Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】if節の省略された仮定法, should, 《近未来》を表す現在進行形(米国とカナダによる自国民の引き上げ)

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このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は複数のソースから。

新型コロナウイルスと、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」のことは、改めてここで説明を書くまでもないだろうが、文脈を示すために初期報道(2020年2月4日付、共同通信)を貼っておく。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった香港の男性(80)が、下船後の香港で新型コロナウイルスに感染したと確認された問題で、厚生労働省は4日、横浜・大黒ふ頭沖に3日夜に停泊した船内で、乗客乗員約3700人を対象とした大規模な検疫作業を続けた。検査結果が判明し、全員の検疫が終わるのは4日午後以降の見込み。それまで全員が船内待機する。

……

厚労省は船が途中寄港した那覇で検疫を終えていたが、那覇の検疫を取り消し、改めて実施する異例の対応を取った。船は着岸していない。

……

クルーズ船は4日夕に横浜を出港する予定だったが、5日以降に延期した。運営会社「カーニバル・ジャパン」(東京)によると、1月20日に横浜を出発後、同22日に鹿児島に寄港し、同25日に香港に到着。その後、ベトナムや台湾を巡り、2月1日に那覇に寄り、横浜に着いた。感染が確認された男性は横浜から乗船し香港で下りていた。

横浜のクルーズ船、検疫続く 乗客ら3700人船内待機 (写真=共同) :日本経済新聞

 

その後、どうなったかというと……これはいくつかツイートを貼っておく。

 

 

 

 

こういうことが起きている中で、15日には米国政府が乗船している自国民を引き上げることをアナウンス、要するに日本に任せておいたら、この船では今感染していない人も感染してしまうと懸念しているわけだ。

 

 というわけで、今回、最初の実例はこの米国大使館のメールから: 

https://japan2.usembassy.gov/pdfs/alert-20200215-diamond-princess.pdf

下から3番目のパラグラフ: 

Should you choose not to return on this charter flight, you will be unable to return to the United States for a period of time.

下線部は《ifの省略》が起きた条件節で、ifを省略せずに書くと、 "If you should choose not to return on this charter flight" となる。このshould(仮定法でif節の中で使われているshould)は「万が一~ならば」の意味で、起きる可能性がかなり低いことを言っている。単なるif節より意味が強く、この文例では「(まさかそんな選択はしないと思いますが、)万が一このチャーター機で帰国しないことを選択した場合は」というニュアンスだ。

このshouldの節を受ける帰結節は、仮定法過去もしくは直説法でwillを使ったものになるが、ここでは後者で、「万が一~すれば、…することになる」と、かなり強い調子での通告の形である。実際これは自由主義国家の政府が国民に対して国民の自由意志を妨げることなく勧告・指示を行うときの表現で、「もしこのチャーター機で帰国しないという選択をするならば、あなたは当面の間米国に戻ることができなくなる」と、かなり確定的なことを言っている。

 

さて、次の例。米国のこの決定を受けて、この船に自国民が乗っている他の国も動き出した。日本に配慮しつつ(つまり「貴国にお任せしておくと全員感染させられてしまうので」とストレートに言わない形で)、ではあるが: 

このカナダ政府のアナウンスメントのツイートを見てみよう。外務大臣のアカウントからツイートされている。

 

Government of Canada is evacuating Canadians on board Diamond Princess cruise ship

太字にしたのは《現在進行形》だが、これは通常の「進行中の動作」ではなく、「近い未来のこと」「確定している予定」を表している。

これを「《近未来》を表す現在進行形」と言うが、この言い方の最も身近な例は、交通機関の「まもなく~に到着します」という車内アナウンスだろう。

  Ladies and gentleman, we are soon arriving at Narita Airport Terminal One. 

  (ご乗車の皆様にお知らせします。このバスはまもなく、成田空港第1ターミナルに到着します)

 

 

ほか、近い(さほど遠くない)未来の決まった予定を言うのにもよく用いられる。

  I'm leaving for Sapporo tomorrow morning. 

  (明日の朝、札幌に向けて出発します)

 

江川泰一郎『英文法解説』では次のような例文を使って解説している (p. 223)。

We've bought a new house and are moving in very soon

(私たちは新しい家を買ってあって、近いうちに引っ越していく予定です)

Our class is giving a play in October

(10月に劇をやる予定です) 

英文法解説

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  • 作者:江川 泰一郎
  • 出版社/メーカー: 金子書房
  • 発売日: 1991/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

というわけで、今回見た実例の "Government of Canada is evacuating Canadians on board Diamond Princess cruise ship" という文は、「カナダ政府は、ダイヤモンド・プリンセスに乗船しているカナダ人を引きあげさせます」という意味。見た目は《現在進行形》だが、「今現在、引き上げさせている最中である」という意味ではないことに注意が必要だ。

 

参考書:  

週刊ニューズウィーク日本版 「Special Report 新型肺炎 どこまで広がるのか」〈2020年2月18日号〉 [雑誌]

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2020/02/12
  • メディア: Kindle
 
ロイヤル英文法―徹底例解

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