Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

分詞の後置修飾, A rather than B, 関係代名詞のwhat, パンクチュエーション, such as ~, など(ブラジルで殺害されたジャーナリストと専門家)

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今回の実例も、前々回および前回と同じ記事から。

前回見た部分で指摘されていたように、ブラジルの現在のボルソナロ大統領はアマゾンの環境保護や先住民の権利の保護に熱心ではなく、というよりこれまでの政権が行ってきた保護活動を削減し、あの豊かな自然環境をカネに変える違法な活動を止めようともしていない。

そして21日、ガーディアンに、「ブラジルの副大統領は、ドム・フィリップスさんは酔っ払いに襲撃された『コラテラル・ダメージ』だ、と述べた」と報じる記事が出た。「コラテラル・ダメージ」とは、特に2003年以降のイラク戦争で米軍が民間人殺害の責任を逃れるために多用したことですっかり一般化したフレーズだが、「本来の標的を攻撃する際に生じた不運な巻き添え」という意味である。副大統領は、英国人ジャーナリストのフィリップスさんは、同行していた先住民専門家のブルーノ・ペレイラさんに対する襲撃の巻き添えとなったのだ、と発言したのだそうだ。これはおそらく、英国人は殺人の標的とされたのではないとすることで、事態の「国際問題」化を避けようとしてのことだろうが、事実の裏付けがあるわけでもなく、かなり無責任な発言なように思われる。

事件ではすでに3人の容疑者が逮捕されており、うち1人が捜査当局の現場検証に同行して遺体のありかを示すなどしていて、これまでに明らかになった殺人と遺体遺棄の経緯もその記事にわりと詳しく書かれているし、ロイターなども報じているので、事件とその背景についての関心がおありの方はそちらをチェックしていただきたい。

というわけで、今回の実例。記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回は、前回見たところのさらにずっと先、記事の締めくくりの部分から。

https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/jun/16/dom-phillips-bruno-pereira-death-war-on-nature

第1文:

The killings will chill journalists and editors covering the environmental frontline, but I hope it will inspire rather than deter.

太字で示した "covering" は《現在分詞》で、直前の名詞を修飾する句を導いている(後置修飾)。

下線で示した "rather than" は、《A rather than B》の形で《A not B》の意味を表し*1、「deterするのではなく、inspireする」という意味。

"inspire" は日本の受験英語でも出てくる語だが、"deter" はそういうふうには習わないだろう。私の場合は、90年代終わりに自宅でインターネットを使えるようにしたあとで新聞記事を通じて政治家などの発言を直接英語のままで読むようになったときに初めて「生きた」形で接した語のひとつである。短い語だが、日本で英語を学んできた人にとっては、ラテン語由来だったりギリシャ語由来だったりして長ったらしかったり接頭辞や接尾辞などに分解できるような語(いわゆる「難しい単語」)よりも、こういうシンプルな語こそが難しい。見たときに例文ともどもしっかり覚えておいて使えるようにしておくのがよいだろう。

文意は、「この殺害は、環境問題の前線を活動域とするジャーナリストたちや編集者たちをおじけづかせるであろうが、私としては、これが(人々に)思いとどまらせるのではなく鼓舞する方向に行くことを願っている」。

第2文: 

What happened to Dom and Bruno is not a one-off: it is part of a global trend.

太字にしたのは《関係代名詞》のwhatで、青字で示した《コロン》は、その前に述べられた内容が、そのあとで言い換えられている(別の表現で言い直している)ときに用いる。日本語に翻訳をする場合には「すなわち」などの語句で明示的に訳すとうまくいくことが多いが、論理が明確な場合は何もしなくても(訳出しなくても)大丈夫だ。

文意は「ドムとブルーノに起きたことは、単発の出来事ではない。それは、世界的なトレンドの一部である」。

その「世界的なトレンド」を、筆者はさらにそのあとの部分で詳しく述べている。

Over the past two decades, thousands of environment- and land-defenders have been killed worldwide. Brazil has been the most murderous country during that time. Some of the deaths cause a global storm, such as those of Chico Mendes, Dorothy Stang and now Bruno Pereira and Dom Phillips, but most go under-reported and uninvestigated. 

文法としては特に難しいところはないだろう。現在完了の受動態(受動態の現在完了)があったりもするが、解説すべきことがあるとしたら語句だ。

下線で示した "environment- and land-defenders" の "environment" のあとにあるハイフンは誤植ではない。これは、environment-defenders and land-defendersをまとめた表記で、複合語をandでつないで書くときの表記ルール通りになっている。

ただ、日常的に使うような文面(メールでのやり取りや個人ブログやTwitterのようなもの)では、そもそも environment defenders and land defenders というようにハイフンを省略して書くことが多いので、そういう場合はハイフンなしの environment and land defenders という表記になる。

太字で示した "such as ~" は、先行するものの具体例を挙げるときに使う。類義の語句でfor exampleとかfor instanceとの使い分けがわかりません、的な質問もよくあるのだが*2下記の解説が簡明である。

www.ielts-practice.org

文意は、「この20年にわたって、全世界で何千人という環境・土地保護運動家が殺害されている。ブラジルはその期間において最も殺害件数が多い。それらの死のうちのいくつか、例えばチコ・メンデス氏やドロシー・スタング氏、そして今回のブルーノ・ペレイラ氏とドム・フィリップス氏の死は、全世界規模の(非難の)嵐を引き起こしているが、ほとんどは報道の扱いも少なく、捜査もされずにいる」。

そしてキャプチャ画像の最後の文(途中で切れているが): 

If anything useful can come from the latest horror, let it be a recognition that these are not isolated cases.

この文が、前回見た "If anything positive can come from the mind-numbingly horrendous news, it should be for more journalists to cover this frontline, especially those regions controlled by leaders aligned with criminal interests." という文をなぞるような形で書かれていることにお気づきになったかと思う。if節についての文法解説は前回のエントリをご参照のほど。

主節の "let it be a recognition that..." は、《使役動詞のlet》の構文で、《let + O + 動詞の原形(原形不定詞)》の形。"a recognition that..." のthatは《同格》の接続詞だ。

文意は、直訳すれば、「もし何か有益なものがこの最新の恐怖から生じるとすれば、それを、これらは単発個別の事件ではないという認識にしよう」。この直訳では文意がわかりにくいかもしれないが、これ以上は翻訳の作業になり、当ブログで扱う範囲を超えるので、今日のところはここまで。

ペレイラさんとフィリップスさんの殺害事件については、まだ報道が続くと思う。この記事を書いたジョナサン・ワッツさんが述べておられる通り、捜査すらされないことが珍しくないような環境保護運動・先住民権利保護運動に関する殺人事件だが、被害者が英国人であったことで、英国のメディアも国際メディアも目を注いでいる。

当ブログでもまた記事を見ることがあるかもしれないが、当ブログがとりあげなくても、記事をフォローしていっていただきたい。ガーディアンでは下記ページに関連記事がまとめられている。

www.theguardian.com

 

 

 

 

*1:A rather than Bというと「BよりむしろA」と教わるだろうし、実際に「どちらかといえばAかな」という含みのある場合もあるのだが、この例のようにBを全否定する意味合いで用いられることも、実際には多い。

*2:私自身は単語帳の類で単語・熟語を覚えたことがなく、全部例文で覚えたので、その「使い分け」なるものに悩んだことはなくて、最初にその質問を受けたときに、何を言われているのかさっぱりわからなかった。

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