Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

等位接続詞and, 現在完了, 《期間》を表す前置詞over, 現在分詞と動名詞, 助動詞+進行形, 関係代名詞what, 劣勢比較, 前置詞+動名詞 (ポップスターの胸の内)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。個人の日記のようにつらつらと書き連ねられた息の長い文を読んで意味を取るのは、受験英語とはあまり関係ないかもしれないが、実用英語としてはけっこう大事なことだ。大学に入ってからの教科書が英語の場合、場合によってはかなり読みづらい(「悪文」と言われるような)ものを読みこなさなければならないこともあるし。

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昨日の続きで、ファンに向けたポップスターのSNS投稿を最後まで読んでみよう。

この投稿、全体的に《時制》に注目しながら読むと、よい勉強になる。特に《現在完了》の使い方についてはよいお手本になるだろう。自分で何か文章を書くときに、現在完了を使うかどうかで迷ってしまうという人は、ぜひ、この文章をじっくり検討してみてほしい。現在完了の使いどころがわかるはずだ。

 

 

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feel like ~, 現在完了進行形, 数字の書き方, 辞書に語義が載っていない表現, can't help but do ~, 強調構文, instead of -ing など(ポップスターのパーソナルな胸の内の吐露)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。自然な英語という点ではこの上ない実例だが、こういう文が実は案外難しかったりもする。何かわかりづらいなと思っても、先を急がず、落ち着いて丁寧に読むことが重要である。

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今回の実例は、ポップスターのSNSでの投稿から。

 

活動を停止している英国のボーイバンドOne Direction (1D) の一員であるルイ・トムリンソンは、現在は1Dの他のメンバーたちと同様にソロ歌手として曲をリリースしたり、自身の芸能界入りのきっかけとなったオーディション番組「Xファクター」の審査員を務めたりしている。

今年3月にTwo of Usという曲をリリースしたが、曲の良しあしとは別に売れているかどうかで判断すると、全英シングル・チャートで64位と、1Dでトップを極めた実績のある歌手としては、とても好調とは言えない。

 

この曲は2016年12月に43歳の若さで白血病のため他界したお母さんのことを歌ったもので、チャート順位という結果が出なかったことでルイ・トムリンソンはきっと、正直残念な思いをしたことだろう。しかもこの曲を出した数日後に、妹のフェリシティがわずか18歳で心臓発作で急逝してしまった。ショックを思えば当然のことながら、新曲リリース直後にもかかわらず彼のTwitterは止まってしまった(1か月ほど経過した4月17日にようやく「暖かいご支援のメッセージをありがとうございます。今日、スタジオに戻りました」とツイートしている)。

 

その彼が「胸の内にあるものを吐き出したくて」と4月22日に投稿したのは、長文のメッセージだった。

 

「みんな結果結果と言うばかりで、過程を楽しむということをしなくなっているということについて、最近、ある人が非常に興味深いことを言ってて、それで、自分にとって成功って何だろうなと改めて考えている今日この頃です」(意訳)と書き出されているこのツイートは、なかなかに重い内容だ。ポップスターとして頂点を極めた彼が、ソロ・アーティストとして当然と考えてきた「成功」のありかたを見直している、という。

 

以下、この文を実例として見ていこう。今回はいつもの「対訳」(逐語訳)ではなく「翻訳」のようなことをしているので、訳文から英語を見てもちょっとピンとこないところもあるかもしれないが、アーティストのメッセージを受け取っていただければと思う。

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接続副詞however, neither A nor B, admit -ing, 関係代名詞, 分詞構文(スリランカの武装集団)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。意外と見落としがちな基本事項がたくさん入っているので、受験生のみなさんには本番前の仕上げの一環として読んでいただければと思う。

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今回の実例は、2019年4月21日のイースター・サンデーの日にスリランカで起きた、あまりに残虐で非道な連続爆弾テロを実行したと考えられる集団についての解説記事から。

今回の連続テロは、イースターの日曜日(受難したキリストが復活した日)というキリスト教徒にとって宗教上最も大切な祝日に、カトリック教会を標的として起こされた。当日は、画面を見るたびに死者数が増えていくのを見ていて、まさに言葉を失うよりなかった。このような卑劣な暴力で人生を断ち切られた人々、人生が大きくゆがめられた人々や、大切な家族・友人・同僚・恩師・生徒を奪われた人々のことを思うと、圧倒的な悲しみに襲われる。亡くなった方々に哀悼の意を表し、負傷させられた方々のご回復と影響を受けたコミュニティの傷が癒える日が来ることを願うばかりである。

