Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】「~は終わった」を過去時制で表すかどうか(米大統領選挙は終わった)

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このエントリは、2020年11月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

日本語では「~た」や「~した」と、《過去》のような形で表すものを英語にするときに、英語では《過去形》を使わないことがある。こういうところでつまづいてしまう人も少なくないのだが(私もかつてはそうだった)、日本語の「~た」や「~した」についてまず《過去形》という思い込みを捨てて、《現在の状態》ととらえなおしてみるとスッキリすることが多い。

つまり、「~した」は、「すでに~した状態である」という《現在》のことを言っていると考えてみよう。

ここで混乱したら、一歩下がって基礎的なところを確認してみよう。《過去》と《現在》は断絶しているのではなくつながっている。例えば「(過去のある時点で)書類に住所を書いた」ら、「(現在)その書類に、住所が書かれている」ということになる。そういう理屈だ。

それを意識して、例えば「試合は終わった」を考えてみよう。午後6時20分に試合が終わった場合、現在6時30分の現在の時点では「試合は終わっている」。別の言い方をすれば「試合は終わった状態にある」。

これを英語で表すと、6時20分には "The game finished." (「終わる」の意味の他動詞の過去形)で、6時30分は "The game is over." (be動詞の現在形と「終わっている状態にある」ことを言う前置詞のover)だ。そしてどちらも日本語にすれば「試合は終わった」になる(前者は「試合終わった」と言うほうが自然に感じられるかもしれないし、後者は「試合は終わっている」と言うこともあるが)。

英語を学習するとき、動詞にせよ、形容詞などbe動詞と一緒に使うものにせよ、単語について、このように「《状態》を表す」という概念を持つようにすると、的確に書く力がかなり身に付きやすくなる*1。そして「書く」ということは必ずしも文書を書くことを意味するわけでなく「言いたいことを英語で表す」ということで、つまり「話す」能力にも直結している。

というところで今回の実例。米大統領選挙がようやく終わったとのことで、11月24日は "be over" という表現をいくつもTwitterで見かけることとなった。それらを個別に見ていこう。

時事・政治論説メディアのPOLITICOのフィード: 

リンク先は今回の選挙の出口調査を分析してわかったことをまとめた記事で、米国の政治に関心がある人には興味深いものだろう。

ここで見るのはそこではなく、ツイートの第一文: 

The election is over and the votes are being certified.

「選挙が終わった」は数え直しやら何やらが終了して投開票は終わったという意味(まだ裁判がどうたらこうたらというのがしばらく続くのだろうが)。あとは、このツイートがあった時点では、それが公式に確定される手続きが進められているのだが、それを《進行形の受動態》の形、《be being + 過去分詞》で表している。「認証されつつある」ということだ。

 

ジョー・バイデン次期大統領のツイートにも "be over" が出てくる。書き出しの文だ。

 第2文: 

It’s time to put aside the partisanship and the rhetoric designed to demonize one another.

《it's time to do ~》は「~するときだ」「~すべきときだ」の意味。このto不定詞は形容詞的用法で、timeを修飾している。

  It's time to go. 

  (出発する時間だ)

  He realised that it was time to say goodbye. 

  (お別れを言うべきときが来たと彼は悟った)

下線で示した "designed" は《過去分詞の後置修飾》で、"(be) designed to do ~" は「~するよう設計されている」の意味。put aside ~はそのまんま「~を脇へどけておく」、demonize ~は「~を悪魔化する」で、この「悪魔化」という日本語の意味がわからなかったらそれはそれで調べてほしいが、この語の意味を知りたければ、英英辞典でdemonizeを引くのが一番手っ取り早いと思う。学術論文や時事のコンテクストではこれは「悪魔化する」と翻訳するのがお約束だが、文芸翻訳ではもっと柔軟な対応をするかもしれない。"one another" はここではeach otherと書いてもよい。このone anotherとeach otherについては下記のブログの解説がわかりやすいと思う(「one anotherは3者以上のときに使う」と教えられた人もいるかと思いますが、そうとも限らないというか、そういうことが説明されています)。

hapaeikaiwa.com

というわけでバイデン次期大統領のこのツイートの第2文は、「党派性と、互いを悪魔化するために作られたレトリックは脇に置くべきときが来ました」。

ここで "It is ~" を「~が来ました」と日本語にしているのも、今回の表題と絡めて見てほしい。実はこの上の例文でも同じ処理をしているのだが、それも同じ意図である。

 

最後。雑誌Vanity Fairの記事見出しから。

f:id:nofrills:20201125064047j:plain

https://www.vanityfair.com/news/2020/11/laura-ingraham-fox-news-says-biden-won-trump-lost

LAURA INGRAHAM GIVES FOX VIEWERS A DOSE OF REALITY: IT’S OVER

Laura IngrahamはFox Newsの番組プレゼンターで、報道というよりトランプの言い分をそのまま垂れ流す系の番組をやってきた人。その彼女がついに視聴者に現実を見せた、というのがこの見出しのコロンの前までのところの意味で、彼女が見せたという現実がコロンの後に置かれている「終わりました」の一言である。コロンの機能でいえば、「発言主: 発言内容」のパターンと似た用法と考えてもよいだろう。

 

日本で現実が見えてない(のに「真実」を見ている)と信じている人々にも、どうかこの現実が届きますように。

 

ところで今回はまだちょっと文字数に余裕があるのでもう少し書いておこう。「~した」や「~が来た」という日本語の表現について。

私が英語につまづいていたころによくわからなかったのが《時制》だった。問題は、実は、「~した」が必ずしも《過去》を表さないという日本語の本当のところを知らなかったことにあったのだが、当時はそこまで考えが及ばなかったし、それに学校でも「英語の過去形は過去を表します」以上のことは教えてくれなかった(日本語と向かい合う機会は特になかった)。

ブレイクスルーとなったのは学年が進んで英語の先生が変わったことで、授業の枠外で英作文指導をしてくださったその先生に、私は今なお、とても深く恩義を感じている。自分の書きたいことを英語で書くには、日本語から訳していたのでは不十分なのだ、日本語にべったり浸っている思考を離れ、日本語と距離をとることを覚える必要があるのだ、ということを、私は、中学生用の和英辞典を引きながら一生懸命に書いた英文に入った朱字を見て、自分で考えて悟った。添削されたノートを見つめ、「『学校の文化祭』は "my school's culture festival" とは表さない*2」ということについて一晩考えて、そのことについてつたない英語で一生懸命に書いて、また添削してもらった。1日数行から1ページ程度だったが、希望者何人かのめちゃくちゃな作文をそうやって見ておられたので先生は大変だっただろう。

 

※3700字

 

しかし、ようやく米大統領のツイートを英語学習の素材に使える日々が戻ってきたというのが感慨深い。ジョー・バイデンは決して言葉の達人ではないが、それでもまっとうな、普通に大人の英語が戻ってきたのだ。

 

参考書: 

 

英文法解説

英文法解説

 

 

 

*1:一般動詞については、動作動詞と状態動詞の区別に注目するとよい。また、一般的にbe動詞はそれ自体が《状態》を表すということも意識しておくとよい。

*2:バブル世代が「学校で習った英語」はそういうもので、教科書は「文化祭」のような身近な事柄を言い表すことにはあまり重点が置かれていなかった。「ゆとり教育」以降はそうではない。

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