ウクライナの作家、アンドレイ・クルコフさんが、ウクライナで移動病院 (Mobile Hospital) のための資金集めで、オンラインでトークイベントを行う。主催は英国のLondon Review Bookshopで、日時は、2022年3月11日(金)19:00から20:30、つまり日本時間では12日(土)の早朝、04:00から05:30である。なあに、プレミアリーグ見る人なら普通の時間帯だ。寄付の金額は、ひところ音楽業界で流行った「あなたの好きなだけ払ってください」式である(一応、£5, 10, 15の3種類の額面のプリセットは用意されている)。
集まった資金の寄付先は、Pirogov First Volunteer Mobile Hospital (PFVMH) という非政府組織。すでに2014年から紛争状態にあったウクライナ東部のドネツクとルハンスク(ルガンスク)で(軍医ではなく民間の)医者や医薬品、医療機械を載せて、医療を必要とする人々のもとに赴いて医療を提供するという活動を行っている。
今ロシア軍がやっているようなめちゃくちゃな攻撃では、移動病院は、必ずますます役に立つようになるだろう。「役に立つ」なんてレベルではなく、あてにされるだろうし、必要にさえなってくるかもしれない。そうなる前に、ロシア軍が撤退してくれるのが一番だが、残念ながら、おそらく、そうはならないだろう。そういえば、シリアでイスイス団に殺害されて宣伝に利用されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェイムズ・フォーリーさんが、誘拐される前にやっていたのが、アレッポに救急車を寄付するための資金集めだった。
「英語が聞き取れないから、イベントに参加してもなあ……」という方も、「時間がすごすぎて到底むり」という方も、移動病院という活動に寄付したいと思ったら、イベントへの参加はさておき、とりあえずチケットを買うという形で支援できる。
クルコフについての説明は本稿の後ろの方でするとして、まずはイベントの詳細。下記のページで詳細確認から申し込みまでできる。「英語なら読める、大丈夫」っていう人は、このリンク先からどんどん手続きしていただきたい。
Eventbriteというこのサイトは、ご存じの方も多いと思うが、英語圏や欧州で広く使われているオンライン・チケッティングの会社で、ずいぶん前からあるのだが、コロナ禍で広く使われるようになって知名度がぐっと高まった。簡単に説明すると、このサイトで名前やメールアドレスを入力してチケットを買うと、メールでイベントのURL(Zoomなど)が送られてくるので、それをクリックしてイベントを試聴する、という流れである。米国企業で英国などにも拠点を設けている大手なので、普通にネットを使って有料の配信イベントなどを見ている人なら、特に心配しなければならないようなことはないだろう。英語以外にもフランス語、ドイツ語など欧州の各国語で使うことができるサイトだが、日本語は用意されていないので、以下、チケットの購入方法について、キャプチャ画像で説明しておく。
まずは、イベントの紹介ページから、イベントの概要。英文法的には《受動態の未来形》などがあるのだが、何はさておき、これって例の共通テストがぐっちゃぐちゃのだらっだらにしているような「実用的な英文」なんじゃね、ということで:
This Friday, he’ll be joined by writers and translators in the UK, the US and Ukraine, including Oksana Zabuzhko, Robert Chandler and James Meek – further additions to the programme will be announced throughout the week – for a special event chaired by Peter Pomerantsev.
つまり、ウクライナの作家オクサーナ・ザブジュコ、英国の翻訳者(ロシア語)ロバート・チャンドラーや、英国の作家でジャーナリスト(元ガーディアンのモスクワ支局長い)のジェイムズ・ミークといった作家や翻訳者たちとクルコフが話をするイベントである。司会進行は、ソ連時代のキエフ生まれで英国のジャーナリストであるピーター・ポマランツェフ(下記の本の著者)。すごいメンツですね。
寄付先は下記のNGO。
こうしてどういうイベントかがぼやっとでも把握できたら、チケットを買おう。
以下、チケット購入の手順の説明。
まず、イベントのページを開くと、下記ピンク色の枠で囲った場所に "Tickets" というボタンがあるので、それをクリックする。
[1] そうすると、チケットの額面選択の画面になる。£5, 10, 15の3種類がプリセットされているが、開いた画面をずっと下の方にスクロールダウンしていくと、金額を自由に入力できる欄もあるから、ここに好きな金額を入力してもよい(£5より少なくても受け付けてくれる)。どんぶり勘定レートで£1=¥150として、£5は750円、£10は1500円、£15は2250円だ。プリセットされた金額で複数枚を注文することもできるので、同じ家で同じパソコンを使って2人で見て、2人分の名目で寄付したいとかいった場合にはチケットを2枚買えばよい。
下記、画像内に青背景で説明を入れ込んであるので、必要に応じてご参照いただきたい。
[2] こうして金額が決まったら、ページの一番下の "Checkout" のボタンに色がつくので、それを押す。
[3] "Checkout" を押すと、画面が切り替わって、氏名やメールアドレス、決済方法を選択・入力する画面が出てくる。決済方法は、クレジットカードまたはデビットカードか、Paypalが選択できる。ほかに必要なのは氏名とメールアドレスだけだ。
なお、Eventbriteのサービスを今後も使いそうなら、ここでアカウントを作っておくと便利かもしれない。アカウントを作れば、このイベントの情報もいちいちメールをチェックせずにこのサイトで一元管理できるから、その方が便利そうならそうするといいと思う。この画面で出てくる "Contact information" のところで "log in" というリンクをクリックすると、ログインするか、アカウントを作るかという画面になるはずだ。この辺の使い勝手は、日本語圏の多くのサイトと同じだろうから説明は省略する。
もちろん、Eventbriteのアカウントは別に作らなくても、今回だけのゲストとしてこのチケットを買うことはできる。あんまりあちこちに登録したくないとか、あまり使わなさそうなサービスのためにパスワードを考えるのがめんどくさいとかいった場合は、「ゲスト」でいいと思う。