スリランカは10年前の2009年まで、何十年にもわたって内戦が続いていた。この内戦はシンハラ人の政府と、タミル人の武装勢力LTTE(「タミル・イーラム解放の虎」)との間のもので、大まかに、前者は仏教徒、後者はヒンズー教徒という構図だった。政府もLTTEも一切容赦というものがなく、内戦は熾烈なもので、内戦終結が宣言されるまでの最後の数か月だけで何万人という民間人(一般市民)が犠牲になっている。詳細はウィキペディアにもよくまとまっている

そのスリランカでは、イスラム教徒は全人口の10%にも満たないくらいのマイノリティであるが、その中にごく小規模な過激派集団があり、仏教寺院で建物の外にある仏像の顔を壊すなどの破壊活動を行なうなどしていた。そして今回の爆弾テロは、その過激派集団の中のさらに過激な分派*1が実行したとみられている。

しかし、その元の過激派集団ですら、ローカルな存在として国内の一定範囲では知られているかもしれないが、国外とのつながり(国際的なネットワーク)は特に持っていなかったと考えられてきた集団で、つまり国外ではほとんど知られていない。そしてその分派となればなおさら、ほとんど何も知られていない。

というわけで、テロ事件後、英語圏の国際メディアはだいたいどこも「聞いたことのない組織だが、こういう組織である」という解説記事を出すことになった。今回実例として見るのは、英BBC Newsのそういう記事である。

記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:一般論として、「分派」というのは、元の組織がヌルいと感じた人々の集団で、元が過激派なら分派は超過激派ということになることが多い。

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howの節, it is ~ to do ..., 分詞の後置修飾, 《同格》のof, 知らない単語があったときの文意の推測, やや長い文(英文読解), 過去完了など(この10年の科学を振り返る)

今回の実例は、年末になると各紙に出る「この1年を振り返る」系の記事から。

普段なら振り返るのは「この1年」なのだが、2019年は10年の区切りの最後の年でもあるので、「この10年を振り返る」という記事も多く出ている。今回見るのはそのような記事のひとつで、カテゴリーは「科学」。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

まず見出しに、"have an axe to grind" という慣用句のバリエーション、"with an axe to grind" が入っている。have ~とwith ~は動詞と前置詞という大きな違いがあるが、どちらも《所有・所持》を表すことができるので、このような書き換えは日常の英語でよく見られる。

  Can you see the boy who has a large paper bag? 

  Can you see the boy with a large paper bag? 

  (大きな紙袋を持った男の子が見えますか)

"have an axe to grind" は直訳すれば「研ぐべき斧を持っている」だが、「思惑がある、下心がある」という意味の慣用表現として用いられる。さらにイギリス英語ではより狭く、「何かにかこつけて自分の言いたいことを言う、何かをダシにする」の意味で使われる。ちなみに語源(いわれ)は不詳だ。詳細は下記ページを参照。

www.phrases.org.uk

 

今回の記事は、Laura Spinneyさんというパリを拠点とするジャーナリストが書いたもので、この10年間における科学分野での顕著な発展や新発見などをたっぷり列挙したあとで、アンドルー(アンドリュー)・ウェイクフィールドに言及している。

ここ1~2年の間に、北米や西欧で、いったんはほぼなくなっていた麻疹(はしか)が再度大流行するようになってきていること、その背景にあるのが親が子供にワクチン接種を受けさせない「ワクチン拒否」であることは、日本でもそれなりに大きく伝えられている。ウェイクフィールドは1990年代終わりから2000年代にかけて、その「ワクチン拒否」を煽動/先導した人物である。彼は英国の医師だったが、1998年に権威ある医学誌に「新三種混合ワクチンにはこんなに恐ろしい副作用が!」という内容の研究論文(と称するもの)を発表した。「新三種混合ワクチン (MMR)」は麻疹・おたふく風邪・風疹を防ぐために生後9~15か月の子供に接種されるもので、ウェイクフィールドの論文(と称するもの)の要旨は、さまざまな経路を伝わって副作用を恐れる親たちの間に広まり、「MMR忌避・拒否」の波を引き起こしたわけだ。その後、2010年になってウェイクフィールドの論文(と称するもの)には重大な問題がある(元になったデータが虚偽だった)とされ、掲載誌が論文を撤回、つまり「あの論文に書かれていたことは、科学的に妥当なものではない」との見解を公に示しているのだが、一度ばら撒かれた虚偽情報が引き起こした不安は、時間が経過しても完全には消えない。この件については日本語でも記事が読めるので、どういうことか知りたいと思った方は、ぜひ下記の記事に目を通していただきたいと思う。

gendai.ismedia.jp

今回の記事の見出しにある "those with an axe to grind" は、このような、「ニセ科学」を撒き散らすことで利益を得ようとしている人々のことを言っている。

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【ボキャビル】festive, gesture, hirsute (クリスマスに、どう見ても〇〇〇な銀行強盗)

今回の実例は、クリスマス・シーズンの珍ニュースから。

クリスマスが商業イベントのひとつに過ぎないような扱いの日本では、12月24日のクリスマス・イヴがメインの日で、クリスマス・デーの25日まではスーパーマーケットなどで売られているような大量生産のお菓子やパンなどでも緑と赤のクリスマス仕様のパッケージのものが並べられているものの、26日になるとそういった商品は棚から姿を消し、店内のクリスマス・ツリーなどのデコレーションも撤去されて、日本のお正月のための商品や飾りつけ(門松や鏡餅や、羽子板と奴凧のガーランドなど)にとって代わられる。住宅街でも、26日以降もクリスマス・ツリーやサンタの人形が飾られていたら「だらしない」と陰口をたたかれるとか(知人談)。

一方、キリスト教西方教会東方教会ではまた微妙に違う)では、クリスマスの終わりは年をまたいで、宗教的には「公現祭」と呼ぶ日で、だいたい1月6日くらい(詳細はリンク先参照)。ツリーなどはそのころまで飾っておく。最近日本にも「アドベント・カレンダーというイベント」として入ってきたが、クリスマス・シーズンの始まり*1である「アドベント」が11月下旬から12月初旬なので、シーズンはおよそ1か月かそこら、続くことになる。

先日、ディケンズに関連する記事を取り上げたときも少し触れたと思うが、この間、特にクリスマス・デーが近づいた日々は「心を穏やかにし、他人に親切にする」ということが習慣づいており、チャリティの募金が大々的に行われ、英語圏の新聞や雑誌には「人生や家族をめぐるちょっといい話」の記事や随筆が掲載される。それらの記事や随筆は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』で偏屈で自分のことしか考えていないスクルージを改心させた3人の幽霊のような役割を果たす(はずだ)。

だから今年も、トランプ弾劾(米)だとか、嘘に満ちたジョンソン政権(英)だとか、原野・森林の火災(豪)などいろいろあるけれども、そういったことを一瞬だけ忘れて、より人間らしいことを考える時間を読者に与える記事が、BBCなどにも出るだろうと思っていた。実際、出てるんだけどね。これ(北アイルランド紛争関連)とか、これ(ベツレヘムで羊を飼って暮らしているベドウィンの人々とクリスチャン)とか。

だが、それらの記事より、ある意味、目立っていた記事があった。この時期、この写真は、インパクトがあまりに強い。

www.bbc.com

この記事を読み終わったとき、私は「その名を用いることなく、いかにこの事件を描写できるかということに果敢に挑んだ秀作記事。最後の1文によってもたらされるカタルシスに読者は圧倒されるであろう」とツイートしたスマホの画面におさまってしまうくらいの短い記事なので、みなさん、どうか読んでいただきたい。

*1:宗教的に言えば、イエス・キリストの誕生を待ち(アドベント)、迎え(クリスマス)、広く知らしめる(公現祭)のがクリスマス・シーズンである。

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to不定詞の形容詞的用法, 言い換え, 言い足し, make + O + 動詞の原形(使役動詞), begin -ing, 挿入など(バンクシーが表現するキリスト降誕とイスラエルの違法な壁)

