Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

so ~ that ... 構文, 等位接続詞and (ロンドン、富裕層を悩ませる防犯・警備)【再掲】

このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。so ~ that ... 構文のthatが、わりと珍しく、省略されずに記載されているので、構造が見つけやすい実例となっている。

-----------------

今回の実例は、知られざるロンドン富裕層事情を報じる記事から。

今年7月、ロンドンから衝撃的な映像がTwitterのサッカー系アカウントなどを通じて流れてきた。英国では至る所に設置されている防犯カメラ(現地では closed-circuit TV, 略してCCTVという)の映像で、黒くてごっつい車がヘルメットをかぶった男たちに襲われていて、がたいの良い短パンの男が華麗なステップをふんで襲撃者を退散させている現場が撮影されている。

www.youtube.com

襲われている車はアーセナルに所属するフットボーラー、メスト・エジルのもので(先に乗り込んでドアを閉めている赤いシャツの人物がエジル)、暴漢を追い払っているのは同じくアーセナルセアド・コラシナツ。2人ともドイツ出身でイスラム教徒の移民の家庭の出身という共通点を持ち(エジルはトルコ系、コラシナツはボスニア系)、ロンドンでも仲良くしているようだ。この日、彼らはそれぞれのパートナーと連れ立って食事に出かけようとしたところを、賊に襲われたらしい。

コラシナツは「ボスニアのハルク」とか「バルカンの戦車」とあだ名される屈強なディフェンダーだが、それにしたってめっちゃ長い刃物(柳刃包丁より長いように見える)を持った暴漢に素手で立ち向かうのはすごすぎる。このビデオがネットで回覧されたとき、それに添えられていた言葉は、「ヒーロー」的な賞賛の言葉(アーセナルのファンばかりでなく、ビデオを見て回覧する人はみなそう感嘆していた)。

このあとしばらくして、27歳の男2人がエジルの家のところで警備員と何かあったとかいう容疑で逮捕・起訴されたのだが、この逮捕と、7月の車襲撃とは直接関係しているような感じではない。詳細が報道されていない(明らかにされていない)のだが、むしろ、7月の襲撃で注目を浴び、メディアのカメラが陣取るなどしていることでエジルの豪邸が狙われるようになったのだろうとGoal.comでアーセナルを担当している記者は述べている

この27歳の男2人が逮捕されたのが8日の木曜日で、その週の土曜日にアウェイで行われたプレミアリーグの開幕戦(対ニューカッスル)にはエジルとコラシナツは帯同しなかった。短い期間に複数回標的にされており、家族をロンドンに残してニューカッスルまで行けるような状態ではなかったという。このときのアーセナルステートメント(ツイート内の画像をクリック/タップで全文読めます): 

 

というわけで、ひょんなことからロンドン北部の富裕層が多く暮らすお屋敷街が広く関心を集めることになっているというのが現状である。

ロンドン北部には、道路から建物(家)がやけに遠く感じられるようなお屋敷街があり、そこにはエジルらのような高給取りのスポーツ選手だけでなく、芸能人や財界人などを含め、お金持ちが多く暮らしている。私も人の車でそのエリアを通ったときに、「ここはミュージシャンの〇〇さんの家」、「あそこは映画スターの〇〇さんが前に住んでた」などと教えてもらったことがあるが、自分がいたエリアと比べて、同じロンドンとは思えないようなハイソな街並みだった。そのお屋敷街の近辺は高級住宅街で、街路樹に彩られた通りに沿って並ぶ手入れの行き届いた前庭のある家々には、例外なくセコム的なセキュリティ・アラームが設置されていたが、建物から道路の距離はそんなになく、格の違いというのはこういうふうに表現されるのかななどと思ったものだ。

閑話休題。記事はこちら: 

www.theguardian.com

続きを読む

「4分の1」という区切り方, 完了分詞構文(世界で初めて核兵器が使われて75年の日に、広島に寄せられたメッセージ)

