このエントリは、2020年8月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例は、Twitterから。
少し前のことになるが、8月上旬、Twitterでは各国政府機関のアカウントや政府系報道機関のアカウント(「編集権の独立」のある公共放送とは質の違う、政府が内容をコントロールしているような報道機関)のツイートでは、その旨を表示するようにした。11月の米大統領選を前に、誤情報や偽情報をばらまくという形での他国からの介入を「見える化」することが第一の目的であると思われるが、そういった、米国の選挙に介入しようとする勢力とは関係のない政府機関などでもその表示は出ている(ただし例によって、「行政機関のアカウントなのに、政府運営アカウントの表示がない」というケースもまだあるが)。
英国政府のアカウントにも「政府のアカウントです」という表示が出ている。私の環境*1では次のように、"United Kingdom government account" と表示される。
今回実例として見るのはこの文面。
政府が自国民・自国内にいる人々に対して重要な告知をしているツイートだが、別な点からみれば、英語として、このくらいの文面はぱっと見て正確に意味が取れる(読解できる)ようにしておかないと、英国で暮らす際に必要な情報にアクセスすることが難しいという指標になっている。英語学習としては、英語圏各国政府の告知文は、そういう目安を示すものとして参照するとよいだろう。
最初の文:
The list of places where face coverings must be worn has expanded.
この文の主語はどれで、述語動詞はどれだろうか。
主語は "the list (of places where...)", 動詞は "has expanded" である。hasの前は全部主語。
太字で示した "where" は《関係副詞》で、これが主語を長くしている形だ。
"face coverings" は、今の新型コロナウイルスというコンテクストにおいては、「マスク」を表す表現のひとつとして非常によく使われている。ウイルス関係ないところでは「覆面」で、銀行強盗やテロリストがかぶっているような目出し帽(バラクラバ、スキーマスク)もface coveringsのひとつである。
町中の監視カメラで道行く人の顔を記録し、それを犯罪捜査などに使うことが完全にシステムの一部となっている英国は、元々、デモ・抗議行動などに参加する際は、顔面を覆うものを着けているのは違法というくらいドラコニアンな法制度だったが(Wikileaksのジュリアン・アサンジが自由に外を歩いていたころ、ロンドンでの座り込み運動に顔を覆って参加したことで警察との間に問題になったことがある)、今回のウイルス禍でそんなことは言っていられなくなっていて、人の集まるところではface coveringsの着用が義務付けられている。このツイートはその義務化を告知するものだ。
それまでも店舗内や公共交通機関の中などではマスクの着用が必須とされていたが、8月上旬からはその対象が拡大され、博物館・美術館や映画館などでもマスク必須となったわけだ。
そういうことを言うとき、つまり日本語では「対象となる施設等が拡大された」と表す(であろう)ことを言うときにどういう英文を使えばよいかという点についても、今回のこの文は暗記しておくと使いまわしがきく基本文としてとてもよい。
The list of places where you can use contactless payment method has greatly expanded.
(非接触型決済を使える場所は大きく拡大した)
Twitterを "the list of places where" でフレーズ検索してみると、よい例文がほかにも多く見つかる。
https://twitter.com/search?q=%22the%20list%20of%20places%20where%22%20&src=typed_query
いくつか挙げておこう。
Transport Secretary Grant Shapps is warning against holidaymakers travelling abroad, unless they want to unexpectedly face a 14-day quarantine.
— Metro Radio News (@MetroRadioNews) 2020年8月21日
It's after Croatia, Austria, and Trinidad and Tobago were added to the list of places where restrictions apply.
Here’s the list of places where the Bris youth detention cluster have been (now 9 cases in total). More than 40 locations. @abcnews @abcbrisbane https://t.co/y5qJRrJ7OI
— Jessica van Vonderen (@jessvanvonderen) 2020年8月22日
今回の実例:
The list of places where face coverings must be worn has expanded.
— UK Prime Minister (@10DowningStreet) 2020年8月8日
As well as shops and public transport, from today you have to wear a face covering in museums, galleries, cinemas and more.
Find the full list here: https://t.co/xD93HgfiMO pic.twitter.com/591oDUeKHQ
※2630字
参考書: