ることもないわけではない。というかかなりよくある。
It takes more than two hours for us to prepare.
(私たちが準備をするためには2時間以上かかります)
It was more than a chance encounter.
(それは単なる偶然の出会いというもの以上だった)
続いて下線で示した部分だが、ここは《A is to B what C is to D》が、前後のつながりで少々わかりづらい形になっている。文法解説のために、ここをわかりやすい形に書き改めてみよう。
the DRC is to cobalt what Saudi Arabia is to oil
《A is to B what C is to D》の構文については、以前解説した。そこから引用すると:
《A is to B what C is to D》は「AのBに対する関係は、CのDに対する関係に等しい」という意味の構文である。
この構文については「日本特有の受験英文法なんだろうと高をくくっていましたが、実際にニュース記事で使われていたので驚かされました」という声も珍しくない。実際「こんな回りくどい表現、ネイティブは使わない」とドヤ顔で語られているのを見たこともあるが、それは嘘だ。これは一種のやや格式張った定型表現で、使いどころを間違えたら浮いてしまうかもしれないが、報道記事というより論説の記事ではけっこうよく見る。
……と、この前出てきたときは「報道記事というより論説の記事で」と述べたのだが、今回のように報道系の記事でも出てこないわけではない。ただし、いわゆる「5W1H」的な事実の報告で用いられるよりは、背景解説のようなところで用いられることのほうが多いだろう。
ともあれ、今回の例:
the DRC is to cobalt what Saudi Arabia is to oil
これは「コバルトにとってのDRCは、石油にとってのサウジアラビアと同様である」という意味。つまりキーとなる産出国、主要産出国である、ということだ。
この記事は全体を通じて非常に興味深いし、英文としても特に難しくはないので、ぜひ、各自で全文を読んでいただきたいと思う。早慶上智受験生なら、わからない単語を調べさえすれば、あとは問題なく読めるようにしておきたいレベルの文章である。