今日は疲れてしまったので、ツイートの貼り付けだけ。
『ペンギンの憂鬱』などで知られるウクライナの作家、アンドレイ・クルコフが英語でツイートしているから(クルコフはロシア語話者なので、「中立」の、というか「どっちでもない」言葉として英語を使っているのだと思う*1)みんな、フォローするといいと思うよ。
ツイートを埋め込むと読み込みに時間がかかるので、以下は「続き」の下に。
英文法は、特に解説すべきところがない。敢えて言えば《時制》の問題で、クルコフは現在形でisを使っているが、おそらくこれは意図的というよりミスだろう。過去の事実なのだから、通例wasを使うところだ。
Wonderful Ukrainian naive artist Maria Primachenko's Museum is shelled by russian army and burnt down with all her works.
— Andrei Kurkov (@AKurkov) 2022年2月28日
翻訳Translation: ウクライナの優れたナイーヴ派の画家、マリア・プリマチェンコの個人美術館が、ロシア軍による砲撃を受け、所蔵作品もろとも全焼した。(作家アンドレイ・クルコフさんのツイート) https://t.co/5hSftZ28q8
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年2月28日
https://t.co/EyauoLEwki マリア・プリマチェンコ (1908年12月30日–1997年8月18日) pic.twitter.com/oOspQpFAiJ
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年2月28日
マリア・プリマチェンコはとても有名な画家で、その作品は切手などにもなっている。その作品を収蔵している美術館(英語版ウィキペディアから確認したところ、「個人美術館」ではなく、Ivankiv Historical and Local History Museumという地域の歴史民俗博物館であることがわかった*2)は重要な観光資源でもあっただろうし、当然、広く知られた施設で、座標はわかっていただろう。
そこを、ロシア軍は砲撃したのだ。
それが意味することを考えて、私は涙を流さず、声も出さずに泣いた。
ペンギンが足元に寄ってきてくれればいいのに。
クルコフの作品で日本語訳があるものは上記3冊。『ウクライナ日記』は2013年末から2014年にかけての「ユーロマイダン」の反政府デモを、キエフ*3住民として経験した作家の日記で、ほかの2冊はフィクションである。どれもオンライン書店では在庫払底、アプリで確認できる限りではリアル書店でも店頭在庫ほぼなしの状態で、古書は高騰している。電子書籍もない。地元の図書館に蔵書があればラッキーだ。
英語版なら電子書籍があるから、英語版で読んでみるのもいいだろう。日本語訳のあるものはサンプルの一部しか見ていないが、英語はそんなに難しくはない。語彙力はけっこう必要かもしれないが、辞書があれば解決するだろう。
下記、最新作のGrey Beesは、私も今読んでいる。Amazonでサンプルがあるので、作家本人による前書きだけでも読んでみてほしい。2014年のクリミアとドンバスの紛争によって、ウクライナに何が起きたのかを、国際報道にはあまり乗らないところから説明している。表題の「グレイ」は、親ロシア分離勢力でもなく、ウクライナ政府側でもなく、という「中間」の意味。電子書籍ならAmazon Kindleで800円足らず*4。楽天KOBOなどほかの電子書籍ベンダーでも買えるが、Amazon Kindleが一番安い。
*1:同じような「中立」の言葉としての英語の使用は、フラマン語地域とワロン語地域があるベルギーでも見られる。
*2:歴史民俗博物館のような施設が攻撃対象にされることの意味といったら、ひとつしかない。完全否定である。イスラエルがパレスチナに対してやっているような完全否定。
*3:この本での表記にならっておくが、現在「キエフ Kiev」というロシア語読みの名称は、「キーウ Kyiv」というウクライナ語の名称に置き換えられつつある。ロシア語話者であるクルコフは、それをも体験しているのだが、私は遠く離れた東京で、自分の経験にはないことを、「デリー/ロンドンデリー」という、座学で知り、なおかつネットで現地の人々の言葉を通じて知ったことを参照することで、想像しようとしている。
*4:当ブログ来訪者の皆さんのおかげで、こういうふうに、「読みたいな」と思った作品をだいたい思うがままに読むことができています。ありがとうございます。