Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

前置詞+関係代名詞, 関係副詞, 代名詞のthose, too ~ to do ...構文, など(コウビルド英英辞典のコリンズ社が選んだ「今年のことば」より、warm bankについて)

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今回は前回の続きで、『コウビルド英英辞典』のコリンズが選んだ「今年のことば」についてのコリンズのブログから。

前置きなどは前回のエントリを参照されたい。

前回は、2022年を表すいくつかのことばの中からトップに選ばれた permacrisis (permanent の perma と crisis をつなげた造語。意味は「危機的な状態いつまでも続いていること」)についての説明の部分を参照した。ちなみに、英語のcrisisという語は語源はギリシャ語にあり、複数形は「sをつける」という英語のいつものパターンではなく、crisesとする。

前回、ついでにpartygateについての説明も済ませてしまったが、この新語が表しているものについては、当ブログでは何度か扱っている

さて、今回は、コリンズのブログから、その先の部分を見ていこう。記事はこちら: 

blog.collinsdictionary.com

https://blog.collinsdictionary.com/language-lovers/a-year-of-permacrisis/

キャプチャ画像内の最初の文。一見易しそうだが、構造は取れるだろうか: 

Russia’s invasion of Ukraine produced an energy shock to which warm banks – places where those too poor to heat their own homes can gather in the event of a cold snap –are one proposed solution.

文字をグレーにしたところは、《ダッシュ》2つで挟んだ《挿入》の部分で、文構造を取るためには、いったん外して考えてしまってよい。

もちろん、構造としては、この文の主要な部分は "Russia’s invasion of Ukraine produced an energy shock" なのだが、この記述においては、重要な情報はそこにはない(読むだけならするっと読んでしまうんだけど、これはなかなか高度な英文かもしれない)。この文章で話題にしている「今年のことば」は、一貫して赤い文字で記されているのだが(これらは辞書へのリンクで、クリックすると定義文が確認できるようになっている)、ここではその赤い文字の語句が、関係詞節に登場している。文の構造として重要なのはその前の部分だが、情報としてはその関係詞節が重要になるわけだ。

で、その関係詞節が、太字で示したように《前置詞+関係代名詞》になっていて:

an energy shock to which warm banks are one proposed solution

→ an energy shock which warm banks are one proposed solution to

となるわけだが、ここで《solution to ~》(「~への解」)という、名詞と前置詞の決まった組み合わせを知っているかどうかが重要になってくる。

この部分の意味は、「warm bankというものが、提案された解決策になってくるような、エネルギー・ショック」という感じになる。

ちょっと何言ってるのかわからないかもしれないが、わかりやすく書けば、「ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー・ショックが引き起こされ、それに対する解決策のひとつとして提案されているのがwarm bankだ」という意味である。

そしてその warm bank とは何かということが、リンクをクリックしなくてもわかるように書かれているのが、さっきグレーにしていったん外した《挿入》の語句である。

warm banks – places where those too poor to heat their own homes can gather in the event of a cold snap –

太字で示した "where" は《関係副詞》。下線で示した "those" は《代名詞》で「~な人々」の意味。ここでは "those too poor" で「あまりにも貧しい人々」となる。

さらにそこに、青字で示した《too ~ to do ...》の構文が絡んでくる。「自宅で暖房を使うにはあまりにも貧しい人々」、「貧しすぎて自宅で暖房が使えない人々」。

そういう人々が、急な寒さに見舞われた場合に (in the event of a cold snap) 集まれる場所を、「ウォーム・バンク」と表現するようになっている、ということである。

その「ウォーム・バンク」という言い方の由来についてが、その次の文に簡単に説明されている。ここでは「バンク」といっても、普通のそれ(銀行)とは違い、何かを預けに行ったり引き出しに行ったりする施設ではないし、「信用創造」とか「金融仲介」とか「決済」といった機能は持たない。

The lexical analogy here is with another grim indicator of economic crisis, the food bank.

"another grim indicator of economic crisis, the food bank" の部分は、前回も見たような、コンマで作られている《同格》(my friend, Ken 「私の友人のケン」のような構造)。「経済危機のもうひとつの暗鬱な指標であるフード・バンク」。

あ、このtheは《総称のthe》だね。見つけると嬉しくなる(人もこの世界に入るんだよ)。

つまり、「ウォーム・バンク」という言い方は、「フード・バンク」という表現から着想されたものである、という説明だ。

いずれも、食べ物や暖房に費やすお金のない人に、それを無償で提供する場である。

フード・バンクというものは、ついこの間までの英国にはなかった。それが、2010年以降の保守党政権下でできてしまい、今や社会の一部として完全に組み込まれてしまっているだけでなく、また別の「なんとかバンク」の語源となっている。

暗澹たる気持ちになる。

 

今回見ているこのパラグラフで、warm bankのほかに説明されているのは、ウクライナの首都の名称がウクライナ語の綴り(をアルファベットで表したもの)になり、かつてのKievは今はKyivとなって発音も変わった、ということと、ロシアの「戦争 warfare」という状況下、法律を武器のように使って反対者を黙らせることを「lawfare」と呼ぶようになっている、ということ。

後者は日本語では「スラップ訴訟」と呼んでいるものだと思う。英語でもSLAPP (strategic lawsuit against public participation) という用語はあるが、それよりも普通の単語っぽい印象のlawfareという語が新語として辞書にも載るようになっている、ということだ。

 

ほか、カタールでのサッカー・ワールドカップ開催を前にsportswashingという語が注目されていたり、チャールズ3世国王の即位で「チャールズ時代」を表すthe Carolean eraという言い方が取り上げられたりしている(Charlesという英語は、中世ラテン語だとCarolusなので、それにちなんだ言い方になる)。