今回の実例は、正体を明かさず活動しているアーティストが、国際法に違反したコンクリート壁に分断されたキリスト生誕の町に捧げた作品についての記事から。

意外と知られていないかもしれないが、イエス・キリストが生まれたという町、ベツレヘムは、パレスチナにある。ヨルダン川西岸地区だ。そしてヨルダン川西岸地区は、ガザ地区のように完全に包囲・封鎖はされていないにせよ、イスラエルによって、かなりひどいとしか言いようのない形でいろんな方向で制限を受けている(などという表現では全然足りていないのだが)。パレスチナというとイスラム教というイメージがあるかもしれないが、それはイメージだけで、キリスト教徒のパレスチナ人も少なくない。日本のように宣教師がやってきて布教したのではない。元々、イエス・キリストはこの土地の人だったのだから。

ベツレヘムのクリスマス・イヴについては、数年前に現地報告を記録したページを作成した。

matome.naver.jp

 

イギリスのブリストル出身のアーティスト、Banksy(バンクシー)については、近年、東京など日本でもその「作品」をめぐる狂騒曲が繰り広げられ、メディアも大騒ぎするようになってきたので、説明は不要だろう。アーティストとしての芸名からおそらくBanksさんという名字ではないかと言われてはいるが*1、彼は顔も本名も生年月日も明かしていない。男性であることはわかっている。1990年代から都市の壁などにステンシルとスプレー缶で「作品」を描いてきたグラフィティ・アーティストだが、そのウィットに富んだ作品が町の風景の中で抜群の存在感を放ち、2000年を過ぎてどんどん注目されるようになって、ここ10年くらいは完全に「大物アーティスト」のようになって、作品はオークションハウスで取り扱われ、ものすごい額で落札されるなどしてはBBC Newsで報じられている。元々は街角の落書き小僧だったのに、今ではエスタブリッシュメントが「彼は経済的価値を持った存在だ」と認めている。

彼は一貫して「抵抗」、「異議申し立て」をベースにした作品を描き続けている。下記の作品集 "Wall and Piece" は比較的早い時期の作品の集大成と呼べるものだが(日本語版が出たのは遅かったが、原著は2007年)、この書籍タイトルは "Wall and Peace" のもじりである。 

Wall and Piece【日本語版】

Wall and Piece【日本語版】

 

この作品集が出されたころにwallとpeaceと言えば、即座に連想されたのが、イスラエルヨルダン川西岸地区パレスチナ自治区)内に食い込む形で無理やり建設した分離壁である。この「分離壁 separation wall」(国際司法裁判所の用語)は、英語圏のメディアの多くは「分離バリア separation barrier」と呼んでいるが、barrierも結局はwallと同じことだし、本稿での訳語は「分離壁」に統一する。ちなみに当事者のイスラエルはこれを「フェンス」と呼んでいる。そういったことは英語版ウィキペディアで確認できるので、各自ご参照いただきたい。これが「フェンス」と呼べるものかどうかは、どう見ても微妙なところだ。

イスラエルとしては、このwall/barrier/fenceは、「イスラエルの平和 (peace) を守るため」のものだが、その説明を額面通りに受け取ることはとても難しい。まともに地図を見ることができる人なら誰もが、「いや、その説明はおかしい」と言わざるを得ないような場所に作られているのだ。実際、国際司法裁判所は2004年にこの壁について「違法」と判断している(ただしこの判断は法的拘束力はないので、それから15年を経過した今も壁がそのままだ)。

この壁に、Banksyは絵を描いた。2005年、今から14年も前のことだ(→当時の拙ブログ記事)。

Près de Qalandia

 

パレスチナに対する彼の関心は一過性のものではない。2007年には、やはりベツレヘムに、現在でも観光資源となっている一群のミューラル(壁画)を描いていった。2015年2月には、イスラエルによる大規模な攻撃を受けたばかりでめちゃくちゃに破壊されていたガザ地区に入り、がれきと化してしまった家屋の壁にかわいい子猫の絵を描くなどした。「普段はパレスチナに無関心な世界の人々も、猫が描いてあれば見るんでしょ」という主旨でもあり、猫が好きなパレスチナの人々(特に子供たち)への贈り物でもあった。