今回の実例は、アイルランドの大統領のコメントから。

今年、2020年は、1945年の第二次世界大戦終結から75周年の節目の年である。「75年の節目」というのが日本語圏では伝わりづらいようだが、西洋*1では「4分の1」をひとつの区切りとするのが習慣になっていて、1世紀(100年)の4分の1、つまり25年区切りで、「大きな節目」とするのが慣例である。

この「4分の1」、つまりクオーター (quarter) は、ビジネス分野での「四半期」や、ハンバーガーの「クオーター・パウンダー」(重さの1パウンド、つまり1ポンドの4分の1、グラムに換算すると115グラムくらいの肉を使ったハンバーガー)、時刻の「15分」("quarter to ten" で「10時15分前」、つまり「9時45分」、"quarter past eleven" で「11時15分」)などとして日常生活の中に溶け込んでいるので、英語圏で生活しようという人はこの感覚に慣れておくとよい。具体例が下記のブログによくまとまっている。

talking-english.net

 

さて、というわけで第二次世界大戦終結から75年(three quarters)が経過した今年は、1月27日のアウシュヴィッツ収容所解放記念の日(国際ホロコースト記念日)の式典は、BBCなどでは例年よりさらに大きく伝えられていたし(日本語圏では、欧州各国、特にドイツでの排外主義極右の伸長と反ユダヤ主義の再燃という現象を焦点とした報道が多く、「75周年」を強調したものはなかったかもしれない)、5月8日の対独戦勝記念日 (Victory in Europe Day, つまりVE Day) は、欧州では新型コロナウイルス感染拡大のために導入されていたロックダウンのために予定されていたような大々的な儀式は行えなかったかもしれないが、報道機関ではみっちりとした特集記事を組んでいたし、ロシアでは、さすがに5月のパレードは延期という判断になったが、6月下旬に大々的なパレードを行っていた

だから、広島への原爆投下――というか、世界全体の文脈では、「核兵器が実際に人の住まう都市に対して戦争の中で使われた最初の例」――から75年となる今年、例年にも増して熱心な世界の目が広島の平和祈念式典に向けられた理由のひとつは、「節目」だからである(核兵器禁止条約という大きなことも進行中で、そのための注目という要素もあるのだが、「唯一の被爆国」を強調してきた日本の首相がそれについては「日本モデル」とか言わずにおとなしくしているのが不思議だ)。

そういう中で、何もなければ直接広島に来て式典に参加していたに違いない各国の国家元首や政治指導者たちが、広島市長の呼びかけに応じ、stay homeしながら平和のメッセージを出しているのが、国際報道やTwitterなどで聞こえてくる。

アイルランドからも、大統領がメッセージを寄せていて、それを東京の大使館のTwitterアカウントがツイートしていた。アイルランドのマイケル・D・ヒギンズ大統領は元々政治家ではあるが同時に詩人でもあり、言葉のセンスは実にすばらしいものがある。大使館のツイートには日本語の対訳がついているので、多読素材を探している人はぜひ読んでみてほしい。語彙がちょっと難し目だが、文法としては易しい(高校レベル)。

 

*1:「西洋」のすべてではないかもしれないが、あまり深入りしている余裕はないのでざっくりと進めさせてほしい。

続きを読む

日本語圏で紹介されている英語記事の探し方(「原爆投下は不要だった」という米国人学者の論考)

今回は、英文記事からの英文の実例というより、日本語で「英語圏でこんな記事が出た」と報道されている英語記事の探し方の実例について。

報道記事を「ハイパーリンク」というものが実装できない紙ではなく、それが前提となっているウェブで読むことが日常となって久しいが、英語圏報道機関では、基本的に、どこかよその媒体で出た記事を参照して新たに記事を立てる場合、その元記事にリンクするのが定例である。

例えば下記は、日本語圏でも話題になっているウイグル強制収容所についてのBBC報道を受けてガーディアンが書いた記事のキャプチャだが、"reports by the BBC" の部分にBBC記事へのリンクがはられている*1

f:id:nofrills:20200806134928p:plain

https://www.theguardian.com/world/2020/aug/05/secret-footage-uighur-detention-merdan-ghappar-chinese-prison-xinjiang

ここではたまたま、さっき私が見ていたので、ガーディアンがBBCにリンクしている例を見たが、どこがどこにリンクするかは特に限定はされていない。BBCがガーディアンなどほかの媒体にリンクしていることもあるし、学術誌のThe LancetやScienceにリンクしていることもあるし、Twitterでの誰かの発言を地の文に組み込んだら、Twitterにリンクをはるのがデフォである(日本語圏のメディア、特にウェブメディアやスポーツ新聞では発言だけコピペして、発言主の名前も表示せずリンクもしていないが、「引用元を示す」という最低限のことすらしていないあれは剽窃にならないのだろうかといつも思う)。

だから英語圏では、報道されている記事について確認したい場合、元記事を探すという作業は必要ないことが多い*2

だが、そもそもリンクをはるということをしていない日本語圏マスコミの記事の場合は、元記事を探すところから始めないと、その記事が元の記事の言ってることを正確に要約しているかどうかといったことすら確認できない。日本語圏の報道機関も「元記事にはリンクをはる」ことを基本としてくれていたらよいのだが、たま~にリンクしてある記事を見たらラッキーと思うという状態は、ここ20年くらいずっと変わらないので、この先も変わらないんだろうなと思っている。

つまり、日本語圏にいる以上、「元記事を探す」というスキルは必要なままだろう。

さて、今回見るのは、今日(2020年8月6日)付の共同通信記事である。共同通信は自前の媒体を持たず他の媒体に記事を供給する「通信社」で、下記では私がたまたま見かけた東京新聞ウェブ版の記事を参照するが、ほかにも、日本全国のいろいろな媒体で同じ記事が掲載されている。

【ロサンゼルス共同】米紙ロサンゼルス・タイムズは5日、広島、長崎への原爆投下を巡り「米国は核時代の幕を開ける必要はなかった」と題し歴史家らが寄稿した記事を掲載した。……
 歴史家のガー・アルペロビッツ氏とジョージ・メイソン大教授のマーティン・シャーウィン氏の共同寄稿。米国では原爆投下が戦争終結を早め多くの米兵らの命を救ったとの主張が主流だが、日本との戦争を経験していない若者の増加などで変化の兆しもある。

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/47308/

これはAIが適当にそれらしい文面を書いたのだろうか。そうではなく人間が書いたのなら、第二次世界大戦が終わって75年経過し、「歴史の生き証人」である戦争体験者がどんどん数を減らしているときに、「日本との戦争を経験していない若者の増加」としれっと書けてしまうあたり、おそらく何も考えていないのだが、 それにしたって何も考えていなさすぎる記事で、こんなものを読んだところで何もわからない。それどころか、「ようやくアメリカでもこういうことを言う人が出てきたか」みたいな誤認を生じさせるという点で有害ですらある。事実は、このお二人は何十年も前から、「広島と長崎への原爆投下は不要だった」という地道な検証を続けてきており、その業績はすでに認められている。つまり「今になって出てきた」ようなものではないし、「変化の兆し」という言葉で語るべきことでもない。今、考え方が変わっていない人は、この先もずっと変わらないだろうという性質のものだ。それを前提としないことには「歴史認識」という一筋縄ではいかない問題を扱うことなど、到底できない。

という問題意識をこの記事で抱いたうえで、ここで紹介されている元記事を探してみよう。

共同通信のこの短い記事から得られる情報は、掲載媒体は「ロサンゼルス・タイムズ」、掲載日は「(2020年8月)5日」、トピックは「広島・長崎への原爆投下」、記事を書いたのは「ガー・アルペロビッツ氏とマーティン・シャーウィン氏」ということで、これだけあれば十分に元記事を探すことができる。

以下、PCのブラウザを使うことを前提として話を進める。スマホタブレットの場合はそれなりに応用してもらいたい。

*1:なぜか "reports" と "by the BBC" が分割されているが、リンク先は同じである。

*2:たまに、元記事へのリンクがないこともないではないが。

続きを読む

複合関係代名詞, 「思いつきをとりあえず言ってみてるだけ」を英語で表す(レバノンでの大爆発と米大統領の無根拠発言)

