Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】-ing形の判別, 前置詞+動名詞, 分詞構文, it is ~ that ...の強調構文, enable ~ to do ... など(エディ・ヴァン・ヘイレン死去)

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このエントリは、2020年10月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、読んでよかったと思う記事から。

10月6日、アメリカのロック・ギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン(ヘーレン)が65歳で病没した。一時代を築いたミュージシャンだが、実は私、個人的にほとんど聞いたことがないのでよく知らない。音楽リスナーの間で使う用語でいえば「通ってない」のだ。「私、ヴァン・ヘイレンは通ってないから、曲、知らないんだよね」と言うときの「通ってない」。

ビリー・アイリッシュみたいに、21世紀になってから生まれたような人がヴァン・ヘイレンを知らないのは当然のことだが、80年代にすでに「洋楽」とカテゴライズされていたものを聞いていた私がヴァン・ヘイレンをよく知らないというのは、意外に聞こえるかもしれない。でも、ヒットチャート入りするようなメインストリームの音楽っていうのは、ギターを弾く人などは別だったかもしれないが、そういうものだった。ヒット曲は『ベストヒットUSA』のようなテレビの音楽番組や、ラジオのチャートものでしょっちゅうかかってるし、服やバッグを買いに行けば店内BGMで流れてたけど、自分が好きにならなければ*1その曲しか知らずに終わってしまう。チャートものでもマドンナやプリンスはレコードをレンタルしてアルバムを聴いたけど、ヴァン・ヘイレンとかはアルバムはジャケしか知らない。

じゃあ当時私が何を聞いていたかというと、今からは信じられないかもしれないが、そのころは「洋楽」の中に派閥みたいなのがあって、「イギリスの音楽が好きな人はイギリスの音楽しか聞かない」という感じになってて、私も(TVや店内BGMで自然に耳に入ってくるのを除けば)アメリカの音楽は、ラモーンズなどいくつかの例外を除いては、ほとんど聞いていなかった。そのくらいの距離感である。アメリカの音楽といっても昔の(1960年代の)は積極的に聞いていたけど、同時代のはほとんど聞かなかった。そういうのが崩れたのは、90年代初めの「グランジ」と「ミクスチャー」のときだった。崩れた後になっても、80年代西海岸メタルみたいなのはずっと苦手なんだけどね(30秒の試聴がつらいレベルで……完全に個人の嗜好・趣味の問題です)。ヴァン・ヘイレンについては、むしろ、The KinksのYou Really Got Meを激ダサ*2にしてくれてどうもありがとう(怒)という気持ちはずっと抱き続けているし、これからも変わらないと思う。

だから、エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなったと聞いたとき、「一時代を築いた人が、まだ死ぬような年齢じゃないのに」と残念に思いはしたが、それだけだった。自分とは関係ない、遠いどこかの話というか。そのまま関心を持たずに済んでしまっていたかもしれないが、最初に読んだ訃報記事にそれまで知らなかったことがいろいろ書いてあって、それで初めて、「へえ、そういう人だったんだ」というような関心を少し持った。

Born in Amsterdam, Netherlands, Van Halen was the son of Eugenia Van Halen and Jan Van Halen, a clarinettist, saxophonist and pianist. The musical influence rubbed off on Van Halen, who was taught to play piano as a child.

When the family emigrated to Pasadena, California in 1962, they brought a piano on the boat.

"We actually played music on the boat on the way over here, you know? I'm serious! It wasn't like, 'so what do you want to do in life?'. Dad said, 'we've got to make a living'. So if it weren't for music, we wouldn't have survived," Van Halen said in a 2012 interview with Esquire.

www.bbc.com

BBCでこの最初の訃報記事が出た後に、明らかにエディ・ヴァン・ヘイレンの音楽が好きな書き手が書いているオビチュアリーのような記事が(「オビチュアリー」と銘打たれてはいないが)出た。私が「読んでよかった」と思ったのはこの記事である。

www.bbc.com

記事の表題は、記事の中に引用されているジョー・サトリアーニ(ギタリスト)のインタビューでの言葉から引っ張ってきたもの(だから引用符がついている): 

Fellow guitar legend Joe Satriani reflected in 2015: "Eddie put the smile back in rock guitar at a time when it was all getting a bit broody. He also scared the hell out of a million guitarists because he was so damn good."

broodyは「仏頂面の、むっつりした」という意味で、大学受験では別に覚えていなくても困らない単語だが、ほかは難しい単語はない。単語自体は難しくないが意味が取りづらい "the hell out of ~" は、カジュアルな場面でだけ使われる口語表現で(特に口汚くはないが決して上品な言い方ではないから、使いどころがわからない人は使わないように)、意味としては「めちゃくちゃに」ということ。つまりサトリアーニは「むっつり深刻そうな顔でやるのが当たり前になってた時代のロック・ギターに、エディは昔のような笑顔を持ち込んだ。それだけじゃなくて、ほんとめちゃくちゃ上手かったから、ギターやってる奴は心底、なんだこれまじかすげぇという気持ちにさせられた」ということを言っている。そこを表題にしたこのBBC記事から、少し英文法的な側面を見てみよう。

 

f:id:nofrills:20201009175843j:plain

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-54446564

最初の文。-ing形が2つ出てくるが、判別できただろうか:

Eddie started out by imitating UK rock trio Cream, learning Eric Clapton's solos by note by note.

太字にした《by + -ing》は《前置詞+動名詞》で「~することによって」。「エディは~することによって(ギタリストとしての活動を)開始した」という意味で、「~すること」の部分は「英国の3人組ロックバンド、クリームを真似すること」。

下線で示した"learning" は《分詞構文》だ。Eric Claptonは前出のCreamのギタリストで、「クリームを真似すること」はつまり「エリック・クラプトンのソロを1音1音覚えて(耳コピして)」やることだった。

Creamはこういう感じ。1968年のスタジオライヴの映像(口パクではなく本当に演奏している)。エリック・クラプトンは画面右。


ERIC CLAPTON (Cream) - Sunshine Of Your Love

 

次のパラグラフ: 

But it was watching Led Zeppelin at the Los Angeles Forum in the early 1970s that changed his guitar playing forever. A light bulb went off as Jimmy Page played the solo from Heartbreaker, using both hands to tap out notes on the neck of the guitar.

太字で示した部分は、《it is ~ that ...》の強調構文だ。「彼のギター演奏を永遠に変えたのは、1970年代初めにロサンゼルス・フォーラム(会場名)でレッド・ツェッペリンを見たことだった」。

下線で示した "a light bulb went off" は「(よいアイディアが)ひらめいた」という成句で、マンガでよくある、頭の上に電球がともっているイメージである。

www.merriam-webster.com

青字で示した "using" も《分詞構文》で、この文は「ジミー・ペイジレッド・ツェッペリンのギタリスト)が、両手でギターのネックをタッピングして一音一音を出して『ハートブレイカー』のソロを弾いたときに、ひらめいた」という意味。

レッド・ツェッペリンはLAのフォーラムでは何度か演奏しているが、1970年代初めというと下記のライヴだろう。エディ・ヴァン・ヘイレンにインスピレーションを与えたHeartbreakerは2曲目。


Led Zeppelin - Los Angeles Forum September 4, 1970

 

次:

For Page, it was an opportunity to showboat - but Eddie took the technique and refined it, enabling him to play a seemingly impossible flurry of notes and pinched harmonics.

 太字にした "enabling" も《分詞構文》で、記事書いた人はどんだけ分詞構文が好きなんだという気がしてくるが、そのくらいに便利な構文である。《enable ~ to do ...》は「~が…することを可能にする」の意味で、この文は「ペイジにとってはそれはここぞという派手な見せ所だったが、エディはこのテクニックを拝借して磨きをかけ、それによって、一見実現不可能な疾風のような音の連打とピンチ・ハーモニクスを演奏することが可能になった」という意味になる。

 

今回のこの記事は、故人を敬愛する人が書いていることが明白で、英文としても、ここまで見てきたようにさほど難しくない。学校英文法をやっていれば読める。追悼で何か読むものを探しているという方にはちょうどよいのではないかと思う。

 

※4500字(また4000字を上回ってしまった)

 

参考書: 

英文法解説

英文法解説

 

 

 

 

 

*1:好きになるかならないかの決め手のひとつは、もちろん、音以外の「見た目」だったりして、見た目だけで「これはいいや (no thank youだ) 」となることが多く、西海岸メタルの多くはそういう感じで。

*2:ヴァン・ヘイレンのカバーみたいな「隙間のない音」はね……。

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