そして2017年3月には、ベツレヘムの、分離壁からわずか数メートルのところにある建物を(ウォルドーフ・ホテルならぬ)「ウォールド・オフ・ホテル Walled Off Hotel」として改装・開業。このホテルには世界中からBanksy好きが訪れ、それによって壁に分断され経済的に発展する余地すらも奪われているベツレヘムの町に、キリスト教聖地巡礼とはまた違った層の観光客を呼び込み、同時にこの町のさらされている苦境を多くの人に知らしめている。

matome.naver.jp

そして2019年のクリスマス、Banksyはこの壁際のホテルに、新たな作品を設置した。今回は立体作品で、クリスマスの時期の伝統的なモチーフを扱っている。イエス・キリストの降誕(英語ではThe nativity of Jesus Christ)だ。

キリストの降誕の場面は、視覚芸術では、聖母マリアとその夫のヨゼフ、かいば桶に寝かされた幼子イエス、動物たち(ロバとウシ)によって描かれるというお約束がある。これに加えて、神の子の誕生を告げる星(「ベツレヘムの星」。この星に導かれて東方の三賢者がイエスの元にやってきた。クリスマス・ツリーのてっぺんに飾るのもこの星)と天使もよく描かれる。今回のBanksyの作品もこの伝統にのっとっている。ただし、マリアとヨゼフとイエスがいるのは小屋の中ではなくあの分離壁の前で、3人の上にあるのは輝く星ではなく、星のような形をした砲弾痕だ。壁には消えかかった文字で、「愛」「平和」という言葉が、英語とフランス語で書かれている。作品のタイトルは、The Star of Bethlehem(ベツレヘムの星)ならぬ、The Scar of Bethlehem(ベツレヘムの傷痕)。

 

この「新作」のことは、21日から22日に各メディアで一斉に記事になった。今回実例として見るのはガーディアンの記事。記事はこちら: 

www.theguardian.com

*1:英語圏では語尾に-yまたは-ieをつけて愛称化する習慣がある。Charles→Charlie, Steve→Stevie, Giggs→Giggsyなど。

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紛らわしいthatの用法, 感覚動詞+O+動詞の原形, 前置詞+動名詞, want to do ..., want ~ -ing, want ~ to do ... (アーセナル新任監督、ミケル・アルテタの抱負)

今回の実例は、スポーツのチームで、新任の監督が抱負を語ったという記事から。

アーセナルFCは、20年以上チームを率いたアーセン・ヴェンゲル監督が退任したあとを受けたウナイ・エメリ監督のもとでぐだぐだになってしまい、サポーターからの「エメリ辞めろ」のコールが日に日に高まる中で、クラブのフロントも11月の終わりについにエメリの解任を決断、後任が決まるまでの臨時の監督に、エメリのアシスタント・コーチで、かつてアーセナルで活躍したプレイヤーでもあるフレドリック・ユングベリが任命され、一方で正式な後任監督の人選が続けられた。その結果、最終的に監督になったのは、同じくかつてアーセナルで活躍したプレイヤーであるミケル・アルテタ

アルテタはバスク出身で、プレイヤーとしてはイングランドでの経験が最も長い。2005年から11年をエヴァトンで過ごし、11年から16年をアーセナルで過ごして現役を引退。その後はマンチェスター・シティでアシスタント・コーチを務めていた。アルテタは実はヴェンゲルが退任したあとの後任に取りざたされていたのだが、そのときは経験のなさからか登用されず、すでにパリ・サンジェルマンなどでたっぷり実績を積んでいたエメリが選ばれていた。そのエメリがチームをまとめることができず、ぐだぐだになってしまったアーセナルを何とかできるのは、アーセナルをよく知るアルテタだと期待されての人選と思われる。

というわけで、とにかく期待がものすごいふくらんでいるのだが、その期待をふくらませているのは第一に(サポーター以前に)スポーツ・ジャーナリズムである。今回の記事はそういうコンテクストの中にある記事だ。こちら: 

www.theguardian.com

「チームを一つに団結させていく」ということを表すためには、"will not tolerate dissenters" という表現は、なかなか、刺激的である。記事本文(アルテタの発言が多く紹介されている)には "dissenter" という単語は入っていないようだから、これはアルテタ本人の言葉ではなく、見出しを書いた人がブチ上げた「派手で人目をひく見出し」にすぎないのだろう。こういう見出しづくりは、スポーツ新聞の類(タブロイド)でなくてもよく行われる。にしても、ちょっと過激すぎると思うが……。

