Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

仮定法過去(アフガニスタンについて、元英軍人の言葉)

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今回の実例は、Twitterから。

この半月というもの、アフガニスタンから聞こえてくるニュースは、どれもこれもつらく、深い怒りをかきたてるようなものばかりだ。こうなる前からずっとそうだったとおっしゃる方もいらっしゃるだろうが、この半月は、本当に、限度を超えてひどい話ばかりである。中でも最もひどいのが、「反政府勢力」が迫る中、「政権」が国民を打ち捨ててとっとと逃げ出したことなのだが、その前にあったのは、その「政権」の(事実上の)お目付け役であったはずの米軍が、アフガニスタン国軍にも告げずに夜逃げ同然にして拠点から撤退するという事態であった(7月上旬)。米軍が残していったものを楽々と手に入れた「反政府勢力」を前に、国軍は国境を超えて隣国に逃げるなど、戦わずして持ち場を明け渡し、政治家たちも逃げ出し、首都カブールを「反政府勢力」、すなわちタリバンが掌握することになったのだが、この流れは、元はといえば、米国のドナルド・トランプ政権下で進められた「タリバンとの和平協議」にあった、ということが、ここ数日、英語圏で語られているのが、私の見るTwitterの画面にさかんに流れてくる。

そういう中、英国からは、ボリス・ジョンソン政権のスタンス*1は別として、英軍上層部からも一般の軍人・元軍人からも、「もっとやりようがあっただろう」という声が上がっているのは、先日(カブール陥落直後)見た通りである

そういった声は、アフガニスタンからの民間人の引き上げが急ピッチで進められる中も英メディア(の一部)では途切れることなく伝えられていたが、いよいよ引き上げの期限(8月末)が目前に迫り、英国への出国を希望する英軍協力者など避難民(難民)の移送が終了し、最後まで空港に残ってヴィザ発給の仕事をしていた英国大使らも引き上げ、2001年からずっとアフガニスタンに関わってきた英軍もついに完全撤退を完了、という中でも続いている。

北アイルランドベルファストテレグラフは、その局面で、次のような記事をフィードしている。

"UUP" はUlster Unionist Partyの略称で、日本語では「アルスター統一党」と表記されるのが慣例だが、この「統一」は誤訳に近いミスリーディングな訳語*2であるため、北アイルランドについての専門的な文献(学術論文など)ではそのまま「UUP」と記載されることが多い。議会に有する議席数では現状、DUPに続いてユニオニスト側政党で2番手となっているが、100年前に「北アイルランド」が成立して以降、1970年代に英国政府(ウエストミンスター)によって停止される続いていた北アイルランド自治政府ではいわば「万年与党」の座にあった政党で、1998年和平合意を主導したのも、ユニオニスト側ではこの党であった(ちなみに、1998年和平合意には、DUPは強硬に反対していた。今もその反対は継続している)。また、つい最近実施された世論調査では、DUPユニオニスト側第一党の座から滑り落ち、最近まで低迷していたUUPが第一党となっている。

今回のこのBelTelのフィードで名前が出ているRyan McCready氏は、この夏が始まるころ、当時の党首だったアーリーン・フォスターに対するあまりにひどい扱いに愛想をつかしてDUPを離党し、しばらくは無所属でいたが、その後UUPに入った地方議会議員である。

現在35歳と、若い政治家だが、政界入りする前は軍人で、英軍(Royal Irish Regiment)の一員として、イラクアフガニスタンを経験している。

BelTelがTwitterでフィードしている記事そのものは、有料登録ユーザーでないと冒頭の3パラグラフから先は読めないのだが、 今回の実例はこのツイートの中に入っているので問題なく読める部分から。

UUP politician Ryan McCready:I’ve spilled my blood in Afghanistan, but I’d go back there right now to help if I could

※書きかけ。すぐに書きます。

朱字で示した《コロン (:)》 は、「発言の引用」を示す用法で、コロンの前に「発言者」を記し、コロンに続く《引用符》(BelTelは英国式の表記ルールで、二重引用符ではなく一重引用符を使っている)の中に「発言」を記している。この用法のコロンでは、引用符なしで発言が記されることも多い。したがって、次の2通りの表記がありうる。

  Nile Rogers: "Rest in Power #CharlieWatts RIP. You are a smooth brother."

  Nile Rogers: Rest in Power #CharlieWatts RIP. You are a smooth brother.

そのあと、マクレディ氏の発言内容: 

I’ve spilled my blood in Afghanistan, but I’d go back there right now to help if I could

文の前半は、シンプルな《現在完了》だが、ここでは《経験》の意味で「私はアフガニスタンで自分の血を流したことがある」。英軍の一員として現地で負傷したことがある、ということだろう。

等位接続詞の "but" 以降の後半部分、太字で示した部分は《仮定法過去》で、「(不可能なのだが)もしもできるものならば、今すぐに現地に戻って手助けをしに行きたい」と、気持ちを込めて述べている。

ニュースを見ながら、そう思っていた人々は、とても多くいるだろう。

 

なお、個人的には、日本国の対応についてめちゃくちゃ言いたいことがあるのだが、今のネットで何かを言うと「何にでも政府批判だな」といってめちゃくちゃうざい形で絡んでこられそうなので、ネットでは言わないことにしている。その点、ご容赦いただければと。

 

※3180字

 

f:id:nofrills:20210916192125p:plain

https://twitter.com/BelTel/status/1432076941494996999

 

 

 

 

*1:’Middle East Minister James Cleverly told BBC Breakfast the UK was "willing to engage" with the Taliban.’ https://www.bbc.com/news/uk-58380167 (as of 30 August 2021) 

*2:英国政治の文脈でのUnionist, Unionismという語は注意が必要であるが、北アイルランドではそれがさらにややこしい。私もたぶんどっかに書いてる。

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