今回の実例は、英語で言いたいときに言えそうで意外と言えないかもしれないフレーズをTwitterで見かけたのでそれを。

ちょっと長くなるが、順を追って話をさせてほしい。

昨晩、というより今朝(2020年8月5日)未明なのだが、寝床で図書館で借りてきた本をだいたい読み終わって、そろそろ寝ますかねと明かりを消したところで、スマホにいくつかの報道アプリから「速報」が着信していたことに気が付いた。

そのときの着信はすぐに消してしまっていたのだが、その後に入ってきていた「速報」はこんな感じ: 

f:id:nofrills:20200805143624j:plain

「速報」の頻度が多すぎる報道機関のものは私は通知を切ってあるのだが、もしそれらも通知をONにしてあったら、きっと、目にする画面がそのニュースのことで覆いつくされていただろう。

ともあれ、「速報」に気が付いてすぐにチェックしたときのツイートがこちら: 

続きを読む

セミコロン, not A but B (ジョン・ヒューム死す)

ジョン・ヒュームが亡くなった。この人がいなかったら、北アイルランドは今でもドンパチが続いていたかもしれない。そういう存在だ。

この人については、ここではなく本家のブログで書くべきだと思うのでここでは深入りしない。20世紀後半の経験と知恵を体現するような存在だった。

いつか、というか近いうちにこのニュースに接する日が来ると、もう何年も前から分かってはいたのだが、まさかこんな、人が集まることができず、お見送りも満足にできないときに逝ってしまうなんて、悲しすぎる。人と人を、人々と人々をつないだ人なのに。

今回の実例は、訃報が流れたあと、多くの人々がツイートしている故人の言葉から。

 「アイルランドはロマンチックな夢ではない」というのは、アイルランドを「ロマンチックな夢」扱いする人々が世界中に大勢いたことを示している。その「夢」はナショナリスティックな夢、「ネイション」というものを「物理的な力 physical force」で、つまり武力で勝ち取ろうとする夢で、19世紀から20世紀に、主にアイルランド島の外にいるアイリッシュの人々(アイリッシュディアスポラ)の間で好まれ、憧憬の対象となり、支持された夢である。その「夢」は、アイルランド島の中では広く共有されてはいなかった。アイルランド島ではもっと現実的な、「革命に殉じる」みたいな甘美な夢ではなくもっと現実的な、今日を生き、明日を行き、子供たちによりよい明日を受け継いでいくという希望とヴィジョンが求められていた。

ジョン・ヒュームは「甘美な夢」の側ではなく、「現実的な希望とヴィジョン」の側にいた人で、そのことを彼自身のこの言葉はとてもよく表している。

続きを読む

時制(過去完了と過去), earlier this week, almost all ~, 肯定文でのany(ベトナムでの新型コロナウイルス感染)

今回の実例は報道記事から。

新型コロナウイルスについて、日本国内では「日本スゴイ」の《物語》に乗った話が優先され、英語圏、特に英国や米国の報道機関が日本について何か懐疑的・批判的なことを少しでも書いていると「コロナで大量の死者を出しているお前らに言われたくない」的な、クソガキのような、意味不明の反発がどす黒く沸き起こるのがデフォだと私は観察しているが、実際英語圏報道で「東アジアの感染抑制成功例」として参照されてきたのは、韓国、香港、ベトナムだった。これらに加えて台湾の対応がすばらしかったことは言うまでもないのだが、台湾については英語圏でニュースになっているのを見ることは、新型コロナウイルス以前から、ほとんどない(私の知る限りでは、台湾を英語圏報道で見るのは、地震や台風など自然災害のニュースくらいだ)。いずれにせよ、このウイルス禍について、日本は言及されもせず、単に無視されている。「日本モデル」とやらが成功しているという認識は、この現実を踏まえれば、なかなか出てこないのではないかと思う。