 

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【ボキャビル】apologise for ~, 過去分詞単独での後置修飾, 動名詞の意味上の主語, 未来完了など(落選議員の泣きっ面に蜂)

今回の実例は、12月13日の総選挙で残念ながら議席を失った議員が見舞われた悲劇についての報道記事より。

イギリスの国会議事堂は、観光ガイドブックの表紙にもなっている例の時計塔(ビッグ・ベンの塔)の横に広がっている豪奢な建物で、あの中には上院と下院の議場やロビーはもちろん、国王のためのスペースがあったり、議員や秘書・職員のための図書・資料室や食堂やバーがあったりするのだが、そういった「みんなで使うスペース」の他に、各議員のオフィスもある。

それらオフィスは2人で1部屋を使うこともある。そうして「オフィスメイト」になった議員同士として有名なのがトニー・ブレアゴードン・ブラウンである。この話を書き始めると長くなるので端折るが、ブレアとブラウンの物語をスティーヴン・フリアーズが映像化したThe Dealでは、2人の友情とライバル関係の始まりの場となるこのオフィスから物語が始まる。


The Deal (Stephen Frears)

これはセットで撮影されていると思うが、実際の議員のオフィスも、こんな感じの狭苦しいスペースだそうで、そこに各議員が書籍やら書類やら、パソコンやら何やら、議員としての仕事に必要なものを持ち込んでいる。替えのスーツやネクタイなどを置いている人もいる。

 

今回の記事は、13日の総選挙で議席を失った(元)議員が、そのようにしてオフィスに置いてあった私物が、勝手に処分されてしまっていたというあまりに気の毒な件についての報道記事である。記事はこちら: 

www.theguardian.com

見出しにある "incinerate" という単語は、大学受験生は覚えておかなくてよいが(長文に出てきたら語注を付けるレベルの語)、「~を焼却処分する」という意味。はてなブログでURLを埋め込むとこの見出しで表示されるが、実際にリンクをクリックすると "incinerated" ではなく "destroyed" と書かれていると思う。英検1級を受験する人はここでこの2つの語をほぼ同義の類義語として覚えてしまえばよいボキャビルになるだろう。

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やや長い文、to不定詞の形容詞的用法、関係代名詞と前置詞、let + O + 動詞の原形(アースデイ)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。今年大学受験する人はそろそろ仕上げの時期だが、一定のレベルを目指す人は、この実例は一度読んだだけで構造を取ったうえで意味が把握できるようにしておきたい。今の自分の実力を確認するつもりで読んでいただけれはと思う。

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今回の実例はTwitterから。

f:id:nofrills:20190423014641j:plain4月22日は「アースデイ (Earth Day)」で、Twitterでもハッシュタグの #EarthDay がTrendsのトップに入っていた(UKで見た場合)。

ハッシュタグで投稿されていたツイートの内容は、大半が「地球を大切にしよう」という趣旨の呼びかけに美しい自然の光景・風景の写真が添えられたふわっとした感じの環境保護主義のものだったが、中には環境問題について先進的な取り組みをしていることをアピールする企業のツイート(例えば2020年までに使い捨てのプラスチックやビニールを8割削減する方針を打ち出したエティハド航空のものなど)や、より強いメッセージを打ち出した環境保護団体のもの(例えば、BBCの自然番組の顔であるサー・デイヴィッド・アッテンボローのメッセージ・ビデオを添えたWWF UKのものなど)もあったし、アポロ計画で月面に降り立った米国の宇宙飛行士の1人、バズ・オルドリンさんは、月から見えた地球の写真をツイートしていた。

その中にあったのが、今日実例として見るツイートである。

 

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「used to do ~」の熟語か、「used + to不定詞の副詞的用法」か(ベトナム戦争の負の遺産の後始末)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。こういう構造を素早く正確に把握できるかどうかは得点力に直結するので、大学受験前に十分に練習しておきたい。

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今回の実例は、米軍がベトナム戦争のときにベトナムの国土の上に使用した枯葉剤エージェント・オレンジ)に汚染された空港の後始末が、戦争が終わってから40年以上も経ってからようやく始まるという報道記事から。

 