この画面で "Place Order" のボタンをクリックすると、注文が確定される。特に確認してくれたりしないので、その点だけ注意。
ちなみに、クレジットカードやPaypalの選択のところは、下記のようになる。
[4] ここで決済が完了すると、次の画面に遷移して、チケットの確認などができる。
この画面が表示されると同時に、次のようなメールも届いているはずだ。
このメールをさらにずっと下の方にスクロールしていくと、次のようなことが書かれている。
「ライヴのリンクは、イベントの当日にメールで送信され、Eventbriteのオンライン・イベントのページに追加される」という内容。このメッセージの後半はEventbriteのアカウントを持っていないと意味がないと思うので、今回、「ゲスト」でチケット購入した人は無視しておいてよい。
というわけで、あとは当日(金曜日)のメールを待つだけである。
ちゃんとメールが届けばいいんだけどね……この手のオンラインイベント、何度かメールが届かなくてイベントに参加できないということがあったので今回もうーんと思っているのだけど、今回はイベントがメインというより寄付がメインだ。
いや、イベントももちろん、すごいメンツですし、アンドレイ・クルコフの声なんて聞いたことがないし、今後も聞く機会はなかなかないだろうから、楽しみにしている。
アンドレイ・クルコフはロシアの現在のサンクトペテルブルク生まれでキエフ(キーフ)育ちのロシア語・ウクライナ語話者で、ロシア語で執筆を行ってきた作家である。先日も紹介したが、日本では3冊、翻訳書が出ている。いずれも電子書籍なし。
3冊目の『ウクライナ日記』は、2013年から14年にかけての「ユーロマイダン」の抗議行動と当時の大統領の失脚(つまり革命)から、東部の紛争へ……という激動の日々を、ひとりのキエフ市民として体験したときの日記を書籍化したものである。現在、出版社の在庫も払底してしまっているようだが、出版社のサイトやツイッターアカウントを見る限り増刷の気配はない(翻訳権が切れてるのかもしれない)。古書は高騰しているようだから、英語が読める人は電子書籍で英語で買ってもよいだろう(下記)。日本語版の「訳者あとがき」(これがとてもよい)にあるが、この本はオーストリアからの依頼でエッセイを執筆中に動乱が発生したというめぐりあわせゆえか、最初にドイツ語版とフランス語版が出て、次に英語版などが出た後にロシア語版が出た。ウクライナ語版は日本語版が出た後だったようだ。
クルコフは現在、英語でツイートしている。猫のPepinとハムスターのSemyonとともにキエフを離れて避難している。「一時的なこととはいえ、寄る辺ない身となってしまった。ロシアの戦争のせいで、何百万人ものウクライナ人がそんな目にあわされている。しかし逃げ回っているわけではない。道中、カフェを見かければ必ず立ち寄ってコーヒーを飲み、そこで仕事もしている。日記を書き、メディアに寄稿する小文を書いている。悲劇にドラマを付け加えることを好む者たちに、神の恵みあれ」
Yes, i am temporarily displaced person. Displaced by the Russian war as millions of Ukrainians. No, I am not on the run. I drink coffee in each cafe on the road and work there too, writing my diary and essays for media. God bless those who love to add drama to tragedy.
— Andrei Kurkov (@AKurkov) 2022年3月7日
Pepin in evacuation behaves better than Semyon, but still very nervous. He lived in the capital of Ukraine, now it is a simple village house and lots of rough village cats around. Will it be easy to find common meow. pic.twitter.com/bOvK3VWbfj
— Andrei Kurkov (@AKurkov) 2022年3月8日
動物たちは避難生活で環境が変わってストレスを感じているみたい。
動物といえば、ロシア軍の砲撃・爆撃にさらされている南部の都市ムィコラーイウにある動物園が、入場券をオンライン販売しているので、実際に足を運ばなくても入場券を買うことで支援になる、という呼びかけもあった。ただ、サイトのプライバシーポリシーなどがウクライナ語で私には読めないので、時間があるときに機械翻訳を使って最小限の確認はしてから……と思っている。ツイート主のマキシム・エリスタヴィさんはジャーナリストで、個人的には2013年の「ユーロマイダンの抗議行動」のときから(あるいはその前から)フォローしているアカウントである。
these are the residents of mykolayiv zoo — the finest in ukraine. russian bombs are raining down on their city as i type this. everyone from abroad can support the zoo by buying entry tickets. as many as you'd like
— maksym.eristavi 🇺🇦🏳️🌈 (@MaximEristavi) 2022年3月8日
maximize sharinghttps://t.co/9tRsDXAtbFhttps://t.co/Rv3zxjaJlN pic.twitter.com/aIFXLuAHSW
キエフの動物園も、動物たちに食べさせるものがなくて、市民たちが廃棄することになった食品を持ち寄っているという。
Kievites are sending their edible waste to Kyiv Zoo where there is nothing to feed animals with. Among hungry animals are tigers, elephants and penguins. Could you imagine animals as victims of Putin? Now you can!
— Andrei Kurkov (@AKurkov) 2022年3月8日