韓国は最初の大規模感染(カルト教団)以降、何度かBBC Newsのトップページに記事が出ていて、一昨日はそのカルト教団のトップが、教団のメンバーについての秘密主義を通そうとしたことにより、感染経路追跡を妨害したとして逮捕されたという報道が出ていた。

www.bbc.com

香港は、英国とは特別な関係にあるのでBBC Newsの注目度が高いのは当然のことだが、やはり一昨日、「以前は感染抑制の成功例と見られていた香港だが、現在『第3波』に見舞われている。そこから学ぶべきことは」といったトーンの記事が出ていた。

www.bbc.com

そしてベトナムベトナムについて報じる記事は多かったわけではないが、中国と陸地で国境を接する隣国であるにもかかわらず一人も死者を出していないということで、かなり注目はされていた。また、英国ではベトナムに住む英国人(スコットランド人)が感染して重症になり、2か月ほどかけてようやくスコットランドに戻れる程度に回復したというニュースもあった。ベトナムの医療システムの分厚さ・堅牢さが特に目を引いているようだが、やはりここに来て、残念なことに、ついにこのウイルスによる感染症で人が亡くなった。

今回実例として見るのはこの記事から。記事はこちら: 

www.bbc.com

続きを読む

more than ~, A is to B what C is to D(コバルトという金属)【再掲】

このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。"A is to B what C is to D" は一時期「いかにも受験英語な構文」などと言われたが、実際には「生きた英語」の中で、かなりよく使われている。

-----------------

今回も前回と同じ、金属のコバルトについての「報道特集」的な記事から。

コバルトがどういう物質であるか(どういうふうに貴重な物質であるか)について、概略は前回書いているので、そちらをご参照のほど。

記事はこちら: 

www.bbc.com

続きを読む

-ing形で始まる文の構造の取り方、動名詞句、関係代名詞(コバルトという金属)【再掲】

このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。大学入試でよく出るような形の説明文(事実を順序だててわかりやすく説明する文)なので、取り上げた文法項目の他の部分も見ておくと役立つだろう。

-----------------

今回の実例は、金属のコバルトについての「報道特集」的な記事から。

コバルトは、古くから青の色の顔料として使われてきたが、現代の技術に欠かせないハイテク素材を作るために必須の原材料となったのは20世紀のことである。

コバルトがどう使われているか、ウィキペディアを参照しておこう。

単体金属としてのコバルトの利用はほとんどないが、合金材料として重要であり工業的に利用される。……

ニッケル・クロム・モリブデンタングステン、あるいはタンタルやニオブを添加したコバルト合金は高温でも磨耗しにくく、腐食にも強いため、ガスタービンジェットエンジンといった、高温で高い負荷が生ずる装置などに用いられているほか、溶鉱炉石油化学コンビナートなどでも充分に役割を果たす。

そのほか、鉄よりも錆びづらく酸やアルカリに侵食されにくい性質を利用して、コバルト含有率を大幅に高めたコバルト合金は、鋏などの高級素材として利用されている

……

コバルト酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極材として用いられ、携帯電話など小型デジタル機器の急速な普及により需要が増大している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88

こういったことを予備知識として頭に入れておくと、今回見る記事はぐっと読みやすくなるだろう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

続きを読む

接続詞のyet, that節の繰り返し, it is ~ for ... to do --, 分割不定詞, there needs to be ~, など(「ウイグルの強制労働と綿」という問題の示すこと)

今回の実例も引き続き同じ、新疆ウイグル自治区での強制労働という重大な人権侵害を引き起こしながら生産されている綿製品の材料と、世界のアパレルブランドの関係についての記事から。

なお、この記事が取り上げている人権団体連合体の報告は、個々の企業(ブランド)を非難することが目的なのではなく、それなしに済ますことができない基本的な原料・材料の生産過程に搾取が組み込まれているということ、その搾取を前提とした世界的な利益構造(「世界システム」的な)があるということを明らかにすることが目的であると私は読んでいる。生産・搾取の問題は、「ブラッド・ダイアモンド」のような地下埋蔵資源についてこれまで何度も指摘され、それこそ「ハリウッドスターがそれについての映画を作る」というような形でアウェアネス(問題の存在を人々に気づかせること)の取り組みも行なわれてきたが、綿という、現代では何の変哲もないような素材でもそういうことが起きている。あたかも奴隷制のもとで多くのアフリカ人(黒人)が「新大陸」のプランテーションで搾取されていたころのように。そしてその搾取を行なっているのが、いわゆる「西洋の先進国」ではないというところで、「反西洋」の思想を原動力(の少なくとも一部)とする対抗運動が機能するのかどうか……今日も、この報告で名指しにされていたブランドの綿製品を使いながら、考えている。

これまでのエントリは下記: 

hoarding-examples.hatenablog.jp

hoarding-examples.hatenablog.jp

hoarding-examples.hatenablog.jp

hoarding-examples.hatenablog.jp

記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回実例として参照するのは、記事の最後の方から。

続きを読む

時制の一致の例外, など(新疆ウイグル自治区で生産される綿と、無印良品、ユニクロ、H&Mなど世界のアパレルブランド)

今回も、前々々回前々回前回に続き、新疆ウイグル自治区で人々を強制労働させることで生産されているとしか考えられない素材が、世界中のアパレル企業によって、私たちの着る衣類に使われていることについての報告を報じる記事から。

最初の回(前々々回)で説明したように、何らかの報告についての報道記事では、前半でまずその報告の内容を端的にまとめたあと、後半で当事者や当局者に取材して得られたコメントなどを記載するのが基本形である。

今回はその後半部分から、当事者、つまりこの報告書で名前を上げられている企業がこの報告を受けて語ったことを書いている部分から。

ちなみに、この報告にある問題企業のリストは下記。出典はこの報告を行った人権団体連合体のプレスリリース(2020年7月23日付)である。

f:id:nofrills:20200730133834j:plain

https://enduyghurforcedlabour.org/news/402-2/

f:id:nofrills:20200730133850j:plain

https://enduyghurforcedlabour.org/news/402-2/

アバクロ、カルヴァン・クライン、トミー・ヒルフィガーといったデザイナー系ブランドも、GAP, Zara, H&Mといったファストファッションも、コストコ(米)、マークス&スペンサー(英)、ウールワース(豪)といったスーパーマーケット系も、アディダス、ナイキ、プーマといったスポーツブランドも入っているが、この中に、日本のブランド/企業が2つ入っている。無印良品(国際展開しているブランド名はMuji)とユニクロだ。

今回は、この報告を報じるガーディアン記事から、この2企業のコメントを紹介している部分を読んでみよう。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

実例として見るのは、記事のかなり下の方から。

続きを読む

最上級, 付帯状況のwith, 《例示》の表現 (such as ~, including ~) (私たちが使っている綿製品とウイグル人弾圧・人権侵害)

今回も、前々回前回に引き続き、新疆ウイグル自治区で人々を強制労働させることで生産されているとしか考えられない綿が、世界中のアパレル企業によって私たちの着る衣類に使われていることについての人権団体の連合体の報告を報じる記事から。

前々回前回と、「前半で件の報告のまとめ、後半で関係者コメント」という、こういった内容の記事の基本形を説明したが、それに加えて、報告されている事態の背景解説が同じ記事内に書かれることもまた一般的である。たいていは前半部分に織り込まれるようにして書きこまれる。

今回実例として見るのは、この記事のそういった部分から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

前回見たところから少し上(前)の部分から、次の個所。

続きを読む

未知の単語やフレーズに遭遇したときの読み方, 直説法のif節, make + O + C, 肯定文でのany, thatの判別(私たちが使っている綿製品とウイグル人弾圧・人権侵害)

今回は前回の続き。

前回説明したように、何らかの報告についての報道記事では、前半でまずその報告の内容を端的にまとめたあと、後半で当事者や当局者に取材して得られたコメントなどを記載するのが基本形である。

それに加えて、前半で報告の内容をまとめたあとに、報告を行った機関などの補足的なコメントを入れるというパターンも非常に多い。今回見ている記事はそのパターンで、今回の実例はその、報告者によるコメントの部分から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回見るのは、記事のかなり下の方で、ウイグルでの人権侵害と世界のアパレル企業が使っている綿(コットン)との関係についての報告を出した人権機関連合体のひとつ、the Workers Rights Consortium (WRC) の人のコメントの部分。 

WRCは米国で販売されているアパレル製品の生産過程における労働者の人権問題をモニターしている非政府系独立機関。日本にこの機関があったら、事実上「格安の労働力」として搾取されている外国人技能実習生の問題や、アパレル企業での職場でのパワハラ・セクハラといった問題について、がっつり調査しているだろう。詳細は下記ウィキペディア参照。

en.wikipedia.org

続きを読む

so ~ that ...構文, sourceという動詞, it is ~ that ...(形式主語), やや長い文, など(私たちが使っている綿製品とウイグル人弾圧・人権侵害)

今回の実例は、いくつもの人権団体がまとまった連合体が出した報告に関する報道記事から。

英語圏では*1、人権団体などNGOの報告のようなものについての報道を行うとき、報道機関の記者は、前半ではその報告の内容を端的にまとめ(多くの場合、その報告書からの引用をたっぷり入れる)、その上でその報告のトピックとなっている事柄の当事者や政府当局者に取材してコメントを取ったものを後半に記載することが多い。

例えばある地域で野生生物による農作物への被害が増加しているという報告書が出た場合、その報告書の内容をまとめた記述のあとに、報告書を出した団体の人や、その地域の農家、その地域で活動する他の野生生物保護団体や研究者のコメントを記載する、という形だ。

学術誌に掲載された論文についての報道を行うときも、同じ形式をとる。学術論文の場合は、後半でコメントを求められるのは論文執筆者であることが多い。現在進行中の新型コロナウイルスに関する研究でもその形式の記事は探せば難なく見つけられるだろう*2。この場合、扱っている論文は1つでも、報道機関の側がどこにどう注目するか(つまり切り口)によって、全然別物みたいな記事が書かれることもある。例えば、「あることをしたらある川の水質が改善されたが、50年前の水質には遠く及ばず、失われた生態系は回復していない」という論文があったとしよう。ある新聞社は「水質改善」に注目してポジティヴな記事を書くかもしれないが、別の新聞社は「生態系は回復していない」ということに注目して悲観的な記事を書くかもしれない。論文を書いた研究者としては、何かそういう価値判断をしたいのではなく、単に事実を観察し報告しているだけだとしても、世間に提示されるときには何らかの価値判断がつけられてしまうものである。

 

閑話休題。というわけで今回の記事だが、ここで報じられている報告は、1つの団体によるものではなく、200もの団体の連合体が出したもので、記事の後半の「当事者のコメント」の部分には、報告で名前が挙げられているいくつもの企業のコメントが入っている。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

記事内に細かくリンクがはられているが、スマホタブレットで見るとかなりわかりづらいので、リンク先を改めて列挙しておくと: 

*1:日本語圏ではどうだか、私は知らない。

*2:ただしワクチン開発のような守るべき機密がある研究開発が進行中の場合は、当事者は取材には応じないので、そういう形式の記事は出ていないと思う。その場合、報道記事が、研究機関から出たプレスリリースをほぼそのまま引き写したようなものになってしまうこともあるかもしれないし、後半に入る誰かのコメントは、その研究をプッシュしている政府当局者のコメントになるかもしれない。つまりやたらとアゲアゲな感じの記事になることもある。

続きを読む

《結果》を表すto不定詞、to不定詞の否定、報道記事の見出し(DRCからの子供の連れ去り)【再掲】

このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。いわゆる「受験英語」の参考書の例文によく出てくる文言がそのまま、実際の報道記事で見出しとして用いられている例である。

-----------------

今回の実例はBBC記事の見出しから。

《to + 動詞の原形》のto不定詞は中学校で習うが、「なんとか用法」という用語も含め、なんかいろいろと情報量が多いので、消化しきれず何となく苦手という意識を持ってしまう人が少なくない。

特に消化しきれなくなるのが《to不定詞の副詞的用法》で、やたらと表すものが多い(意味が多い)。英語について、英文とその意味から入るのではなく、英文法用語から入ってしまうことが習慣化されている人の場合は、よけいに負担感は大きくなるが*1、具体的な文例を見て、ひとつひとつ納得しながら把握してしまうことが重要である。

 

《to不定詞の副詞的用法》で最もよく用いられる(ありふれている)のが、《目的》を表す用法だ。「~するために」という意味になる。

  I woke up at four to catch the first train. 

  (始発電車に乗るために、4時に起きた)

これは文意をはっきりさせるために、in order to do ~やso as to do ~という形になることも多い。見た目は長くなるが、文意は変わらない。

  I woke up at four in order to catch the first train. 

 

次によく遭遇するのが、《感情の原因》を表す用法だ。happyやsadなど《感情》を表す形容詞とともに用いて「~して…だ」という意味になる。

  I was happy to see my childhood friends. 

  (子供時代の友人たちに会って、私はうれしかった)

 

似たようなものに《判断の根拠・理由》を表す用法がある。日本語にすれば《感情の原因》とよく似ていて「~して…だ」となるが、一緒に使う形容詞がlucky, crazyなど、話し手が何かについて「…だ」と判断しているときに用いる。また、形容詞だけでなく、a foolなど名詞が来ることもある。

  I was lucky to get to know the famous writer. 

  (その著名な作家と知り合いになれて、私は幸運だった)

  I was a fool to believe him. 

  (あんな男のことを信じるなんて、私は愚か者だった)

 

そして4番目の用法として重要なのが、今回実例として見る《結果》を表す用法である。「…して、その結果(そして)~する」という意味を表す。この用法は決まりきった例文でしか説明されないことが多いが、実際、英語の文章に出てくるときもだいたい決まりきった形で出てくる。

  I woke up to find it was raining. 

  (目が覚めて、(その結果)雨が降っているのがわかった

  My grandfather lived to be ninety years old. 

  (私の祖父は生きて、その結果、90歳になった=祖父は90歳まで生きた)

 

《to不定詞の副詞的用法》には、これらの4つの用法のほかにも、特定の形容詞とペアになった形(be ready to do ~など)や、《条件》を表す用法などもあるが、長文読解などで特に重要な基礎力となるのはこれらの4つの方法である。まずはこれらを押さえてしまおう。特に今度の冬に受験を控えている人でここがあやふやな人は、夏休みが終わる前にここをしっかり押さえてしまうこと。

 

……と、最初に文法解説をしてしまったが、今回実例として見る記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:参考書などで文法用語が目次の項目になっているときに、目次の項目を最初に理解しようとする人がいるが、それは失敗の元。目次の項目は「レッテル」と考え、重要な中身を先に見るようにしよう。調味料のビンに貼ってあるレッテルを見てもどんな味だかわからないときに、ちょっとなめてみるだろう。そういう感覚で、レッテル(項目)はまずぱっと見るだけ見て、深く追求せず、中身(解説されている英文)をちゃんと見るとよい。

続きを読む

劣勢比較(劣等比較)、報道記事の見出しのルール(ハード・ブレグジットという難題)【再掲】

このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。熟語の一部となっていることが多いlessという単語の普通の使い方は意外と見落としがちなので、こういった素直な例を見て確認しておくとよいだろう。

-----------------

今回の実例は、Brexitに関する政府の文書のリーク報道から。

「リーク報道」は、"leaked document" などリークであることを明示した文言が入っている場合もあるが、そうでないこともある。今回の記事は後者で、リード文(見出しの下、記事本文の前にある、記事概要を示した短い文)で "Exclusive" (「独占」)とあり、記事本文で "papers seen by the Guardian" という表現が出てくることから「リーク」と判断される。

記事はこちら。

www.theguardian.com

続きを読む
当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。