記事はこちら: 

www.bbc.com

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やや長い文、助動詞+have+過去分詞、関係代名詞、など(チャールズ・ディケンズ、生涯最後のクリスマスに届かなかった七面鳥)

今回の実例は、クリスマス前の「小ネタ」系記事から。

チャールズ・ディケンズという名前は日本でもよく知られている。19世紀ヴィクトリア朝の英国を代表する小説家のひとりだ。当時の超売れっ子の流行作家で、ものすごい多作なのだが、中でも『クリスマス・キャロル』『オリヴァー・ツイスト』、『二都物語』、『大いなる遺産』といった作品は20世紀、に複数回映画化されていて、本を読まない人でも話を知っていることが多い。現地(英国)では「教科書に必ず載っている文豪」という存在なので、誰もが一度は何かしら作品を読んだことがある。日本で言えば夏目漱石と言われることもあるが、実際に作品に接する機会の多さでは宮沢賢治みたいな存在じゃないかと思う。いや、実際にはそれ以上で、アートフル・ドジャーやフェイギンやスクルージといった登場人物がその小説の外で認識されるくらい、常套句を用いれば「国民に親しまれている」作家だ。当然、とっくの昔に著作権は失効しているから、作品はネットで自由に読めるようになっている(下記、プロジェクト・グーテンベルクへのリンク参照)。何か読むものを探しているという方は見てみるとよいと思う。19世紀の英語は、勝手にイメージするほど古臭いものではない。

www.gutenberg.org

 

私自身、ディケンズは、中学・高校のときに日本語訳を学校の図書館で借りて読んでいるのと、映画化作品を何作か見ているだけで、実際のディケンズの文を読んだことはほとんどない。大学受験のときに使った問題集で長文の素材文として使われていたり、大学で読んだ論文に一部抜粋が入っていたりしたので断片的に読んだことはあったが、小説としてディケンズの書いたものをそのまま読むという機会はないままだった。先日、ちょっとしたきっかけがあって『クリスマス・キャロル』を読んでみたのだが、とても読みやすくて楽しめる英文だ。必要があれば日本語訳(多数出版されている)と照らし合わせて読んでみてもよいだろう。寛大さと善行、思いやりという、英語圏での現在の「クリスマス・スピリット」を決定づけたのが、この小説だそうだ。

www.gutenberg.org

 

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

  • 作者:ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/12/02
  • メディア: 文庫
 
クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/11/09
  • メディア: 文庫
 

 

というわけで今回の記事はこちら。そのディケンズが、生涯最後となった1869年のクリスマスをどう過ごしたかがわかった、という「小ネタ」記事。長らく忘れ去られていた書簡が再発見されたのだそうだ。

www.theguardian.com

 

この記事は、最初のパラグラフで全体の内容のあらましが書かれ、2番目のパラフラグから後で内容が詳細に説明されている。これが報道記事の標準的なスタイルだ。このスタイルの文章は、出だしのパラグラフを読んでよくわからなくても、そこで止まらずに先に進んで読んでいくと内容がつかめる。

分量がある記事ではないので、全文に目を通していただきたい。

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報道記事の見出し、見出しにおけるto不定詞、分詞構文、to不定詞の形容詞的用法、など(ドナルド・トランプ弾劾)

今回の実例は、つい先ほどのニュースから。

今日2019年12月18日から19日(時差により日付が変わる)に世界的に最も大きな関心を集めているのは、米国議会下院でのトランプ大統領弾劾決議だ。決議は「権力の乱用」と「議会の妨害」の2点について行われ、最終的には2点とも可決された。

最初の「権力乱用」での決議の結果が出たのが日本時間で19日の午前10時半前、続いて「議会妨害」の結果がその20分後くらいに出た。

 

これを伝える英BBC Newsとガーディアンのトップページ(アプリ版)は、11時少し前の時点で、下記のようになっていた*1。 ガーディアンの方に出ているリード文(見出しの下の文)を見ると、この画面は2件目の決議(「議会の妨害」)の投票が進行中の間に作成されている。

f:id:nofrills:20191219113607j:plain

 

*1:米国のメディアは個人的にチェックしていないのだが、もっと大きく扱っているのではないかと思う。

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分詞構文、省略語で使うピリオドの有無(英米差)、定冠詞のtheの省略、be known for ~など(パキスタンの元大統領に反逆罪で死刑判決)

今回の実例は国際報道の記事から。

2001年から08年の間に意識があった大人なら「むしゃらふだいとうりょう」というフレーズは「ムシャラフ大統領」と即座に認識されるだろう。米同時多発テロからイラク戦争へと突き進んだ時代、国際ニュースで何度も出てきた名前だ。多くの人は、彼がパキスタンの大統領だったということも知っているだろう。

だがそのムシャラフ大統領がどういう人だったか、またいつ「大統領」になり、いつ退陣したのか、その後はどうしていたのかは知らない人がかなり多いんじゃないかと思う。ニュースに出なくなり、言及されることもなくなったからだ。

また、2008年までに国際ニュースをそれなりに熱心に見るという経験がなかった人は、まったく名前を知りもしないかもしれない。2005年ごろに小学生だった男性は「ムシャラフ」という名前が何か強そうだったし、テレビで見た顔が印象的で(「人の好さそうな丸顔なのに眼光だけやたらと鋭い」と)覚えてしまったそうだが。

そういう人でも、今回の記事の中ほどに "At a glance" として箇条書きの簡潔な年表みたいなのが挿入されているので、まずはそこを見ればどういう人なのかがわかるだろう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

見出しだけでも十分に衝撃的だと思うが、この報道内容については日本語報道を参照しておくのがよいだろう。

www.jiji.com

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as ~ as ..., 《条件》を表す直説法のif節, those who ~, spend ~ -ing, the + 比較級 ~, the + 比較級 ...

今回の実例も、前回のと同じ、労働党の大惨敗に終わった総選挙の結果を受けて労働党の国会議員であるジェス・フィリップスが書いた論説記事*1から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回見るのは、前回見た部分のすぐ次のところから。

*1:ガーディアンは労働党の新聞だし、こういうのは「論説」ではなく「総括」と言うのかもしれないが、個人的にそういう用語に疎くて使いどころが分かっていないので、その点はご容赦いただければと思う。

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《感情》の原因を表すthat節, thousands of + 複数形, 動名詞, 《同格》のthat節, get used to -ingなど(労働党の大敗を直視する労働党議員)

今回の実例はガーディアンに掲載された論説記事より。

12月12日(木)に行われた英国の総選挙の結果は、広く日本でも報道されている通りで、獲得票数を分析すればまた違った像が現れるのかもしれないが、獲得議席数(選挙の結果を語るのは議席数だけである)では保守党とスコットランドのSNPのバカ勝ち・労働党の大惨敗という結果になった。大雑把なところをざっくり書いたものが本家ブログにあるので、関心がある方はご参照のほど(高校生向けにわかりやすくは書いていない)。

nofrills.seesaa.net

 

保守党の勝ち方の規模については、直接の数値はこの秋にボリス・ジョンソンに反対した保守党の議員たちが21人も党を追われたことを勘案して見るべきなのだが、保守党がどこで議席を獲得したかを見れば、もうそういう域は超えてるとしか言いようのない結果だ。つまり、これまで一度も保守党議員を出したことのない、労働党が地盤としてきたイングランド北部の選挙区が、労働党候補を落選させる例が相次いでいる。

議席が確定した投票翌日までは、ショックと混乱、拒絶・否認と怒りという感情が渦巻いていたが(特にコービン労働党を支持していた人々の叫びは、一部「お前らがそういうふうだからこうなったんだよ」と思わずにはいられないものもあったが、ほとんどは本当に悲痛なものだった。みんな信じていたのだし、みんな献身的だった、それは事実だ)、翌々日の土曜日になると、その衝撃の事実を前に、多くの労働党関係者・支持者が非常に厳しい分析を行うようになっていた。

今回見るのはそのような分析のひとつで、筆者はジェス・フィリップスイングランド中部の大都市、バーミンガムの選挙区の1つから今回も選出された労働党の国会議員で、1981年生まれと若い政治家だ。バーミンガムで生まれ育ち、大学はリーズだが大学院はバーミンガムで、選挙のために住所を移してきたような人ではない。つまり、彼女は彼女の選挙区をよく知っている。そういう人が忌憚なく現状を分析して書いた文章である。記事はこちら: 

 

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