Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【ボキャビル】earlier this year, ~ times the size (台風19号の接近)【再掲】

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このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。単純なように見えて意外と間違えやすい表現なので、しっかり押さえておきたい。

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今回の実例はTwitterより。

今週末、東海・関東を直撃すると見られている台風19号は、国際的にはHagibis(ハギビス)という名称で知られているが*1、これが日本だけでなく英語圏でも注目されている。それはなぜかというと、「地球史上最大のなんちゃら」だからではなく、日本ではラグビーのワールドカップやF1(鈴鹿)といった国際的スポーツ大会が行われているからだ。下記は英国の気象庁のツイートで:

これに次のようなリプライがついている。

 

f:id:nofrills:20191011054811p:plainラグビーのワールドカップについて言うと、この台風のおかげで、週末に予定されているグループステージ(って言わないんだっけ、ラグビーの場合)の最後の試合が実施されるかどうかが危ぶまれていて*2、ことと次第によっては決勝トーナメントの様相が変わってくるし、それに応援・観戦のため世界各国から日本を訪れている人々にとってはかなり深刻な話にもなりうる。さらに、グループステージ最終戦を見るために来日する人たちにとっては、日本に到着できるのかどうか、羽田なり関空なりに到着したあとで目的地まで移動できるのかどうかといったことがあるから、自然、関心を集める。というわけで、ラグビーW杯にイングランドウェールズスコットランドアイルランドの4つの代表を出している英国(北アイルランドラグビーでは「アイルランド」として島全体で1つの代表チームを作る)のメディアでは、水曜日以降、この台風についてかなり大きな取り上げ方をしている。木曜日にはついに英国でTwitterのTrendsに "typhoon" というワードが入ったほどだ*3

 

今回の実例は、このように台風19号(ハギビス)を話題としている 英語圏での投稿のひとつ。

ツイート主のポール・グレイソンさんは、元イングランド代表のプレイヤーで、現在は指導者。ワールドカップに際して来日し、BBCで解説などをしている。

そのグレイソンさんが、現在接近中の台風19号(ハギビス)と、約1か月前に千葉県南部にすさまじい爪痕を残していった台風15号(ファクサイ)を比較し、身の安全の確保が第一であると注意を呼び掛けているのがこのツイートだ。

まず注目したいのはこの箇所: 

Typhoon #15 Faxai caused $443 million worth of damage earlier this year and 3 deaths.

"earlier this year" は直訳すると「今年、今よりも早くに」で、日本語として自然なように意訳すれば「今年、これまでに」とか「今年、既に」といったふうになるだろうが、実際に翻訳するときはearlierはいちいち日本語にしないかもしれない。

これが、特にネットで見る翻訳では、「今年早く」と誤訳されていることがかなり多い。

確かに、"early this year" ならば「今年早く」だが、"earlier this year" と比較級になると、《現在を基準にしてそれよりearlyな段階で》の意味になるので、「今年に入ってこれまでの間に」である。

"early this year" は1月か、遅くとも2月までのことを言う表現だが、"earlier this year" は、現在が10月なら、9月かもしれないし5月かもしれないし2月かもしれない。

なお、ここではyearが使われているが、monthやweek, todayなどもこの形で使われる。

  He quit his job earlier this month

  (彼は今月[に入ってから今までに]仕事をやめた)

  cf. He quit his job early this month

  (彼は今月初めに仕事をやめた)

 

  Juncker has told Sky News that talks earlier this week with Mr Johnson were "rather positive" *4

  (ユンカー氏はスカイ・ニュースに対し、今週行われたジョンソン首相との交渉は『なかなか前向き』なものだったと述べた)

  A man was airlifted to hospital earlier today after a car overturned *5

  (今日、車が横転したあとで、男性が病院に空路搬送された)

 

続いてここにも注目: 

Typhoon #19 Hagibis is two and a half times the size.

《~ times the size of ...》は「…の~倍の大きさで」という決まりきった表現(熟語・成句と思ってよい)。ここでは "of ..." がわかりきっているので省略されて*6、この形になっている。

《~ times the size of ...》の "~" の部分には数字が入る。

  The house is three times the size of mine. 

  (その家は、私の家の3倍の大きさだ)

今回の実例では、その数字の部分が "two and a half", つまり「2と1/2」となっている。ここは普通に日本語にすれば分数ではなく少数を使って「2.5倍」とするのが自然だろう。

ちなみに「2倍」の場合は、通例、two timesではなくtwiceという。

  I think the missing shiba-inu is about twice the size of a Chihuahua. 

  (その行方不明の柴犬はチワワの2倍くらいの大きさだと思います)

 

というわけで、文法的には難しい文ではないが、正確に解釈するには表現を知っておく必要があるという実例である。今回の2つの表現は、読んでわかるだけでなく、自分でも言いたい・書きたいときにすっと使えるようにしておくことが望ましい。自分なりの例文を考えて、知識といてしっかり定着させてほしい。

f:id:nofrills:20191011051901j:plain

2019年10月10日、Twitter @paulgrayson10

 

ちなみにグレイソンさんのBBCでのお仕事光景。背後のTVモニターの画面に予想進路のマップが出ている: 

 これについてるリプが傑作: 

 「正直、スポーツのことはわりとどうでもよくて、延々と天気の話ができるのがうれしくてしかたがないんですよねー」

英国人といえば口を開けば天気の話、という類型がある。それに基づいた一種の「自虐ギャグ」だ。

 

そういった類型を面白おかしく綴ったのが下記の本。作者のジョージ・ミケシュ(「マイクス」ではない)はハンガリーの人で、この本が最初に出たのは1946年、第二次大戦直後だが、今でも読まれ続けている。 何を隠そう、私が初めて買ったペーパーバックがこの本である。大学受験の長文問題集に出ていたこの本の一節がおもしろかったので、お年玉を持って新宿の紀伊国屋に買いに行った。高校2年生のときだったと思う。一緒にピーターラビットの絵本も買って、「こういうのがすらすら読めるようになる」という目標を立てたのだった。

How to be a Brit: Includes the Classic Bestseller How to be an Alien

How to be a Brit: Includes the Classic Bestseller How to be an Alien

 

 

 

*1:台風の名称については https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html を参照。

*2:この台風に関心が集まったあとで、12日(土)のイングランド対フランス(横浜)と、ニュージーランド対イタリア(豊田)の試合中止が正式に決定した。

*3:typhoonは「台風」由来で、アジア太平洋地域でしか用いられない言葉なので、欧州で話題になるとしたら甚大な被害を残したあとのことで、今回のように被害がまだ出ていないときにTrendsに入るのはとても珍しい。

*4:英文出典: https://www.bbc.com/news/uk-politics-49753413

*5:英文出典: https://www.cheshire-live.co.uk/news/chester-cheshire-news/man-airlifted-hospital-after-car-16010293

*6:省略せずに書けば、"... the size of typhoon #15 Faxai" である。

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