このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例はTwitterから。
昨日、12月21日は冬至 (winter solstice) だった。西欧では「クリスマス直前」、うちら日本では「年の瀬」で「かぼちゃ食べてゆず湯に入る」日だが、世界には、1年で一番日が短いこの日を「1年の終わり」と考え、その翌日(つまり今日)から新たな年と考える文化もあるそうだ。イランなどでは一年で一番長い夜を祝って家族・親族が集まり、ザクロやスイカなど赤い果物を食べながら夜通し語り明かすという。
Happy winter solstice everybody. Happy #YALDA. In some countries (Iran included) this night is celebrated as the longest night of the year. This is the night for telling stories and family gatherings (not in Covid) till morning. We eat pomegranate and watermelon & have fun. pic.twitter.com/DUM1UtfUSY
— 𝙵𝚊𝚛𝚣𝚒𝚗 𝙵𝚊𝚛𝚣𝚊𝚖 (@AnFarzin) 2020年12月20日
そんなタイミングでも、今年はとにかくBrexitと新型コロナウイルスのダブルパンチで、ブリテン島では大変な状況になっていて、その隣にあってブリテン島とは切っても切れない仲であるアイルランド島もかなりの混乱の中にある。そのアイルランドから、ジャーナリストのギャヴァン・ライリーさんのことば:
If you’re into trite analogies: from today the days literally get brighter.
— Gavan Reilly (@gavreilly) 2020年12月21日
If you’re not: today the first Covid-19 vaccine was approved for use in the EU.
Whatever normality is, it’s a day closer.
第一文:
If you’re into trite analogies: from today the days literally get brighter.
太字で示した《be into ~》 は、あまりフォーマル感のない表現で、「~が好きである」の意味。日本語で言うと「~にはまっている」にも似ているが「はまっている」というほど好きでないときにも使う。
triteは形容詞で「陳腐な、ありふれた」の意味。analogiesはanalogyの複数形で「類似」や「類推」という意味だが、より日常的には、日本語でいう(広義の)「比喩表現」の意味で用いられることが多く(「類似」も「比喩」も要は同じことなのだが、その話をするにはこのブログでは不十分なのでここでははしょる)、ここでのライリーさんの言葉でもその意味である。文意は「もしもあなたが陳腐な比喩表現を好むなら」。
このif節の直後にある《コロン (:)》は、2つの文をつなぐ役割で、この場合は「一拍置いて名言を言う」みたいな用法だ。
Always remember: time is money.
(忘れてはなりません。時は金だということを)
コロンの後の "from today the days literally get brighter." のliterallyは「文字通りに」の意味で、私は大学入試のときにアカデミックな文脈で覚えた単語の一つだが、より日常的には "really" の代わりに用いられる。会話でも頻出だが、あんまりliterallyを連発すると「何も考えてない人」みたいに受け取られるので、要注意である。文意は「今日から先は、日は文字通りに(本当に)より明るさを増す」。
第二文:
If you’re not: today the first Covid-19 vaccine was approved for use in the EU.
書き出しの "If you're not" は、先行する第一文の後半部分を、繰り返しを避けるために省略した形で、"If you're not into trite analogies" の意味。文意は「陳腐な比喩は好みではない(=ストレートな物言いを好む)なら、最初の新型コロナウイルスのワクチンがEUでの使用を認可されました」。
そして第三文:
Whatever normality is, it’s a day closer.
太字で示したのは《複合関係代名詞》と呼ばれるもので、《譲歩》の意味。直訳すれば「通常がどのようなものであろうとも、それは1日、近くなっているのです」。
つまり、この異常な状態がいつまでも続くわけではないということを、冬至という節目に改めて思い起こしましょう、という言葉である。
厳しいニュースの中、小さな、それでいて確実な明かりのような言葉だと思った。
Happy #solstice 2020 from Divis Mountain Belfast. May the light now return pic.twitter.com/sMOKksZowe
— Teresa Degenhardt (@DrTDegenhardt) 2020年12月22日
参考書: